12-26. 異世界日本で悪事魔法
川崎市川崎区、駅から徒歩10分程度の風紀の乱れた界隈に、ニャア大佐のお家はありました。
200坪くらいの敷地に、2階建ての高気密高断熱省エネ住宅。ガレージには、高級車が3台停まってます。どんな悪事に手を染めたのやら。お金持ってそうですねー。
「こにゃにゃちわーん!」
「お? 久しぶりだにゃ?」
「おう! うちの子達は?」
「学校に行ってるにゃ」
「え? 医師免許とるために大学に再入学とか?」
「ちがうにゃ。治癒魔法あるから医者は要らんにゃ」
「ほいじゃー、弁護士?」
「それも、もう要らないにゃ」
「まさかの、代アニ!?」
「おい、宇宙海賊さんの母校をディスってんのか?」
あれ? タオルくんは宇宙海賊タオ☆ルンじゃった!? クイーン某か、キャプテン某かと思ってました。
「小学校にゃ」
「ほげー! こっちでも、似たような事を」
小学生の戸籍なんて、よく手に入りましたね? 小学生の浮浪者なんて居るのん?
「子供なら脱法的に手に入れ易いんにゃ」
「合法的ではないんじゃね。えーっと、うちの子達全員そうなんじゃろか?」
「いや、ナツコ大先生なら、在宅にゃ」
ナツコ大先生?
「おー、ニャアちゃんじゃないの。まだ生きてたのかー」
「おばさん、誰? まさか、オモッチお姉さん?」
子供部屋おばさんか、ヒキニートみたいなのがリビングにやって来ました。寝グセぼっさぼさ、上下スウェット。平日の真っ昼間から、ビール飲んでますよ?
これは、間違いなく和名ハルコ真名オモッチ、私達の平成末期日本転生時代のとーちゃんです。ちんちんレスだけど。
そうか「疎開転生」って言ってたわ。別の個体に入ってるんだ。見知らん顔のはずだわ。次に転生したらアキコさんなんじゃろか?
「発行部数1億部越え、アニメ化映画化実写化ゲーム化パチスロ化、無駄グッズも量産し、川崎市の更なる聖地化も果たした、超絶売れっ子マンガ家様じゃー、ひれ伏せ愚民共」
「ほげー!」
「私達がアジの一夜干しにゃ」
「絵に描いた餅はうまいにゃ」
ふむん? ニャア大佐の部下魔獣さん2頭がアシスタントさんなんじゃね?
「あんた、今のでよく分かったわね?」
「異世界転生のエキスパートですから」
私は、ちょっとした事でコロっと死んで、異世界転生します。経験した異世界は、100を越えるかしら? 元IT派遣奴隷だった時の「新しい派遣先の独自言語を覚える」というニュータイプ能力があるので、異言語の習得は得意なのです。何故か、未だに英語は習得できませんが。IT派遣奴隷は人類の革新なのです!
「こいつら魔法でアシストしてくれるからなー。未だにアナログでやっていける。私は落書きみたいなネーム描くだけよん」
「あんた元システムエンジニアなんでしょ? デジタルでやらないの?」
「はぁ? システムエンジニアが何でもデジタルに強いワケあるか。デジタル作画も、DTMも動画編集も無理だぞ」
「まぁ、そゆうもんじゃろね」
「で、ニャア大佐は何してんの? マンガの上前はねてんの?」
「失敬だにゃ?」
ニャア大佐は、最初のうちこそ毟り取ったキネマであるIT派遣奴隷をやったそうですけど。魔法を使う事にしちゃったそうです。魔法で、この辺一帯の反社の大脳新皮質をフォーマットして舎弟にし、上前をはねたとかはねなかったとか。
銀行の支店長に貸金庫荒らしをさせたり、浮浪者の戸籍を転売したり。でも、魔法を使ってまで悪事を働くこともないな? と気付き、弁護士を下僕にして、カバのライ金がどうとか、なんたら被害がどうとかで、荒稼ぎ。今は、マンガ大先生ナツコ様の、法と暴力両面の用心棒だそうです。
なるほどー、その手があったかー。今の私は魔法の使えない素幼女なので真似出来ませんけど。
「そんなワケだから、お姉さんはもう日本に永住するわよー。あんたらは、とっとと帰りなさい」
「小学生やってる連中も、お前にはもううんざりだそうにゃ」
そりゃまあ、奴隷にしたり、どんぐりにしたり、散々な目に合わせてますからね。いや、どんぐりにはしていない。
「はあ、ほいじゃあ、帰ろうかタオルくん、ボッスン」
「は? 私も、この世界で魔法無双しますわ」
「え!?」
「お前にはもう、愛想が尽きたからな! なんなら今スグ死ねー! 怪人ミツバチ幼女め! あふんっ」
突如、反撃を開始したボッスンはニャア大佐に倒されました。
何と!? 絶対服従の契約まで大嘘でしたか!? 所詮は、私の家臣です。是非もなし。
「こいつはもうダメだにゃー。お前ら一体何をさせたんにゃ?」
「いやまあ、心当たりなら沢山ありますん」
32万年も「精神を病んじゃうドッキドキの部屋」で修行させたり、全裸でダンジョン攻略させたりね。いや、全裸は無かったっけ?
「最悪処分するとして、大脳新皮質をフォーマットして舎弟にしてもいいかにゃ?」
「いいよー、返品不可ね」
「最近、仕事が増えて困ってたんにゃ。この世界の魔法使いは貴重だからにゃ」
あれ? そういえば、この世界には魔力の源であるマナもカナも極薄で、使える魔法も限定的だったはず?
「お前は、まだそんなものに囚われていたのにゃ?」
「いや、まあ、もう魔法は使えない素幼女なんで、どうでもいいんじゃけど」
「あ、そう? なんならしばらく滞在してく?」
「いやー、私らも小学生なんで。退学したくないし。留年も出来ない厳しい学校じゃからして、出席日数足りなくなるのはまずいんよ」
「さっさと帰りましょうか」
「ほいじゃー、私が転移魔法で送ってやるにゃ」
「そうはさせるか! ゴミクズがあ!」
「あ、やっぱこいつ処分にゃ」
あ、おい。ボッスンが異世界転移魔法に割り込んで、邪魔しやがった!
え? これってどこへ転移しちゃうの~?