16-0. で? 神々がそろって何するんだっけ?
ミーナが、私の使い魔になっていた。
「悪魔を使い魔にするには、魂かそれに相当するものを捧げればいいのよ」
シスターのシリアナさん曰くそういう事なのだけど。
「それも月刊シスターに書いてあったのかしら?」
「そうよ。あの雑誌には、この世の真理が記されているのよ」
その雑誌のソースは、ブラックブックという聖書で、そのソースは太古に女神ミラとして降臨したニャアが信者相手に語った説話。日曜朝の教会や、深夜の居酒屋で語られた。それが、この世の真理として定着した。物理や量子力学の法則と違って、信じる者が多ければそれが真理となるのだ。
この世界は、元からニャアの妄想で創造されたようなものだったのだ。
「魂に相当するものって、例えば強力な魔力を得られる食材とか?」
「食材で分かり易いのは、ヒトの一生分の寿命を得られるものね。ドラゴンの生レバーなんかだと、上位の悪魔を配下に出来るそうよ」
まさに、その生レバーをミーナに無理やり食べさせたわね。他にも、悪魔の実なんかも影響していそう。惑星と同等の寿命を捧げたのだから、悪魔であるミーナが私の使い魔になるのは当然って事よね。
「あのー、おいどんって本物の悪魔だったんくさ? 悪魔のようなアイツ的な比喩じゃなかばってん?」
「存在というものは、周囲の認識次第なのよ。例えば、私が歴史を変えてしまう程の美女だってのは、周囲がそう認めているからこそ成立するわけでしょ?」
今は6歳児だから、歴史を変える程の影響力は無さそうだけどね。
「なるほどー?」
「あんたが納得しようがしまいが、あんたは私の使い魔だから」
私を自動追尾したり、言いなりになったりしてたのは、妹回路の効果だと思っていたのだけど、使い魔だったからなのだ。実に、納得がいく解釈よ。最終戦争の後で、ミーナだけ私とはぐれなかったのも、使い魔なのだから当然って事ね。
「あんたのばいばいが鬱陶しくなってきたから、そろそろキャラ変しなさいよ。王女キャラっぽい喋り方がいいわね」
「えー? わらわとかちんとか言うでおじゃる?」
「一人称は、おいどんのままでいいわよ」
「それ、どんなキャラなのー? おいどん、分からないでおじゃるー」
「いいわね。その調子よ」
何でも言いなりだ。ニャアを倒しなさい、とか言ったらどうなるのかしら?
「悪魔や破壊神にも制限がかかっているから、注意してね」
「シスターが珍しく神職っぽいこと言ってるでありんす」
「シリアナちゃんは神職だからね? しかも教皇なのよ」
「そういえばそうだったくさ」
どうもミーナの中には「王女キャラ」の引き出しが無いようだ。
「あんたに王女キャラは無理みたいねー? 魔法少女でいいわよ」
「ほげー? ワシ悪魔じゃのにー、魔法少女なん?」
そうか。こいつの中で魔法少女といえばニャアなのか。紛らわしいから、これは無いわね。髪型以外の見た目も一緒だし。
「妹を使い魔にするとはー。ひどい姉じゃー」
ほらね? ニャアが会話に参加すると、どっちが何言ってるのか分からない。
カスみたない事言うのがミーナで、クズみたいな事言うのがニャア。
まるで、区別が付かない。
「あんただって、兄を奴隷にしているじゃないの」
「兄が妹の奴隷なのは、国際条約で定められた決まりじゃからしてー」
その条約を作ったのも、あんた自身なんでしょ?
「すっかり話がそれちゃったけど、私達にかかってる制限って何なの?」
制限があるのなら把握しておかないと危険だ。解釈次第で何でも破壊出来ると思ってたけど、その破壊が自身に返って来る事もあるのかも知れないのだから。
「単純な話よ。女神を滅する事だけは出来ない。あなた達は、ニャアの使徒なのよ」
「妹を使い魔にする以上に、ひどい姉じゃないの」
「使徒には絶対服従とかそういう呪いはないけえ、別にひどいものじゃないんよ」
「シスターであるシリアナちゃんも女神の使徒だからね。それと同じよ」
「ニャアの妹である俺達も文字通りシスターだからってか? 剣聖の俺も女神の使徒なのか?」
「剣聖は女神を守護する神ね」
「俺も神だった!?」
剣聖の剣技は、神技ともいわれるからね。当然、その使い手は神って事よね。
シリアナさんが語った事は、ダモンの日本語版ブラックブックにも同じ記述がある事を確認した。原典であるアモン版ブラックブックを確認するのが、最も確実なのだけど、あれは読めない言語で書かれているからね。
「私達4姉妹は神でしたって事か」
「ここまでの物語は全て神々の遊びじゃったでおじゃる?」
そういうことねー。そして、このポンコツなろう小説は神話って事よ。