11-8. 伝説の幼女様
「他人の着たくっせーセーラー服なんか着るわけないだろ」
タオルくんは、三銃士のセーラー服を校内でオークションにかけてしまいました。
100人入学してたったの3人、それも1年間限定でしか着られない近衛騎士の聖衣。それをたったの半日しか着てない三銃士は剥ぎ取られてしましまいた。残り1年間、彼女達はジャージを着て過ごすのです。
なんで彼女達は、私なんかのところに来てしまったのか。
それは、伝説の剣聖を、伝説の樹の下で土下座させてしまったからですね。
剣聖は、この王国内だけでなく、この惑星の地上全て、いえマルチバース世界の全て、前世も來世も私に絶対服従を誓いました。伝説の樹の下で誓ったので、この呪いは女神様でも解呪出来ません。
ダモン近衛騎士予備校の全生徒のみならず、全教員、全職員の頂点に君臨してしまった私。魔王だった事もあるので、この世界ではそういう運命みたいです。私、人の上に立つの嫌なんですけど。魂が派遣社員なので。人の下に居るのが楽でいいです。責任なんかとりたくねえ。
派遣をプロジェクトの矢面に立たせて使い捨てるクズ企業は沢山あるんですけどね。そんなとこ行きたくねえわー。
セーラー服は、ぐんぐんと値が上がってます。
「バーガーお姉様のタイに1000万円出しますわ!」
「レタス先輩のタイに1100万円!」
「トメィトゥ先輩のタイに1200万円!」
高騰し過ぎて、ついにバラ売りが始まってしまいました。
何しろ、新入生が落札すれば、本来1年間しか着られないセーラー服を9年間も着られるわけですから。そのままだとサイズが合いませんが、貴族の子達は達人級の裁縫技を持つ従者も一緒に入学してますからね。近衛騎士は軍人なので、自分で裁縫出来る子も多いですし。軍人は戦場で身の回りの事を全て出来ないといけませんから、家事全般得意なのです。
うーん、どう考えても純血のニートである私とタオルくんには向いてない。早く何とかしないと。
「ミンミンのブルマもあるんだがー」
「1000万円!」
「いきなり1000万円出たぞー、他ないかー」
ミンミンは小学部のお姉様四天王の一強なのです。高値で落札された後で、一旦どうでもいいものを挟んで、落札出来なかった子達がしょんぼりしてるところに、もう1枚出品しました。2枚貰ってましたからね。他人の履いたブルマ1枚に4500万円ですかー。何に使うの?いや、履くのか。こいつら全員女子小学生だもんな。
最後に、剣聖に私が授与したシマシマパンツを出品して、校内オークションは終了しました。学校には女子生徒しか居ないので、いかがわしいアレじゃないですよ?たぶん。
オークション会場は、本館3階の多目的ルームを使いました。ここは、地下コントや地下ライブも出来るそうです。軽音楽部を作って、ここでコントをやるのも楽しそうですね。
オークション後は、上はセーラー服で下がジャージという、部活帰りの地方の中学生みたいな生徒が発生しました。ジャージにタイという猛者は現れませんでしたが。ひとりだけセットで落とした王者が。文字通り王である、王女です。
「王女を倒さないと、完全に学校を制覇したとは言えないわね」
タオルくんが物騒な事を言ってますけど。そういう話だったでしょうか?やはり、ヤンキー列伝編なのでしょうか。
将を射んと欲すれば、いきなり将をヤれ。回りくどい事が嫌いなタオルくんは、いきなり王女を仕留めにかかります。
「アイツのメイド服はいくらで売れるのかしらね」
もう次のオークションを開催する気満々です。お金なら十分稼ぎましたよ?オークションの売上は、なんと総額3億円です。この国は裕福なんですね。貴族だけでなく、庶民でもお金持ちだらけです。「ジェフ・ベックのギター一本分もないじゃない」とタオルくんは不満そうでしたけど。さすがに、マジモンの神器と比べるのは不遜が過ぎます。
あれ?3億円もあったら、学校なんかバックレて3年間余裕で暮らせますよ?余裕どころか、ちょっとくらいは豪遊可能なのでは?
「それだけあれば、お家の再興も可能ですわね」
リンリン先輩が、そんな事言ってますけど。私達、没落した貴族の子女という設定でしたね。そういえば私、帝国ではドラゴン爵という爵位を持つ貴族でした。帝国はもう無いけども、授与してくれた元国王も元皇帝も存命なので、まだ有効なんでしょうか?何かやらかして取り上げられたんでしたっけ?
