13-1. よく分からないとこへ行っても何とかするのがIT派遣です
「果てしない星の海を私は行く! 宇宙の海は私の海! はーはっはっは!」
移動型ショッピングセンターが星の海を越え、銀河中心核へ向かって進む。
無限に思える宇宙空間に、宇宙海賊タオルンの高笑いが響く。実際には響かないけどね。
そしてついに辿り着いた銀河中心核には、天使の巣。タコがうじゃうじゃうじゃーっです。
由緒正しい宇宙人の姿ですが、これがこの世界の天使です。
「天使って、エッチな人形じゃなかったの?」
「わいのデータベースにある天使は、このタコやで。食えるで」
「ほいじゃー、タコ型天使捕獲作戦開始!」
「がってんしょうちのすけー」
実家を襲った天使はエッチな人形型でしたが。ここの天使はタコ型。エッチな人形型天使の巣もどこかにあるのかしらん? ここに来るまで発見してないわね。
このタコ、食べると呪われそうですが、貴重な食材なので捕獲します。
底に穴の開いたコケシが中心に居ます。あれは蜂でいうところの嬢王蜂。大天使です。
頭部分がボコンっと切り離されて天使タコになります。ポコンポコンと天使を産み出しています。これは食用に適しませんが、いわばタコ発生機なので生け捕りも検討しましたけど、人類を滅ぼす存在なので、消滅させました。
コケシの底に開いた穴の用途は、私達幼女なので分かりますん。
ショッピングセンターの中には、畑とニワトリ小屋もあるし。銀河辺縁系で、倍に無限増殖する、伝説の栗まんじゅうもあります。いや、栗まんじゅうはおっかないので消滅させましたね。大量のタコを冷凍保存したので、当面の食料は心配無さそう。
私とタオルくんは不老不死、永遠の6歳幼女なので、右脳が一瞬で破壊されない限りは死ぬ事もありません。無限の宇宙を無限に旅できるのデス!いや、宇宙も有限ですけどね。実質有限ってヤツです。ご利用開始から6ヶ月間は無限です。
私もタオルくんも死ねば異世界転生する特殊体質なので、最悪死んでも死にません。
でも、さすがに飽きてきました。
宇宙って、どこまで行っても、特に代わり映えしないんですよ。ガス状星雲とか、赤色巨星なんかも、何個も見てると飽きてきます。
ブラックホールなんか、実際見てみたら、札幌の時計台みたいなもんですよ。
天使以外には、存在を認知できる生命体とは遭遇しませんでした。ウイルスとか細菌の類なら居たようですけど、私とタオルくんには見えませんからね。もちろん、危険なので採取もしてません。研究のために来たわけじゃなくて、遠足みたいなものなので。
でー、そろそろ帰ろうかいねー、となったのですのジャガー。
「クッククッ、はーはっはっはー、はあぁ。ここ何処?」
私とタオルくんには絶対迷子感があるので、やはり迷いました。
「どこって言われてもなあ。どんな波長で観測したところで、光速は越えられへんねんで? テラワロスがどっちにあるかも分からんなあ」
「さすがのインチキ科学でも無理かー」
外宇宙も航行可能な移動型ショッピングセンターのメルモンに乗って、テラワロスを離れ旅すること幾星霜。ここはテラワロスから2万光年くらいですかねぇ?2万年の彼方の電波をキャッチするなんて、どんなインチキ科学でも困難ですわー。なお、テラワロスとは私達の実家がある惑星の正式名称です。チタマという仮称で呼んでいましたけど、地球の神話由来とはいえ、まんまパクリは良くないですね。
惑星だけじゃなく、恒星だって銀河系だって、ぎゅるんぎゅるん回っているのですよ。宇宙空間において、「ここは9丁目の53番地やからー、薬局の角を曲がってー、アレ? 薬局がもうあれへん、潰れてもうた?」みたいには、いかないですよねー。
「せやから、さっきの角を右やゆうたやろう?」
「あっしも右だといいやんした。斜め左上に進んだのはメルモンでやんす」
「あれ? せやったかな。そもそも宇宙空間で右と左とかゆうてもね?」
この館の航行を管理する2つのAI。メルモンとミクルンはまだ、漫才をする余裕があるので大丈夫でしょう。あくまでもショッピングセンターなので、艦ではなく館です。メルモンはショッピングセンターを管理するAIで、ミクルンはアンドロイドに搭載されたAIです。
「ともかく、テラワロスに帰ってね」
「もしくは、人類相当の生物が居る惑星でもいいんじゃけどねー」
帰宅経路の探索をAIに丸投げした私とタオルくんは、館内のスーパー銭湯に行きます。宇宙空間を航行中でも入れる、天然の温泉です。どういう原理なの? 源泉はどこから湧いているのかしらん。
