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魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
12.論理構成図 -結界を決壊せよ!-
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12-33. ブラック企業は突然配置転換をしたがる

「あんた、最近寝相が良くなったわね?」

「ほうじゃね。魔力袋を摘出したからじゃろうか」

「だったら、もうちょっとこっちに寄りなさいよ。ちょっと寒いのよ」


 私とタオルくんが、何処に居るのかといえば、旧ミヤコ領へ向かう開拓団の猫バスの車内です。

 比喩ではなく、マジ猫バス。他足歩行型の輸送車両なのです。

 旧ミヤコ領は荒廃した土地ですからね。無限軌道よりも肉球付きの他足歩行マシンの方が踏破性能も移動速度も上みたいですね。

 車内も猫バス的に毛玉モフモフならいいのに、メタリックな内装です。モフモフだと真夏に大変ですけどね。まるで日本の深夜バス。寝づらいのです。


 この猫バスは王宮地下の古代遺跡から発掘されたものです。こういった古代マシンを発掘したのは我々ですけど、旧ミヤコ領を荒れ地にしたのも我々です。罪と功績はどっちが上なのかしらん? 古代マシンを発掘したから破壊があったとも言えるので、表裏一体ですかね。


 テロリストが紛れているようなタクシーもどうかねー、とこのバスに乗ったのですが。これも快適とは言い難い。贅沢言っている状況でもないですけどね。


 以前は、タクシードライバーはおっちゃんでした。ショップの店員とかもね。でも、タクシードライバーがテロを起こしてからは、街中から消耗品は徹底排除され、女だけの世界になりました。完全にメルトランディ。

 隔離された男は戦場か、ニンゲン牧場にでも居るのでしょう。ニンゲン牧場では男同士で繁殖するんですかね? 女同士よりは繁殖行為が捗りそうですけども。


 今回の開拓団の第1陣も、消耗品扱いのおっちゃん達かと思いきや、予測不能の事態に備えて、近衛騎士の下っ端集団で構成されています。つまり、全員女騎士。クッコロ。


 私とタオルくんは、開拓に参加するワケではありません。視察でもありません。そんなものは側室とかの役人に任せておけばいいのですから。


 では何をしに行くのか。旧ミヤコ領内にある、古代遺跡施設メルモンに行くためです。そこにはメルモンとミクルンという高度に進化した自立型AIが寝ています。それぞれ古代遺跡の遺物で、世代と場所は異なりますが、今はリンクパス接続して同居しています。

 ちょっと前まで、もうひとつAIがあって、三権対立システムを組んでいたのですが、多分それはもう消えています。

 偶数だと多数決決議が不可能ですけど、管理者である私とタオルくんが300票くらい持っているので、問題無いですね。超高速で多面的な思考をパラレルで演算可能なAIがふたつもあるのです。むしろ過剰なくらいですよ。

 この世界には、まだ486か初代ペンティアム相当のCPUしか存在しませんので。いえ、惑星の反対側のアノンには量子コンピュータもありましたけどね? アノンとダモンには交流が一切ありませんし、アノンはビッチ天使の軍団にボロクシャにされてますから、もう高度集積回路なんて古代遺跡のモノさえ残っていないでしょう。


「そろそろ着くんじゃないの?」


 メルモンを中に収納した山が、地平線の彼方に登りゆく朝陽と共に見えて来ましたよ。その黒い影は、まさに悪魔の砦。


「メルモンか、何もかもが懐かしい」

「いうほど経ってないでしょ?」

「ほうじゃね」


 私とタオルンは、開拓団とは別れて、メルモンに入館します。ショッピングセンター型施設の中に、メルモンのマザーコンピュータがあるのです。


「めーるもーん! 野球しようぜー!」

「なんでやんねん」


 ははっ。ちゃんと生きてたわー。インチキ関西弁は健在です。


「はっ!? おやびん!? ぼくちん寝てませんよ!」


 すげえなこのAI。こんな芸当までするのかー。完全にシンギュラリティを通過しとるわー。マンガ的なハナチョーチンまでナノマシンの群体で再現してます。


「あれ? ふたりだけかいな? わいが寝てたの1週間もないで? もうあいつら死んでもうたん?」

「そうじゃけど。なんでそう思ったん? 同行してないだけかもよ?」

「あいつら絶対服従の奴隷やったんやろ? 連れてないのは不自然や。それに、ニンゲンは優秀なニンゲンを真っ先に刈るやん」

「おやびんが見限られたんでやんしょ? おやびんの人望極薄でござんす」

「ミクルンが正解よ」

「なるほどな。学習したで」


 またつまらぬ情報をデータベースに書き込んでおるわ。そんなに空き容量があるなら、スコンを退避させてやれば良かったのに。


「ああ、すまんな? あれもう消えてもうてるわ、リストアもサルベージも不可能やで」

「あ、そう。AIもユメマボロシの如しナリよ。是非もなし」

「うちの管理人はん、稀に見る情緒がさらさらパウダー状態のおヒトやわー。ほんまにニンゲンなんどすかー?DOSちゃいます?」

「堕天使と悪魔じゃけ」

「ほう? 本人はチュウニ病の症状のつもりか知らんがー、ほんまに堕天使と悪魔の夫婦やな?こいつら」

「そうでやんすか? ぼくちんのデータベースにある堕天使と悪魔の定義とは異なるでやんすよ?」

「どっちが正解なんやろ?」

「どっちもチュウニが正解よ」


 この子達のデータベース上では、堕天使と悪魔の定義はどうなっているのん?


ミクルンの定義

【堕天使】長い前髪で邪気眼を隠している。ヘヴィメタTシャツにジャージを好む女神崇拝者。発言に特徴がある。「ククッ、我は暁の堕天使… 名は明かせぬ… 」

【悪魔】堕天使の上位互換。魔界の中間管理職。ニンゲンの役職でいうと課長。


メルモンの定義

【堕天使】天使もしくは女神の不良ロット。ハズレ。

【悪魔】堕天使の下位互換。ニンゲンと合体する能力を要する。稀にニンゲンに意識を乗っ取られる。ニンゲンの敵。


「どっちも私達とは、微妙に違うんじゃない?」


 共通しているのは、所詮はニンゲン、ということ。霊長目ヒト科悪魔属。

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