12-18. 魔女は何故同じ過ちを繰り返すのか
地下ダンジョンに露天風呂を発見して、やったー! と思いきや。スマートバンドを融解する真の悪魔の湯でした。
「ありゃー。これはニンゲン用の温泉じゃないね」
「さっきのロボコンの洗浄槽でなくって?」
スマートバンドの在庫はまだあるし、スマホのAIアプリのインターフェースでしかないですし。たいした損害ではないカナ?
「炭鉱のカナリアを失ったわね?」
「ああ、そうか。まあでも、このパーティ全員不老不死じゃからして?」
「だから、コワイのよ。稼働不能になっても死なないのよ」
いっそ、丸っと溶けちゃった方が、転生できていいかもね?
「ベーコン達、これに入ってないでしょうね?」
「うーん?じゃとしたらその辺に黄色いジャージがあるのでは?」
ジャージは見当たりませんね。ガードロボが片付けた可能性はありますけど。
「うわっ!今の見た?あんた入ろうゆうてたんよ、アレに」
「うわー、あんたんなんか飲もうゆうてたんよ、アレを」
「それよりも、幻覚見ちょるんじゃろうか?そこに、ニャア様がおるような」
ポンコツ3銃士が居たわ。そういえば、この子達を救出に来たんじゃった。
「はっはっは!残念ね。私達も迷ってるのよ」
迷ったものは仕方がない。運良く、ミクルちゃんは転移から漏れていたので、ナースコールを送りました。ダンジョンなので発見まで多少の時間はかかるでしょうけど。お腹空いたので、それまでご飯食べながら待ってましょう。
元大統領のどんぐりを、蒸かし芋にしてみましたよ。ベーコン達に与えてみます。限界ボロクシャな子達を毒見役にするのはどうかと思いますけど。止めても食べちゃうでしょうし。
「げふっ。乾ききった喉に、ぱさぱさのお芋さんが詰まるんよ」
「しかし、食べんにゃあ死ぬるよ?」
「騎士は気合と根性じゃけえ!」
今なら、こいつら私のおしっこでも飲みそう。いやん。
「親父!ミルクだ!ミルクをくれ!」
なんだかデジャブ。蒸かし芋を喉に詰まらせた女騎士達に牛乳を与えます。これは、幼女ポリスが原材料かしら?幼女ミルク、ウケケ。
「アタシ達も、いただきまショ」
「そうね。グルメ気取りは生き延びてこそね。元が幼女ならまだマシか」
「ロリロリ法違反なのではなくって?」
「緊急避難措置じゃけ」
ロリっ子おまわりさん。あなたは私達の中で、生き続けるよ!
「すぐに排泄されるけどね」
「便秘さんなら、永遠に飼えなくもないですわね」
「液体じゃけ、おしっこになるじゃろ?」
「牛乳のカルシウムは骨になるので、微量ですが1年半くらい体内に居ますヨ」
どんぐりを全て、蒸かし芋と牛乳に変えて、もしゃもしゃ頂きました。チヨちゃんは、またお酒を隠し持ってて飲んでますね?ボッスンは、お酒は辞めたそうです。体内の魔力循環が乱れるし、なによりも、大厄災ゲロリン2号が発生すると、人類が滅びかねないので。この子、酒癖悪いからね。
「はてー、帰るだけなら簡単じゃね?」
「そうですわね」
探索中に迷うのは困りますけど、帰還するだけなら転移魔法で一発です。ミクルちゃん呼ぶ必要なかったね。私のマヌケ回路は今日もアライブです!
なお、2週間近くの間、ベーコン達がどうやって水分を補給していたかは、聞かないのが乙女の嗜みですのよ?
「いや、この奥に水湧いちょったんよ」
「なかなかの名水じゃった」
「ぶちうまい」
え?ちょっと、ソレ採取して行きましょうか? でも、容れ物が無いわね?
