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10-6. 働けピクピク民

「お米が無ければ、その辺の草でも食ってりゃいいのに」

「いや、その辺の草を食べ物に変換する魔法を使えるのは私ぐらいじゃからしてー」

「は?草をそのまま食えばいいじゃないの」


 そんな事をのたまうタオルくんは何者なのかというと、ピュアニートです。お前こそ、その辺の草でも食ってろって話なんですよ。起きてても寝言を言うタオルくんにトゥンクが止まりません。

 隣の集落で米農家を襲う事件が起きました。主食である米を値上げするなどけしからん!私達を殺す気かー!と。草食ってろどころの騒ぎじゃないよ。

 小麦の大規模生産地の戦争も終わってませんし、村の周辺まで不穏な状況になってきました。


 いえ、この村も危うくなってきたのです。


「お寿司のシャリを残す輩が増えてますのよ?」


 フードコートでシェフってるポチがそんな事を言い出したのが予兆でした。いえ、予兆はもっと前からあったのです。旧ヨコハマの残党が村に何人か入り込んでいましたけど、あの時にもっと警戒すべきでした。

 この村は僻地なので、ヨコハマが滅んでも、旧帝国がクーデターで倒れ、更にその後に出来た共和国まで崩壊しても、難民が押し寄せる事はありませんでした。

 ですのじゃがー。


「村の財政がこのままだと破綻するわ」


 神社のシスター、シリアナさんが珍しく深刻になっています。働かない村民が急増しているのだとか。働かないだけならまだしも。ポチが言ってた食べ物を粗末にする輩だけじゃなく。肉を食べるのはニンゲンのエゴだなんだと騒ぐ輩に、無農薬・有機農法・無添加・非汚染だとかうるさいのまで居るそうです。主張や思想は各自の自由ですけどね、村の外でやって下さい。

 この手の連中はどうやって村までやって来たのか?旧ヨコハマとの間には3000メートル級の山脈があるし、山脈に接していない側は500キロに渡る荒野と渓谷に囲まれているのですよ?村に来る観光客は富裕層なので、自動車やクルーザーなどで来てます。神社に参拝する人達の中には500キロの荒野を徒歩で踏破する人も居ますけどね。


「あのピクピク民共は、一体どうやって村までやって来てるの?」

「地下鉄じゃないかなー?簡単に乗り越えられる改札しか無いし。護衛も置いてないからね。駅の存在さえバレちゃえば誰でも乗れるんよ」

「地下鉄を封鎖しちゃう?それともエッチな戦闘ロボを配備する?」

「いや」


 逆転の発想です。地下鉄は全区間乗り放題、駅舎も目立つよう改装しました。駅ナカだって作っちゃいました。エッチな戦闘ロボがシウマイ弁当とか売ってますよ。

 

 村の地下空間に、カジノを作りました。旅館でやるつもりだったので色々準備出来てましたからね。

 ピクピク民がホイホイ釣れます。神社の巫女ちゃんがミコミコ衣装でサイコロを振る演出も好評です。イカサマ抜きでもボロ儲けです。深夜になると、エッチな戦闘ロボがサイコロを振る危険な演出で、脱衣麻雀ゲーム的なイカサマもバンバンやっているのですが大盛況です。エッチな戦闘ロボにこんな使い道があったなんてねー。


「まさか、あのデタラメなオートプライシングが当たるなんて」


 200万円の部屋には富裕層が泊まってくれました。フリーのロイヤルスイートに躊躇無く泊まる輩は、地下カジノに吸い込まれて行きました。200万円の部屋が50円に下がった後は、その部屋の宿泊客も地下カジノ行きです。

 富裕層が離れてしまう前に、フリーや低価格設定は無くなりました。地下カジノ行きの客が減ると、またフリーや低価格になります。AIの予測が怖ろしい。


「不思議な事に村の治安が悪化してへんのやけど」

「カジノは地下空間に隔離してるからね」

「それだけやないやろ?」


 さすが元皇帝です。6歳幼女なのに鋭いですね。旧ヨコハマでやった手口です。負けた客は収監して強制労働させているのです。地下空間にスマホの組み立て工場を作ったのです。もう奴らは一生地上には出られません。負け分の労働もしないうちから、またギャンブルに手を出すので。


「こわいことしよんなあ」

「でも、お陰で地上のニンゲンが真面目に働くようになったんよ」


 ニートは地下に連れ去られるぞー!という噂も流れたので、というか流したし、実際に連れ去ったので、地上も浄化されました。残ったニートは、ピュアニートの私達すっとんとんファミリーだけです。何も足さない、何も引かないピュアなニートこそが人類が滅んでも生き残るのです。


「独裁政権再び。この姉はもうダメだわー」


 ミーナちゃんが呆れてますけどね。私も鬼じゃあないんよ。元女神で元魔王なんよ。

 地上にも健全な娯楽を、ということで全天候型闘技場で、女騎士プロレスの興行を始めました。観光客も増えました。女騎士達は、元がパンイチ教なので、肌の露出の多い衣装でもまったく気にしません。むしろパンイチでリングに上がろうとしたので、にゃんこマスクとか、にゃん神ブラックサンダーとか、そういうコスチュームを用意して着せました。


「おーっと!ここでトメイトゥ選手が、躊躇なく両目を潰しに行ったー!」

「視界を奪われてしまったベーコン選手、トメイトゥ選手の首にかけた両手にさらに力を込めます!ああ、ミシミシと脊椎の軋む音がここまで聞こえます!」

「ここで、トメイトゥ選手は、にゃんこマスクに交代!4メートルの高さからの空中殺法が自爆したー!おしりから尻尾のように腸がはみ出していますー!!」


 女騎士プロレスは残虐なショーになってしまいました。

 彼女達は元クルセイダーで融通が効かないんですよ。プロレスのお約束事が分かってません。ガチの殺し合いを始めちゃいました。私とミーナちゃんの治癒魔法があっても、死人が出かねません。

 このままでは地下闘技場に移転する事になってしまうので、エッチな戦闘ロボとの対戦に変更しました。エッチな戦闘ロボは、エッチなままだと地下闘技場行きになるので、全員マスクとかぬいぐるみを装着した悪役という設定です。正義の女騎士と、悪の軍団の対決は大いに観客を沸かせました。

 古代遺跡のものは使わないルールには反してますけど、いつかブームは終わるでしょうから。


「ゴール直前、大外から3番のトメイトゥが来た!さらに7番のベーコンが追い上げる!先にゴールしたのはどっちだー!どっちもすっとんとんなので写真判定でーす!」


 女騎士達はガチ勝負しかしない、という事が浸透したので、女騎士ダービーも開催出来ました。並のニンゲン同士を走らせても八百長感が拭えませんが、女騎士は間違いなくガチ勝負なので観客は熱狂です。競馬と同じく勝女騎士投票権も販売しています。もちろん、負けてハマり過ぎる人達は地下へ連行されます。


 こうして村の存亡の危機は回避されたのですが。本当にこれでいいんですかねー?

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