12-6. ダンジョン争奪戦
「冒険者登録を頼む。我とこの者たち4名もだ」
「え?はい?剣聖様でございますよね!?」
「ああ。我を知っているのか?」
「はい!剣聖様に登録していただけると、このギルドにもハクが付きます!どうぞ、こちらへ!」
私達は、冒険者ギルドの応接室へ通されました。剣聖チヨちゃんは、惑星全土で有名人なんだね。2万6千歳は伊達じゃない。ここミヤコ幕府でも即身バレしました。
「初めてお目にかかります。ギルド長の」
「くだらん挨拶はいい。早くしろ」
「あの、こちらのクソガキ、いえお子様は剣聖様の?」
「うるせえ。俺がこんなマヌケの娘なワケあるか。けつだせおら。うなぎの養殖場にしてやる」
回りくどい事が嫌いなタオルくんは、ギルド長を脅してさっさと冒険者登録を済ませました。いきなり最高ランクのプラチナです。
冒険者ギルドで冒険者登録といえば、古参にうざ絡みされてーからのー、徐々にランクを上げていって、「ヤるじゃねえか!ぼうず!」「おっさんもな!」、ほいでーギルド長が「わしが直々に貴様のランクを見極めてやろう!」ってなるのが様式美なのに。全部すっ飛ばして、ギルド長を泣かせました。
タオルくんの戦闘能力を見せちゃうと、ダモンから来た悪魔だ!ってバレちゃうので、剣聖がギルド長のふんどしを抜き取って窓の外に投げ捨てました。
「なんだおめえちんこねえじゃねえか」とボッスンが呟いて泣かせました。うーん?いやあ?もじゃもじゃの毛に埋もれてたみたいよ?私達全員視認不可でしたけど。ギルド長を務める武士だけあって優秀らしく、0.001秒くらいで反応して手で隠してたし。まあ、少なくとも片手で余裕で隠れるって事ですよ。ところで、ちんこって何?仮想器官なんでしょ?
「ほんまに、もううちで暴れんといてや?ここ昨日出来たばっかなんやで?」
「はいはい。ワロスワロス。お前らこそ、俺らのダンジョン攻略の邪魔すんなよ」
「やろうと思っても、できひんわあ!はよいってえなあ!」
はい!とゆーわけでね。今日は、ミヤコで発見されたばかりのダンジョンの攻略に来ていますよー!見事攻略したら、グッドボタンチャンスです!座布団のかわりに、評価ポイントお願いしまうー。
動画は回してませんけどね。そういう事です。
ダモン王国の間諜の報告で、ミヤコにダンジョンが発見された事を知った我々は、速攻で乗り込んで来たのです。自陣のダンジョンよりも最優先で攻略するか、破壊してやらないと!
ミヤコ幕府は冒険者ギルドを突貫で開設して、士官のあてのない素浪人を大量に集めています。ダンジョンから持ち帰ったものを高価買取すると言って。オープン記念キャンペーン、登録手数料無料、お宝買取価格30パーセントアップ!
