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11-22. 彼方からの使者

 私達は、この学校でやれる事を、全てやりきったー。後悔など無い3日間でしたー。


「そんなわけないわよね?」

「ほうじゃのー」


 入学式をカウントしても4日間。内1日は、社会科見学を途中でバックレたので、実は出席してません。中庭の桜だって、まだ散っていないし、満開にすらなっていません。


 文化祭もまだ、修学旅行だってまだ、部活だってまだ、何もやってませんね。


「あのなー?労災の休業保障って固定給の6割しか出ないんだぞ?よぉく覚えておけー」


 ユカリン先生は、やはり仮病でした。復帰するのかと思いきや、実家に帰るそうです。この人、公爵家のご令嬢でした。なんと、今まで不足していた悪役令嬢はここに居たのです。貴族枠の採用だったので、無能だったんですね。

 こんなのが公爵家で何するんですかねー?知ったこっちゃないですね。


「ほいじゃあ、授業を始めるよー。量子力学の基礎からねー」


 えーと、突っ込んだ方が?小学1年生で、シュレディンガーの猫とかやんの?まさか、実際に実験しないでしょうね?なんとなく、このくだりはデジャブです。昔々、村の学校ごっこで特殊相対性理論がどうとかやってましたよ?

 システムエンジニアとしては、量子コンピュータの仕組みを理解するためにも、授業をまじめに聞きましょうか。関係あるのか知りませんけど。


「先生ー、その前に、スク水で授業するの嫌じゃけどー」

「あら?だったら実力で奪えばええじゃろ?」

「あ、そう」


 うーん。パンイチで教壇に立たれると、村に残してきたパンイチの女騎士達を思い出しますねー。本家パンイチ達は、オサレにも目覚めたので、パンイチでうろつく事はもうありませんけど。


「えー、トゥメイトゥ先生は心身摩耗によりー、早退されましたー。なのでー、相対性理論の授業をー」

「ダジャレかい!」


 あいつトゥメイトゥかよ。このジャージの胸元にデカデカと極太マジックで書いてあるのベーコンじゃん。なんでもいいけど、やっぱり他の生徒から奪おうか。担任を次々と心身摩耗で失うのは本意じゃないし。


「ご一緒してもよろしくって?」


 退屈な授業シーンはスキップして、ランチタイムの食堂です。


「そのジャージくれたらいいよ」

「いいですわよ」


 この先輩は初対面ですかね?レッドのジャージは何年生だっけなあ?その場で脱いでくれたジャージに、私もその場で着替えました。私は怪人ミツバチ幼女なので、女の園で生着替えするくらいわけないですけど。この先輩、パンイチで堂々とテーブルにつきました。やべえ、カッコいい。体格的に、8年生だと思うんだけど、羞恥心回路がまだ発達していないのかしら?


「ちょっと待って。その豪胆な精神に惚れたので、これあげる。ちょっとくさいけど」

「あら?これはベーコン先生のジャージですね?では、今日からワタクシがベーコンです」


 え?そういう仕組みなの?じゃあ私は何ちゃん?そしてベーコンはパンツちゃん?


「そのジャージは無記名なので、ニャア様のままですよ」


 あ、多分これ、ウソだわ。近衛騎士は王女の所在を隠蔽するためにウソをつく訓練もしているのです。本当は何ちゃん?


「ボス・オーバードライブです。巫女と近衛騎士の間に生まれました」

「ククッ、生まれながらにして頂点を極めているのか。気に入った」

「あんたには用が無いのよ、黙ってなさいポンコツ」


 さすが、登場時点でネームドなモンスターは違いますね。タオルくんを軽くあしらってますよ。くくっ、トゥンクが止まらない。心停止一歩手前のアラーム、トゥンク。

 タオルくんこそ頂点を極めし王者なので、この程度の事は気にしません。ベーコン・レタス・トマトバーガーをもしゃもしゃ食べています。


「魔球の投げさせ方を教えて下さらない?」

「ほう?」


 昨日の野球の試合で、ピッチャーのBLTのどれかが、消える魔球を投げた、ようにしか見えなかったはずなのに。実際には、球を消したのは私だと気付いてしまうとは。この人何者?


