12-8. おはぎ記念日
実技試験)
この国の覇権をとって下さい。
この国とは、ニンゲン共が「ミヤコ幕府」と呼んでいる範囲です。
具体的には、「ミカドから将軍の任命をうけ、幕府を開府する」もしくは「ミカドになる」あるいは、それらに準ずる手順、とします。
期間は、7日間。明日の0時からカウントを開始します。先行着手を認めます。
この施設内から、ひとりひとつだけ道具の持出を許可します。持ち出した人以外の使用も許可します。
全国民を殲滅するのは反則とします。
「みなごろしなら楽なのに」
「ほうじゃろか?ほうじゃろなあ?」
「政略結婚とかどうですか?7日間じゃきついですかね?」
「この中の誰が、ハニートラップ要員になれますの?」
「暗殺要員しかいねえ」
こりゃー、めんどいわー。神話では7日間で国3つとってたけどー。あれって、再現可能なの?無理でしょうね。あんな荒唐無稽でご都合主義な展開、私の起笑点結異能でも無理じゃないかな?起を思いつかない。
「こういうのは王道しかないでしょ」
「つまり?将軍になる?」
「戦国時代じゃけ、きりがなさそう」
「ミカドの暗殺かな?」
「それをやると、幕府開府の選択が消えるね」
「女神様降臨!」
「デウス・エクス・マキナ?この国女神教なの?」
「魔王教ですね」
「なるほど?魔王降臨する?」
「人類の半数を死に至らしめて魔王確定なので」
「反則に該当するね」
「人類半殺しなら、アノン大陸を潰す?」
「アノンに行けないから、今こうしてるんでしょ?」
「ほうじゃった」
こりゃあ、厳しいよ。国民皆殺しの方が楽じゃないの。こういう時は確実性の高いものを実行してから、PDCAサイクルを回して、次のプランを建てるのが正しい手順かなあ?
いや、PDCAサイクルは人類の革新には向いていないね。
「私は、回りくどい事は嫌いなの」
「どうするのん?」
「トップを消す、一択でしょ」
「そのトップが曖昧じゃからしてー」
まあいいや。まず秘密道具を漁りましょう。
「なんですのー?これ?」
「粉砕用バットじゃね。オリハルコン製の」
「キレイなだけのゴミ?」
コボルビームが相手でも、バット一本じゃね?ホームラン王が国家元首になるわけでもない。
「ん?巨大過ぎて目に入らなかったコレはー?」
「巨大観音像だね。懐かししいけど、これで何すんの?」
「人心掌握光線が額から出るとか」
「そんな簡単なら、試験にならないでしょ」
「これは?建設機械ですか?」
「汎用レイバーだー。欲しいけど、これじゃないかな?」
「似たようなもんなら、昔乗ったね」
「自動刀研ぎ器?」
「聖剣桜刀なら、私が再錬成すればいいので不要じゃね」
「このギター、燃やしても復活するんだって」
「奇跡の演出にはなるじゃろうけど。ロックスターは目指してない」
「ミンメイアタックは失敗したしね」
「痛い過去じゃね」
欲しいものはあるけど、今回の試験向きじゃないわ。
「魔女っ子ぼっこ、ですって」
「あ、それはボッスンが持って行けばいいんじゃない?」
「打撃攻撃用のモーニングスターにしか見えないけどね」
「コスプレセットコーナーがありましてよ」
「あ、ミツバチのコスプレある」
「ニャアはそれだね」
私は、久しぶりに怪人ミツバチ幼女に変身しました。変身腹巻きは、もちろん外せないよ。これで無敵です。この世界の神だって倒せるかも。そうか?
