2-5. IT業界で培ったメタルハートこそが最終兵器でしたよ?
私は、異世界に転生する前は、しがないIT派遣でした。
システムエンジニアとしての能力は広く浅い感じで、特別秀でたものはありません。1〜2年で派遣先が変わるので、特定の技術を極める余裕は無かったので。器用貧乏というやつですねえ。
他者と比較して明確な優位点があるとしたら、反社のような金融系の顧客相手でも怯まないメタルハートくらい。トータルで7年間金融ばかりフロントで担当していたので鍛えられました。私のメタルハートは剛毛でもじゃもじゃですよ。もじゃー。
「そのメタルハートゆえ、ニャア少佐は地上最強魔法少女なのです。この世界の魔力は行使者のメンタルの強さに比例しますので」
「心臓に生えている毛の数だけ魔法の火力が上がるでござるか?」
「そのとおり。腹の黒さだけ魔力量も増えます」
「なるほど。剣の道も明鏡止水の心境が肝要。魔法も精神次第というのは納得でござる」
シスターによると、この世界の魔法は、精神力や胆力次第であると。なにやらメイドにんにんが納得してますがー。心臓に生えた毛の数ってなによ? 明鏡止水とは真逆の境地だと思うよ。
歴戦のIT派遣こそが、魔法世界の覇者だったとはー。異世界転生してから、ITスキルしか無くて詰んだわー、と思ってましたが。こんなにも私に都合の良い世界だったなんて!
魔法を得た途端にトップエリートですよ! トップニャンですよ! ニャア少佐ですよ! ふっ、認めたくないものだな、自分の腹黒さ故の強さというものを。いや、腹黒は違くないですかねー?
でも、強大な力は諸刃の剣ですよ。猫耳のニャア大佐は懲役一万二千年ですからね。と言っても、プリズンを制圧して、猫耳美少女侍らせて楽しくやってますけど。今後は、魔法無双は控えた方がいいかも知れませんよ。
「ニャアが改心して善人になったら弱くなるのかしら?」
「いえ。一度獲得した魔力は衰える事はありません。それに、この子が改心なんかするわけないでしょ?」
「そうね。見る必要もないのに治療に必要だと大嘘こいて、人のおしりのあなをいじり回すような子だものね」
「え? しりあなの治療って何ですか?」
「ニャアは治癒魔法が使えるのよ」
「な、治せるのですか!? 弄くり回してもいいので是非おにゃしゃす! むしろ、弄くり回して下さい!」
シスターよ、お前もか。お前もおいなりさんなのか!
おいなりさんとは、この国の慣用句で変態さんを意味します。三種混合悪魔合体しりあなの隠語でもあります。知らずに使ってましたわー。
知らずに使ってることなんて、よくある事。ある企業で「障害試験」という単語を使ったら、鬼の様に怒られました。縁起悪いから禁句なのだそうです。必須の試験を禁句にする? そういう事するから大規模障害起こすんじゃないの?
「むーん、はい。治ったよ」
「え!? ほんとですよ!? 弄くり回して良かったのに…」
「私が、弄り回すのは健康なおいなりさんだけですよ」
「健康なおいなりさんも弄くり回してはダメでござるよ?」
むう。紳士的なセリフを決めたつもりが、私もおいなりさんです。私も大変な変態さんなので、是非も無しですよ。
シスターのおしりのあなをグリグリするなんて、背徳感が天元突破で、とんでもないご褒美ですけどねー。三種混合悪魔合体のソレはグロさも天元突破なので、今回はイエスシスターノータッチで治癒です。治癒魔法行使も、しばらくはご法度ですね。
「しりあなを完治してもらって言うのもなんだけどね。今後は魔法は控えるべきでしょうね。今回は、都合の良い連中に囲われましたけど。もっとたちの悪い連中に目をつけられたら、バラバラにされて試験管の中に脳みそプカーの飼い殺しとかあり得ますから。月刊シスターの特集で読みました」
その月刊誌について詳しく!
おいなりさんシスターの言う通りでしょうね。待機軍人として名簿に名を載せるだけでいいなんて、都合が良い話で済んで良かったわー。
「ところで海軍がどうとか言ってたけど? 陸軍が人攫いを寄越したのは知ってるけど。海軍も何かしてきたの?」
「何かされたのではありません。何かしたのです」
お姉様の疑問に、おいなりさんシスターが勝手に答えます。
「ニャア少佐は、第7艦隊を殲滅しちゃったんですよ。虎の子の怒級戦艦を強奪して」
ははっ。猫耳世界でやらかしたトリガーハッピーが忘れられずに、こっちでもやっちゃいましたよ!セーラー服と45口径46センチ3連装砲ですよ! ぶひぃ。
しかし、どういうことですか? この教会は懺悔の匿名性も秘匿性も皆無じゃないですか! 何のための懺悔なの? うーん? この村の民の弱みはすべてシスターの手の内に!? うちの定食屋と並ぶ、悪魔の機関ですよ! この教会は! 大変変態で結構。
「怒級戦艦も真ん中からへし折っちゃったんですよね?」
「ははっ。坊やだからさ!」
「ぼっこは関係ないでござる」