「ニャア様が、今の当主ですのよね?爵位を伺ってもよろしくって?」
ダモン王国の戸籍上では私が世帯主なので、スットントン家の当主は私ということになりますね。リンリン先輩も貴族なので、どっちが上なのか気になるのでしょう。だったら、早く聞けばいいものを。貴族社会ってややこしいのですね。
「ドラゴン爵ですよ」
「え!?」
なんですか?もしかしてドラゴン爵って底辺貴族なんですかね?いや、ダモン王国にはそんなもの無いのかしら?地球でも聞いた事ない爵位だし。
「し、失礼いたしましたーー!!」
あの、ここ全生徒が出入りする食堂なんで、土下座するのやめてもらえます?ランランとカンカンの3人セットで土下座しているので、剣聖の時よりも目立ってます。
「ち、ちんちんもしつれいしたのよー、ちんちんをささげるのでおゆるしをー」
あれ?ちんちん王女と、その従者まで土下座してますよ。こいら、さっきから隣のテーブルでちらちら様子を伺っていたので、何か仕掛けてくるつもりなのかなーって、身構えてたのに。いきなりの絶対服従です。
「おい、いいから頭を上げろ。メシがまずくなる」
「は、はい!」
この国の伝説では、ドラゴンは国の守り神ダモン神獣を救った神なのだとか。私の知っている神話だと、ドラゴンはダモン神獣の敵なのだけど。え?強敵こそが最大の味方ですって?ああ、なるほど。この世界のダモン王国も神話世界と同じで暴力あんぽんたんなんですね。
「いや、じゃけど。この爵位はダモン王家に授与されたものじゃないんよ」
「え?ではどちらで」
「帝国のチンチンポテト1世皇帝」
あれ、この名前は私が勝手につけたやつでしたっけ?本人が名乗ってたっけ?あっちでは、固有名詞に拘りませんからね。いずれにしても正式名称ではありませんね。
「えーっ!?」
やべえ、また何か伝説を一撃で突いちゃったらしい。そういえば、インチキ関西弁が自己紹介でチンチンポテト1世とか言ってスベってましたね。不遜な輩め!とか言われてたような。
そういえば元皇帝がまだ皇帝だった頃に、「ちょっと国連大使として王国に行ってくるからドラゴン貸してえな。めっちゃウケるはずやねん」とか言って、アマテラスを連れて出掛けて行った事があったね?
それジャガーやん!ってツッコミを待ってたはずが、王国ではドラゴンは黒ジャガーの姿をしているという伝承だったそうで。会場はパニックになり、王国中で伝説になったのだかとか。あれは作り話じゃなかったのかー。
ところで、黒ジャガーってなんなんでしょうね。模様分かんないから、ヒョウやトラと何が違うんだか。幼女が2人乗り出来るくらいデカいし。
あの時、皇帝が行った王国というのがここで、その時にチンチンポテト1世だと名乗ったんでしょうね。今の彼女は、ヤキイモちゃんですけど。
「あ、あの、ニャア様もドラゴンに乗った事がおありなんですの?」
皇帝はアマテラスに乗って登場するパフォーマンスをしたそうです。
「そりゃ、アマテラスは私の子じゃけ。乗るよそりゃ」
………………。
声にならない悲鳴とは、この事ですか。王女とか死んでない?大丈夫なの?まさか、王女様はドラゴンに命を救われました、なんて伝説とかないでしょうね?あ、違う?一撃で殺されちゃったの?あぁ、それ私も知ってるやつだわ。もうついでだ、すべて白状しておこう。最悪、ミヤコとかいう自治区に逃げよう。3億円あるんだ、どうとでもなるでしょ。
「リーザちゃんとは、一緒にご飯食べてお風呂に入ったよ」
あ、やばい。何人か心停止した。女神が知り合いなのはヤバ過ぎた。超絶技巧治癒魔法で蘇生しなきゃ。脳波まで止まってても、60秒以内なら大丈夫よ。障害発生時にスタンバイに切り替わるまでの許容時間は、だいたいどこでもそれくらい。ITの話題無理やり絡めてますけど。
「ああん!女神様!」
あ、やっちゃった。トドメに蘇生の奇跡を起こした事で、女神認定されてしまいました。
「ははっ。学校だけじゃなく、国を制覇しちゃったわね」
ほじゃーね。
神話は、日本のなろうに流してます。どうかそちらをご覧下さい。
神話はパブリックドメインなのだから、著作権的にも問題はないはず。そもそも異世界のだしね。
日本に居る私の異世界同位体の猫耳魔獣ニャア大佐にアップロードしてもらいました。
ニャア大佐も「私も似たような神話知ってるニャ」との事で2つのバージョンがアップされています。私のが「女神リーザちゃんの日記」で、ニャア大佐のは「だって女神じゃもん」です。