「んー?教えないとは言わないんじゃけどー」

「教え方が分かんないだよね?」


 BLTバーガーを食べ尽くしたタオルくんが、説明を引き取ってくれました。私は、カツ丼をもしゃもしゃと食べます。今日のランチは、カツ丼定食かBLTバーガーセットの二択でした。BLTは担任食ってる気分になるので、私はカツ丼です。タオルくんは食ってやる気満々なのでしょうね。


 念のため説明を追加しておくと、BLTの3人は最上級生ですが、1年ドラゴン組の担任でもあります。最終学年の授業は、後進を育てる事なので。私達がやらかすとBLTの3人も卒業出来ずに近衛騎士になれません。

 彼女達が泣きついてきた事もあって、私とタオルくんは在校を決断したのです。3日で卒業を勝ち取った生徒を育てたBLTの功績は、その生徒に負けた事でマイナス評価になっています。彼女達は必死なのです。心身摩耗に陥れるのはさすがにね?


「もう。あなたには聞いていないのに。あら?あなた回路が曲がっていてよ?」

「え?」


 やっべえ、こいつマジで何者なのー?


「ところで、ぼっすんは姉妹居るの?家名持ちって事は輪廻転生の何周目かなんじゃろ?」

「いいえ。オーバードライブを名乗れるのはボスのみです」


 なんか、特定の楽器メーカー原理主義者みたいな発言になってますけど。ファズとかディストーションっていう姉妹が居るのかと思ったのに、孤高のオーバードライブでしたか。

 この学校、3姉妹だらけなんですよねー。BLT3姉妹もそうですけど、卒業式の日に伝説の樹の下でセーラー服を交換すると、次回以降の輪廻転生で姉妹として生まれてくるので。

 他にも、「アンナ・コンナ・ソンナ」とか、「アッチ・コッチ・ソッチ」とかね。コンナは自分を男の娘だと思っている、性同一性障害の女の子です。一周回って元の位置に着地してない?


 話が大幅に逸れるのはいつもの事ですのじゃがー。


 予期せぬキャラの登場に動揺しています。

 昨夜夢で見た神のお告げでは、どんぐり山に遠足に行くはずでした。この世界の神のお告げは、一度たりとも当たった事はありませんけどね。

 タオルくんの機械部分のメンテナンスは喫緊の課題でして。ミクルちゃんのAIを召喚しようかと検討していたのですが。依代をどうするかで、困っていたのです。

 なので、どんぐり山にどんぐり拾いに行くもんだとばかり思ってました。100人の刺客から作ったどんぐりが残り一個なのです。野球対決で使い過ぎました。こんな事になるなら、皇帝の依代をそのまま保存しておけばー。いや、部屋から死体発見で大事件ですね。


「よし。コイツをお持ち帰りしよう」

「のじゃー」

「あら?」


 ボッスンは優秀な近衛騎士でした。タオルくんの強さをちゃんと察していて、無抵抗で私達の寮の部屋までついて来ました。

 今日は水曜日で半ドンなので、早退ではありません。この学校は休みが多いですね。それだけ厳しいという事でしょうか?リンリン先輩は「休日の過ごし方で騎士としてのなんちゃらがかんちゃら」と言ってました。私とタオルくんは元より地上最強の一角なので、ゴロゴロ過ごしてますけど。


「ほいでー、あんたは何者なの?あ、ちょっとええ?」


 部屋までのこのこついて来たボッスンを、ぎゅっと抱き締めます。ああ、やはりね。


「カーテン全開でなさるの?さすが女神ですわね?」


 いや、そういうんじゃないから。タオルくんが「またかー」って感じで呆れてますけども!


 こいつ、カナだ!

 

 腰の変身腹巻きのマナカナ発生器が、風も無いのにギュンギュン回ります。数秒で魔力満タンです。

 惑星の反対側のマナと対なのかしら?あっちのマナと全然キャラが違います。マナが作った疑似カナともまた違いますね。ちなみに、あっちのマナとは、私の里親であるお姉様の事です。自称10万何歳だかの暁の魔女です。


 ふむー?心音は聞こえます。マナと同じで物理的にはニンゲンと同じ組成なんですかね。ミクルちゃんにマナお姉様をスキャンして貰ったところ、観測可能な数値を見る限りは「普通のニンゲン」だと診断してました。


 はてー?これをどうしようかしら?

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