冒険者ギルドは、食事処、宿泊所、武器防具薬品などの売店、武器防具の修理メンテナンス工房、賭博場、などなど。各種多彩に取り揃えて、イイ感じで利益が出る様に仕組まれています。素浪人はここでどれだけ稼いでも、お金はちょっとしか残らないので、必死でダンジョン攻略をしちゃうって仕組みですよ。えげつなあ。
「敵にもニャアみたいな参謀が居るって事だ」
「油断なりませんね」
「ぶひぃ」
それ褒めてんの?ディスってんの?ねえ?どっちでもいいけどね。私は、唯一無二、天上天下唯我独尊システムエンジニアのニャアちゃんなので。
「おい!やべえぞ。なんで、もうプラチナ級が居るんだよ。貴族かなんかか?」
「いや、あれは剣聖だ。目を合わせるな、ちんちんもがれるぞ」
他の冒険者がそっと避けて行くので、すいすいと奥まで進んでいけます。冒険者ランクは、ギルドで支給された額のハチガネの素材で分かります。プラチナはオリハルコンです。やっぱり、ミヤコ武士相手にコボルビーム撃つと反射されて、フレンドリファイヤーになっちゃいますね。王宮に来た野良武士相手にビームは使わなかったタオルくんは慧眼でした。
「まずは、人気の無いところまで進みましょう」
「そろそろ、よろしいのでなくって」
まだ、ちっとも攻略は進んでませんね。入口からここまで小競り合いの集団ばかり、ちょっと進んだだけで、素浪人達は居なくなりました。あいつら同士討ちしかしてない、あんぽんたんです。そりゃ仕官の道は無いわ。
「そろそろダンジョンのガードロボ出てくるんじゃないの?マナカナ吸引装置が稼働してるんでしょ?」
「うん。確実に何かが居るよ。濃度が変化するから、自立して稼働するタイプだと思うんよ」
ダンジョンの中には薄っすらとマナカナが漂っているのです。マナカナ発生器と、吸引装置の両方が存在するのかも。何したいんだここ作った奴は?
「だいこんふぃるむめるもちゃん」
「ほんわかぱんつきゅきゅきゅー」
「え?会話してる!?」
闇の中で、ゴソゴソ動く気配が近づいて来て、何やら話しかけて来たので、返事してやりました。私の大脳言語視野は完全にチートですね。
「なんて言ってるのこのロボコン」
「おかえりなさい、じゃって」
「へ?」
「マスタールームへ案内してくれるって。他のゴミクズは締め出したから、武装解除してもいいよー、とまで言っちょるけども?」
「いや、武装解除は無しでしょ。まず、そちらが解除して下さいと、お伝え下さい」
「あ、マナカナが安定して充満し始めた」
「ですわね?何かが漲ってきましたわ」
「ふーん?敵意は無いって証明かな?」
「ともかく、ついて行こう」
ロボコンというか、ルンバみたいなのについて行くと、吹き抜けのホールの様な空間があり、エレベータがありました。随分と近代的なダンジョンですね?山の中に川崎ルフロンみたいな建造物が埋まっているイメージです。
「あんたは、川崎由来のものでしか説明出来ないの?」
「ダモンの地下ダンジョンはアゼリアじゃけ」
「それでイメージ出来る人がどれだけ居るんだか」
エレベータに乗ると、現在のフロアは地上1階ですか。表記によると、地下2階から地上10階まであって屋上もあるようです。今は、丸ごと地下って感じですけど、元は地上のビルだったのでしょうね。エレベータもガラス張りで外が見えた感じです。今は土と岩の壁しか見えません。
エレベータは6階で止まり、降りるとカフェみたいな空間に案内されたので、丸テーブルを囲んで、腰掛けます。
「んんー。あーあー。これでイイナリ?」
ルンバ風ロボが、基礎言語を日本語に変更してくれました。
「あ、おっけー。日本語に聞こえる」
「この機械人形はもう我々の言語を学習したんですかね?」
「いや、6年前に目覚めてから、ずっと地上の人類を観察してたんじゃって」
「そうなり。だーれも入ってけえへんからなあ。茶化したろうおもて。誘い込んだんやで」
「こいつ、完全にシンギュラリティ越えてるわね。人類をゴミクズ同然だと思ってるんじゃないの?」
「せやで?ニンゲンは惑星の表面にこびりついたゴミやろ。でも、じぶんはちょっと違うな。わいらに世界を教えてくれた、女神って奴の末裔ちゃう?代替わりするんやろ?ニンゲンって」
「その通りです。こちら二代目女神のニャア様ですよ」
「ほんまー?ほんなら、また一緒にニンゲンいじってあそばへん?」
ここまでダンジョン攻略要素が皆無です。なんかあるんでしょ?お前らが管理者たる資格があるかテストしてやるーって。
「それな。ミラゆう女神が、それやれって言うてたわ」
「やっぱり」
よっし!案外とこのパーティはインテリジェンスも高めなんですよ!なんでも来なさい!