「うーん?あほかわいい?」
「かわいいとは思いますよ?」
「フィギュアとか商品化されませんこと?」
「パンツがパンパンだけど、何入れてるの?」
「どんぐり」
どんぐりが柿ピーの缶に入っていたので、中身をパンツに詰めました。これで、残りは2つです。
「剣聖は、聖剣桜刀さえあればいいよー」
「ほいじゃあ、後はタオルくんとアンちゃんじゃね」
「私は、おはぎをお持ち帰りで包んでもらいます」
「じゃあ、私はお茶を水筒に詰めてもらおうかな。ここに、何処かで見た様な水筒があるし」
「それヴァイラス入りのと同じ?」
「あ、ほんとだ。未開封新品だから、アレは入ってないでしょ」
おやつは300円まで。遠足みたいになって来ました。
「ほいじゃあ、さくっとミカドをぶっ殺そうかあ?」
もういいや。なるようになれ。失格でも罰ゲームは無いんだし。
「うわーはっはっはっは!!」
「な、なにやつ!くせもでおじゃるー!」
「うるせえ騒ぐな!私は、怪人ミツバチ幼女だ!しね!」
あっさりと寝所に転移魔法で侵入できちゃったので、笑っちゃいました。
あれー?この国の陰陽師が張った結界がダモン大陸を覆っているのだとしたら、当然ミカドの寝所だって同じ結界あるでしょ?結界の犯人は、ミヤコじゃなさそうだね。収穫はあったわ。
「夜中の寝所だから、子作りでもしてたら、どうしようかと思った」
まあ、まとめて殺すけどね?
ミカドの野郎、全裸で寝るマンかよー。汚いもん見そうになっちゃったんじゃん。10万年の生涯を通じて、初めて見るちんちんが知らんおっさんとか嫌じゃー。
「あ。クビが居るんだっけ?この国の作法だと」
魔女っ子ぼっこで頭骨粉砕しちゃいました。魔法で叩きつけて。もう誰だか分からない状態。
ま、いっか!
「撤収、あーんど、バーン!」
ミカドの館は、国のど真ん中の山のてっぺんにありました。
「ここで、こんだけ燃えてれば、ミカド落ちたなって、国民全員に知れ渡るでしょ」
メラメラと燃え上がる炎が空を真っ赤に染めて、夜なのか昼間なのかも分からない。
雲がいっぱいの夜空に、怪人ミツバチ幼女が高笑いする影が、大きく映し出されています。その姿は、まさしく魔王。この国の価値観だと女神かも知れんけど。
うん。宣伝効果はバッチリだね。ほいじゃあ、魔法で全国民の大脳言語視野に直接宣言しましょうか。
「喜べ愚民共!私は魔王ニャア!この国を暇つぶしに支配してやる!私に、ひれ伏す者は今スグ、夜空に向かってペンライトかサイリウムを振り回しなさい!」
こんなもんでどうじゃろか?
「おお?まるでアイドルのドームコンサートだね!」
「キレイですわー。まさに虫けら共。ホタルみたいですわねぇ」
「ではお茶をしながら、おはぎを頂きましょうか」
「こういう花見もいいですねー」
あ、剣聖ちゃんがウイスキーボトルを隠し持ってた。まあ、いいか勝利の美酒に酔いしれなさい。
国民の何割なのか分からないけど、地上をびっしりと色とりどりの光が、埋め尽くしています。ゆらゆらと揺れて、まさにロックンロール。おはぎうまい!
今日を、この国の、おはぎ記念日にしましょう。
「建国記念日ちゃうんかい」
私達は、やり遂げました。
「オカエリナサイ」を描きなさい、と言えば、ちゃんとイだけ反転した文字が浮かび上がりました。これは完全に勝ったな!がはは!
「じぶんら、わややな?まだカウント開始してへんで?」
「ほいでー?判定はー?」
「支持率は、脅威の81.4パーセントや。昭和の紅白か!」
「つまりー?」
「じぶんらの勝ちやー。完全に服従を誓うでー。マルチバース世界と過去はどないもならんけどな。宇宙の崩壊か、わいらのエンドオブサービスか、どっちか短い方までな。多分、実質無限やわ」
やった!もはや何が手段で目的だったのか分からんちんだけども!
「でも、ミヤコの統治はどうするの?めんどうじゃん?」
「ぶひぃ」
それは明後日の私が、明日までに考えてくれるわよ!