13-4. モフモフ風呂
「あら、ニャアちゃん。久しぶりね」
定食屋でおはぎに脳をトロかせていると、シスターのシリアナさんが来ました。相変わらずランチタイムは懺悔対応で忙しいのか中途半端な時間です。巫女ちゃんも一緒ですね。
この人達、不老不死だったかな? ちっともトシとっていませんし、まだ生きてます。やっぱり、殆ど時間が経っていないの?
「えーっと? 今って王国歴何年じゃろか?」
「ナニソレ? ニャア歴なら16年か32年じゃない?」
16年と32年では、ニンゲンのスケールだと随分な差があるのですけど。いずれにしても、私達が宇宙旅行に行く前から、それほど経ってない? 大陸の形があんなに変わっているのに? 2つあった大陸がひとつになるのって、2億年くらいかかるんじゃないの?
そして、大陸がくっついてなお、王国との交流は無いらしい。シスターはもうひとつの大陸の暦を知らない。
「ちわーす。いつものー」
「あ、悪いな。もうランチは残ってねえんだ」
「ありゃ。じゃあタヌキ汁とか」
「お前、タヌキじゃねえのか?」
なんと、世界征服協議会の事務所に取り残されていたタヌポンですよ?
こいつは魔界の住民のはずですけど、何故この村に?
あ、タヌポンの事は、11章デス! 読んでね! べ、別にあんたのために宣伝してるんじゃないんだからね!? そりゃそうだ。
「あ、どんぐりシスターズさん、久しぶりでーす」
「おまえ、わざと間違ってないか?」
こいつには、ちょっと言いたい事があった気がするけども。それどころじゃない事態に巻き込まれたから、もういいや。
「あんたが、ダモンから魔界に帰って、どれくらい経ってる?」
「うーん? あれは今年の春でしたね?」
「ありゃ? 一年も経っちょらん!?」
一体、何があったというのか? ほんの数ヶ月の間に、大陸の位置が激変しています。大陸プレートの反抗期?いやいや、自然に起きた事ではないでしょ。一体、誰の仕業なのか!?
「あんたでしょ。どうせ」
「そうは言っても、もう魔法使えないし」
「だったら、誰よ?」
大陸の形を変えるような大魔法って。心当たりは、2~3人しか居ませんね? どれも人じゃないから数え方が分からないけど。2~3頭の魔女が知り合いに居ます。
「ミラおばあはんか、猫耳ニャア大佐かー」
「私達の娘、ミーナか」
大魔女ボッスンは地球で猫耳ニャア大佐の奴隷になっているはず。そもそも、こんな面倒な事をするタイプではないような。どうだっけな? 大変な変態さんで酒癖が悪かった事は確か。
「よし。川へ洗濯しに行くぞ」
どういう考えから、その発想に至ったのか。キャベツから子供は産まれなかったので、次は川で桃を拾うかね? なんて話した事がありますけど。その時は桃の季節ではなかったので、川には行きませんでした。今は、桃の季節ではあるけれど。タオルくんは、回りくどい事が嫌いなので、行動が突飛に見える事があります。
「その前に、お風呂だね?」
「ほじゃあねえ」
私達はオフロスキーなのです。何事も、まずはお風呂に入ってからです。神絵師さんのイラストが付きませんかねー? つきませんね。幼女だらけだし。
「こんちゃー!」
「お、ちびっこ共。なんだか久々だな? 生きてたんだ?」
「ありゃ? おばちゃんは?」
番台に座っているのは、いつものおばちゃんではありません。もしかして、天使の軍勢にやられちゃいましたか?
「あのババアは引退したよ。娘の私が引き継いだ」
なんと。幻獣とまで呼ばれた、番台のおばちゃんの娘デス。すっとんとんじゃない! きょにうという生き物ですよ。やはり、幻のファンタジー動物でした。おかしいなあ、私、この人のお下がりを着てたんだけどなあ。ぴったりすっとんつるりんだったんだけどなあ。
「誰が幻獣だ。もう19歳なんだ。乙女には山もあれば谷もあるのさ、ただしオチはない」
ヤマもなければオチもなく、意味もないのが乙女の摂理なのでは?
ニンゲンの生態は多様性に満ちてますね。まだ19歳だというのが、計算合ってない気もしますけど。こんなのはいつもの事ですね。
「うぼあぁぁ」
「あんた相変わらずうるさいわね」
「じゃって、久々に悪魔の湯じゃよ?」
村の温泉は黒かったけど、ここまで黒くは無かったし、悪魔の湯ではありませんでした。それが、悪魔の湯になっています。魔獣さん達が、「やっぱ悪魔の湯に、たまには入らないとね」とか言っているので間違いない。
番台の娘が永遠の19歳になっている件とも辻褄が合います。ペロッ、これは悪魔の湯。効能は不老不死デス。あらゆるケガも病も治します。おしりのあなが増えていても塞がりますよ。何故か無毛だけは治りません。どこの毛も生えません。
大規模な地殻変動があって源泉が繋がったのでしょうか? だとしたら、このお風呂の建物が1ビットも歪んでいないのが不思議ですよ。
「なんでモフモフが沢山いるのかしらね?」
「魔界の住人さんみたいじゃけども」
魔界と村が合併して魔界村にでもなったのかしらん? 天使の大軍勢と戦うために鎖国状態の魔界とも一致団結したのかも。あるいは、これも地殻変動で土地が繋がったのか。
「それはそうとー」
ずっきゅんばっきゅんの19歳になったはずタオルくんですのじゃがー。
山も無ければ谷も無い。すっとんつるりん。
アホ毛すら抜けて、ドリルの様な縦ロール状のツイルテールに戻っています。DNAに刻まれた髪型は、そっちでしたか。魔薬「縦ロールにな~る」恐るべし。
うーん、この入浴シーンは、来たるべき書籍化の時に、イラスト不可かも。1ビットの色気もありませんので。
「心配しなくても、あんたのポンコツ小説が書籍化されることも、神絵師が付くこともない」
「そうじゃろうけどもー。そんな夢の無い。乙女から夢を奪ったら何も残らんちん」
「あんたには、この惑星の支配者という名誉があるじゃない」
「そんなものに、なった覚えはありますん」
それ以前に、この小説は、なろうで更新されてるんですかね? 魔法能力を失ってから、日本で踏み台になっている猫耳ニャア大佐とのリンクが切れた気がします。私の書いたこの神話的物語は日本に届いているでしょうか? 届いていたら評価・リアクション・感想でお答え下さい。
「さて。ミーナの入った桃を拾いに行きましょう。早くしないと腐ってるかもよ?」
「そげな、おそろしいことを」
腐って無くても、空気穴とかちゃんとあるのかしらん。不老不死だから、死なないだろうけど、桃を拾って割った時にはヒドイ事になってそう。
ミーナの入った桃が川上からドンブラコしてくるとは決まってませんけどね?
「ところで、川ってどこじゃろ?」
「さあ? 前あった場所にないかもね?」




