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15-2. 異世界修行

 ドラゴンの身はレーザーで細切れにして運べるサイズにした。


 ミーナと何往復もして、脱衣所に仕舞い込んだ。

 尻尾を運んだところで、別のドラゴンが近づいて来たので、そこで終了。

 これ以上あっても、腐る前に食べきれないだろうし、仕方がないね。


 脱衣所の扉にも鍵があった。

 室内側はサムターンで、外側はディンプルキー、鍵は脱衣所の壁にかかっていた。

 異世界からの侵入者を防止するためだね。

 オートロックになっているから、鍵を持たずに出ると戻れないから注意しないとね。

 日本のマンションでうっかりやっちゃった事があるわ。

 鍵を持たずにゴミ出しに出ちゃうっていう。

 あの時は、室内に誰か居たから助かったけどね。

 

 メルモン側の脱衣所の扉は、内側がミーナ自作の魔法鍵になっている。

 この扉もオートロックなのに、鍵をメルモン側に置いて来ちゃったワケだ。

 メルモン側には連絡がとれないので、開けてもらう事が出来ない。

 せめて脱衣所はメルモンと連続した世界になっていれば良かったのに。

 脱衣所も時間の流れは修行する異世界と同じ。


「ここから侵入するヤツなんて居るのかな?」

「この世界に人は居ないけど。ニャア姉ちゃんみたいなのが迷い込むかも知れないばい」


 確かに、異世界転移魔法を使えば、ゲートと無関係に入って来ちゃう。

 私達みたいなのが死んだ時の異世界転生で、入って来る可能性もある。


「でも、魔法使いだったら鍵も意味無いでしょ?」

「そうかも。でも倫理規定に反する魔法は使えないんばい」


 随分とデタラメな魔法を使っていた様に見えたけど。

 ちゃんと人の世に合わせた最低限の制限はあるのか。

 そういえば、ニャアは犯罪に魔法は使ってないんだっけ?

 女生徒のパンツ脱がしたり、大食いチャレンジでずるしてたりしてたけど?

 倫理規定とやらがよく分からないわね。


「さて、どうやって調理しよう? 生食出来るのコレ?」

「肝臓なら新鮮なうちならいけるかな?」


 ああ、ドラゴンの生レバーか。

 恐ろしいけど、食べてみたい気はするね。


「ちょっとあんた、レバーとってきてよ」

「ええ!? 人使い荒いな、この姉」

「あんたの生レバー食べるわよ」

「こわい!」


 ミーナは気配を消す魔法を使ってドラゴンの生レバーをとりに行った。

 全然消えてなかったけどね。

 魔法は気合と根性だって言っていたけど、限度があるよね。


「うぎゃああああああ!」


 ミーナが走って戻って来た。

 ドラゴンの生レバーをしっかりと抱いて。

 その後ろをイノシシが追いかけている。

 

 猪突猛進というだけあって、まっすぐ向かって来たので、イノシシは簡単にレーザーで仕留められた。


「こいつも捌いてベーコンかソーセージにしたいところだけど。何の道具も無いわね」


 包丁とか鍋とかコンロとか、何も無い。

 なんで武器だけ持って来たのかしら。

 私も大概マヌケよね。

 そういえば水も無い。

 温泉のお湯を飲めなくはないだろうけど。


「水どうする? お湯飲むの?」

「こっちに川があるばい」


 ミーナについて5分程歩いていくと川があった。

 川幅は400メートルくらい? 多摩川くらいね。


「どうやって汲むのよ」

「ああ、前来た時は、魔法もあったし、剣聖の剣もあったから。何も困らなかったのに」


 聖剣で料理してたのかしら?

 そういえば、剣聖の聖剣はニャアが魔法で作ったんだっけ。

 ミーナに魔法を取り戻させるのが先決ね。


「ドラゴンの生レバーって、どんな効果があるのよ?」

「魔力が上がるばい」


 命がけで獲った甲斐があるじゃないの。


「あんた、生レバー全部食べなさい」

「いや、安全とは限らないから、火は通したいんだけど」

「魔力が上がれば治癒魔法でどうとでもなるでしょ」


 ミーナは私に逆らっても無駄だと悟ったのか、泣きながらレバーを食べた。

 なんだか妹をいじめているみたいね?


 いや、実際にいじめているのかな。


「さあ、魔法で鍋と包丁を作りなさい」

「急には無理だよ! ニャア姉ちゃん助けて!」


 ミーナのニャアに対する絶対的な信奉のようなものは、何処から来るのかしら?


「呼んでも来ないし、来た所で役に立たないわよ」

「うわああああん」


 まるで幼女の様に泣き出してしまった。

 見た目は幼女だけど、中身は100万歳だとかなのに。


 泣いているミーナを見るのは初めてだ。

 この子は幼児期に育むべき情緒が無いまま育ったのかも知れない。

 6歳の頃から魔法幼女として戦争に参加したりしてたもんね。

 

 だとしたら、こうやって泣かすのもミーナの為になるのかも。

 いや、単に私が楽しくなっちゃってるだけね。

 私には鬼畜な性癖があるようだ。


 仕方ない、今あるものでなんとかするか。


 レーザーを使えば切断は出来る。

 極細にすればイノシシの解体もいけそうだ。

 ただし、レーザーは途中で止める事が出来ない。

 私自身やミーナに向かうと大惨事よね。

 フィクションだとレーザーの剣って定番だけど、あれってどういう仕組なの?


 川原の岩をスライスしてホットプレートを作った。

 石を組んで中に枯れ草や枝を敷き詰めコンロにする。


「ほら、あんたの出番よ。火をつけて」

「ドラゴンの半身揚げなんて無茶だよぉ」


 泣き疲れて眠ってしまったミーナが寝言を言っている。

 どんな夢を見ているのやら。


 いつかドラゴンを半身揚げにしてみたいものだけど。

 どれだけ修行すればいいのやら。


 ミーナをここに寝かしておいて大丈夫かしら?

 2~3時間ここに居るけど、猛獣も魔獣もやって来ていない。

 ここは安全地帯?


 大魔女と剣聖が居ればそうだったのかも知れない。

 でも、今ここに居るのは2人の素幼女だ。

 私は眠ったミーナを担いで脱衣所に戻った。

 初めて姉らしい事をしたかも知れない。

 今は、どちらも6歳児だけどね。

 ミーナは小柄なので、なんとか運ぶ事が出来た。


 脱衣所には布団は無かった。

 長期間籠もって修行する場所なのに、なんで調理設備も宿泊施設も無いのよ?

 タオルでも敷くか?

 ミーナをバスタオルでくるんで、ベンチシートに転がす。

 私は、お風呂に入ろう。


「はあーっ」


 ひとりきりでお風呂に入るなんていつ以来だろうか。

 思えば、いつもニャアが一緒だった。


 お風呂で温まった私は、全裸のまま露天風呂脇のベンチに寝そべった。


 星の瞬く夜空が見える。


 いつだったか、公園でこうやってニャアと二人で夜空を見上げた事があったっけ?

 あいつは今、どんな月を見ているのだろう。


 私は、ぼんやりと月を眺めているうちに寝てしまった。

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