「この館は、ひとつの惑星として完結してるんでしょ。知らんけど」
「食べ物が、ちょっと厳しいけどね。でも、タコが大漁だし、外宇宙まで行っても良かったんじゃけども」
「メルモンが外宇宙は暗いからヤダって言うんだから仕方ないね」
ひとつの惑星として完結しているとはいえ。川崎ルフロン程度のサイズですからね。循環のスピードも速いんじゃないかと思います。
「この水は、先週タオルくんがした、おしっこじゃろか?」
って感じですよ。宇宙ステーション内では、おしっこを濾過して飲んでたはずなので、それよりはマイルド? むしろ、よりダイレクトな気もしますね。
「宇宙を旅して何年だっけ?」
「さあ? わしらトシ取らんし?」
「あんたの、シリアナに年輪とか無いの?」
「…… はて? どうじゃろうか?」
自分のおしりのあななんて見たことありませんし? 魔法を習得した時、真っ先に試したのが「自分のおしりのあな見てみる」ですけど。無理でした。どうやら、宇宙の真理であるロリロリ法違反だったようです。インチキ魔法であっても、宇宙の真理には逆らえません。
「うーん、どれがあんたのシリアナナンバーなの?」
「どれって言われても、自分で見た事無いし」
私のカラダは、女神シリーズという有機素体です。この世界に異世界転生した時に、この容器に、私の魂がスポっと入りました。女神のミラおばあはんが、おもしろそうだから入れてみたとか言ってましたけど。
「うーん? どれって言うかさ、これ天地はどうなってんの?」
「へ?」
「それに、数字の刻印なら3つあるのだけど、もしかして三桁だったり?」
「999って事? わし、銀河鉄道の車両じゃったん?」
「いや、666じゃないの?」
「エ?」
そういえばー? 私は、ミラおばはんのナンバー0、ダモン王宮の地下ダンジョンに眠っていたナンバー1のシリアナナンバーを、いやシリアルナンバーを見た事ありますけど、どっちも天地逆でも同じですね? タオルくんの言う通り同じ数字が3つありましたけど、000を3桁だとは思いませんでした。1桁じゃないのん?
どれかが掠れたり消えたりしてもいいように、可読性を担保するための冗長性かと思ってましけど。私と同じカラダがあと997体も、何処かに眠ってるのん? 廃棄されたか、既に使用済みでポンコッツなのかも知れないけど。
「おしりのあなは出口なんじゃけ、天は外側なのでは?」
「あんたは、やたら座薬入れるんだから入口でしょ、この穴」
「はれ? いや、最近は入れちょらんし?」
一時期、「アホ毛生えーる」や「大人になーる」などの魔薬で遊んでいたのですけど。これの即効性タイプが座薬なんですよ。あれはもう在庫が無いし、生成する魔法も使えなくなったのでありません。私は、魔法が一切使えなくなったので。
「で、年輪は?」
「ないわね。あったとしても、以前の状態を知らないのだから意味ないわね」
「ほいじゃあ、これはタダの犯罪行為なのでは?」
「姉妹でシリアナ見せ合うのは合法よ」
「そうか? ほいじゃあ、お前も見せろ」
「いいよ」
タオルくんのシリアナには、ナンバーの刻印も年輪もありませんでした。あったら、見なかった事にしましたけどね。
ところで、私達が姉妹なのかと言うとどうなんでしょうか? 日本に異世界転生した時に二卵性四つ子の姉妹でしたけど。この世界では体が違います。いや、融合したのだから、二卵性四つ子の情報も引き継いでいる? つまり、後天的な血の繋がった姉妹? 後天的に血が繋がるってとこが何でもアリですね。
なんでもアリといえば、6歳幼女同士だったのに、戸籍上では夫婦だったりもしました。その戸籍は、もう破棄されてますけど。王女と女王になった時に「王族に戸籍はありません」って消されました。
まあ、なんでもいいですね。私達は不滅の絆、イモータル・イモートです。不滅とか言っておきながら、四姉妹のうちの二人、ニートンとミーナはもう居ませんけどね。
「お前ら、なにしてんねん。そろそろメシの準備した方がええんちゃう?」
「おい、風呂を覗くのは犯罪だと言ってるだろう?」
「なんやそれ。わいにはそないな制限はかかってへんゆうてるやろ。それに音声だけで、映像は見てへんわ」
どうやらメルモンが製造された120万年前には、ロリロリ法は制定されていなかったようです。もしくはロリっ子が居なかったのか。
ほいじゃー、そろそろ宇宙での最後の晩餐ですかねー。
この章から読んだ方。星1つでいいので評価お願いします。さもなければ、お前もIT奴隷にしてやろうか!