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15-12. 目のつけどころがアレですね

「女王をぶっ殺したいから王宮に入れろって。無茶にも程があるばい」


 ターゲットであるキナコはダモン王国の女王だから王宮に居る。

 私は回りくどい事が嫌いだから、正面玄関へ直行した。


 ミーナの言う通り、国家の重鎮に簡単に会えるワケが無いと思うじゃない?

 でもね、珍しく私にも策があるのよ。

 

「あー、拙者は陰陽師じゃ。こっちの、ちんちくりんは巫女じゃ。旅の宿に困っておってのう。軒先を貸してもらえんじゃろかー。お礼に、悪霊でお困りであれば消し去ってやるぞ?」

「なんと! 旅の陰陽師様ですか、いいところへ」


 子供の頃に観た時代劇って、こんなんじゃ無かった? 旅のお坊さんだったかも知れないけど。


 なんという幸運か、王宮を訪ねると、キナコが玄関に出て来た。

 ちょっと姉さん出てよ! なんて声が中から聞こえた。

 姉妹揃ってここに居るって事は、今ここではイベントが発生中よね。

 入学式直後に、彼女達は学校を休んで帰省していた。

 王宮内の神殿に、悪霊が発生したからだ。


「え? なにこれ? なんでコントが始まってるんばい? 訪問販売詐欺?」

「ミヤコの方から来ましたって? だいたい合ってるじゃないの」

「陰陽師は消火器じゃないばい?」

「破壊と消火活動は同義でしょ?」

「そりゃ、江戸時代の話ばい」


 江戸時代の火消しは、火災発生時に延焼防止のため周辺の建物を破壊したという。

 破壊神である私は、消火器みたいなもんよ。

 まあ、ちょっとやり過ぎるかも知れないけどね?


 私達は、キナコに案内されて神殿へやって来た。

 神殿と言っても、道場みたいな部屋ね。神っぽい要素は神棚くらい。


 悪霊としか言い様のない気持ち悪いのが、部屋の真ん中でウネウネしてる。

 掃除機で吸えないのかしら?


「やや! これは転生に失敗した騎士の魂ですな。巫女の呪いに苦しんでおるわ」

「さすが陰陽師様。一目見てお分かりですか!?」


 見ただけで分かるわけ無いじゃん。

 こいつに会うのは二度目だから知ってるだけよ。

 陰陽師って何だと思われてるんだろうか?


「さあ、スケベイさん、やっておしまいなさい」

「へ!? おいどん!?」


 だって、私が対処したら王都が破壊されちゃって、歴史が狂うでしょ?

 個人的には、どうだっていいけどさ? 明日辺り、小学生の私とニャアがここに来るのよね。それまでに悪霊はトイレに封印しておかないと。


「秘蔵のアレを使えばいいのですぞ」

「は? あ、コレか。忘れて来るの忘れてるくさ」


 私の知っている歴史だと、ダモン神獣のツノで作ったハンコで封印するのだけど。ダモン神獣のツノで作った短剣なら、十分過ぎる程代用になるでしょ?


「うぎゃあああああああ!!」


 オーバーキルだったわ。

 封印するだけで良かったのに、滅しちゃった。短剣で一突きだった。


「おい! こいつ本当に陰陽師か!? 太古に紛失した国宝を持ってるぞ!」

「あれ?」


 破壊神と悪魔のコンビですら、ダモン王女たった一人に太刀打ち出来なかった。

 なんなのアイツ? 大天使だとか言ってたっけ? でも、大天使ってコケシみたいなエッチな道具じゃなかった? だとしたら、塩を撒けば死んじゃうのかな?


 私達は、あっさりと捕縛されて、王宮の地下牢に収監されてしまった。短剣は没収された。


「おいどん達、ここに何しに来たんばい?」

「さあ? 短剣は返せたからいいじゃないの」


 私もミーナも牢獄は慣れっこなので、平常心だ。断頭台や火あぶりだって、一度や二度じゃないからね。その場で殺されなかったのだから、全然平和よ。全裸に剥かれてもないし、短剣以外の所持品は無事だし。


「ロールバック魔法で逃げるのは避けたいくさ」

「そうね。世界が再構築に失敗しても構わないけど、やり直しは面倒よね」

「目のつけどころが、シャープ過ぎるばい。並のニンゲンと視点が違い過ぎるくさ」


 目のつけどころ? なるほど、視点を変えれば、解釈も変わる。


「転移魔法は破壊よね?」

「え? あ、あー、そうね。転移対象がウサギやタヌキになったりするくさ。確かに人の尊厳を破壊してるばい」


 破壊が目的で、転移は副産物。そう解釈すれば、破壊神の私にも転移魔法が使えるって事よね。ただし、破壊する対象が私達自身になってはダメだ。ならば、何を破壊すればいいのか?


「あの王女むかつくから、巻き込みましょう」

「こいつ、とんでもねえくさ。負けた腹いせに何て事を」


 謎解きには興味が無い私だけど。さすがに不思議だったのよね。あんなに強い王女が倒されてしまうなんて。それも剣聖ならともかく、倒したのは近衛騎士予備校の9年生のマヌケな3人組だ。きっと、王女が弱っていたに違いない。

 もしかしたら、王女の弱体化こそが、私達が過去で成すべき事なのかも。


「逃げる手段はこれでいいとして。悪霊が問題よね?」

「あー、ほっといていいくさ。どうせ滅するんでしょアレ。雑魚っぽかったし」


 小さいイベントは、結果さえ一致すればいいって感じか。


「じゃあ、行くわよ。おしりの穴が増えたりしたらごめんね?」

「おい、変な宣言すんなよ」


 転移先はミヤコにした。元は、そっちが目的地だったしね。

 キナコを倒すのは、剣聖の仕事だったのを思い出したし。

 一緒に連れて来た王女は、わらわらちんちんうるさかったし、転移魔法で王宮に戻した。

 どこが破壊されたか知らないけど、相当に弱体化した事でしょうよ。


「ここがミヤコ幕府の都なのね? 明るいうちに来たのは初めてだわ」

「おいどん初めて来た。用が無かったから」

「この国って、ダモン王国を脱走した陰陽師が興したんだっけ?」

「そうくさ? じゃあ、ミヤコは、おいどんのモノばい? 陰陽師を作ったのはおいどんじゃけん」

「あんたが言ってたんだけど。もう忘れちゃったのね」

「うーん。滅ぼしたのもおいどんばってん、差し引きゼロくさ?」

「大幅にマイナスでしょ? 何の視点で評価するのかによるけど」


 退職する時に、構築した環境を全部破壊する様なものでしょ?

 ニャアが言ってたけど、そういう事件は実際に珍しくなかったとか。

 といっても、物理破壊とか強制フォーマットとかの暴力的な行為ではない。

 自分に俗人化した業務を引き継ぎ無しに辞めるだけだ。


 何かを作ったはずなのに、職場には損害しか残らない。

 悲しい職業よね。システムエンジニアって。


「で、ここで何するんだっけ?」

「え? 何も考えてなかったくさ?」


 取り敢えず、陰陽師に喧嘩を売ってみましょうか?

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