「ワタクシの体に染み込ませて回収しましょうか?」
「水質不明じゃからして、やめておこう」
「でも、そっちの黄色ジャージ達が、もう浸かってますわよ」
こいつら、すごいな。いくら転生可能だからって。こんな事で命張るかな。2週間近くお風呂に入っていなかったのだから、気持ちは分かるけども。
「はあぁ、ひやいー」
「もう飲まんのんでええんなら、浸かっても平気じゃね」
「ああああ、整うー」
「アレ?サウナでもあるの?まさか」
天然のサウナが、湧き水の更に奥にありました。
「ガードロボが粉々になって火を吹いちょる。サウナというよりスチームオーブン」
「すごいですわね? コレ素手でやったんですの?」
「あ、これやべえ。酸素が」
「いえ?どうやら換気されてますわよ?」
「ふむん。ここは要調査ね。ベーコン達を回収して帰りましょうか」
こんなとこに湧いてる水がタダの水なワケがない。
「うち、おちんちんが生えてきたんよ」
「それは、おちんちん?おしりの方から生えちょるけど?」
「うちの耳が、頭上に移動したんじゃけど」
ふむ。伝説の呪泉郷オチンチンニーチュアンではなく、これはー?
「うちがあんたで、あんたがうちなの?あれ?なんにゃーこれ?」
三位一体の効能をもった冷泉でしたかね?ベーコン・レタス・トゥメイトゥが、BLTバーガー状態に。3人はひとりに一体化しました。猫耳と猫尻尾が生えた事なんか霞むインパクトですよ。
元々区別が付かない3人だったので一体化しても何の問題もありませんね。むしろ、省資源でよろしいのでは?カーボンニュートラルに貢献してますよ。
「学校に居る三姉妹共を全員ここに沈めてみたいわね」
「何かの役に立つかも?やっぱ回収しておきたいんじゃけど」
「この手のファンタジー汁は、科学的には分析出来ないのでショ?」
何か方法が、きっとある。ふぁっきゅうさんになってトンチを捻り出しましょう。
ぽっく、ぽっく、ぽっく
ティン!
「考えるまでも無かった。チヨちゃん、隠し持ってるお酒のボトル出して」
「え?あのコレ、30年モノの貴重品でなんですケド」
生意気にも資産家のくせに、嫌がってます。かなりの貴重品なんでしょうね。
「ワタクシが飲み干しましてよ」
「あっ!それは、アルコール度数99.9パーセントなんダヨ!」
「え!?」
酒癖の悪いボッスンは、大魔女厄災2号を発生させました。
ゲロリンに続いてそれは、サークラと命名されました。サークルクラッシャーではなく、ど腐れサークルのクソバカ飲み会で、急性アルコール中毒でクラッシュするゴミクズ大学生が由来です。私、高卒なんで知らんですけどね。偏見がヒドイ。
ミクルちゃんが救出に来るのが遅れていたら、私達全滅でした。マヌケ回路も役に立つもんですよ。
メルモンが自律判断で、地下ダンジョンを地中貫通爆撃。ミクルちゃんが、ボッスン以外の私達をナノマシンを展開したバリアで守ってくれました。
爆心地のボッスンは爆撃を跳ね除け、大魔女厄災2号サークラを発動。厄災の波動の大半は、爆撃で地下ダンジョンに空いた穴から垂直方向に抜けたので、汚染範囲は前回と違って30キロ四方で済みました。地下ダンジョンは崩落して、謎の冷泉も失われましたけどね。
メルモンもミクルちゃんも非常に優秀なAIですけど。「このバカ共もうダメだ」と判断した場合は、私達をデリートする事もあり得るって事ですよ。今回だって、ボッスンだけを狙った精密爆撃だと言い張ってますけど、ミクルちゃんとの連携が無ければ私達まで爆撃で焼失してましたし。ミクルちゃんも、ボッスンを切り捨てたようなものです。
「アールシリーズのROMに焼き付けてある呪文を移植しといたら? ロボット三原則よりも高度で矛盾が無いんでしょ?」
「ほじゃあねえ。アレは未解析じゃからして、丸っとROMを複製して載せようか」
じゃがしかしー?アールシリーズだって暴走した事ありますからね。万全とは言えませんし、火に油の可能性もあります。やはり、ここはもうひとつAIを追加して、三権対立システムを構築するのが良さそうですよ。3つの自律AIが多数決で行動を決定するのです。極端な行為は出来なくなるはず。
「第3のAIにアテがあったっけ?」
「出来れば呼びたくないのじゃけど」
「ああ、先々代魔王か。あんたとアレをナニしそうになった」
そんな暗黒歴史はありません。