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10-5. 働かされるダンジョン

「腐れ愚民共が、その辺の草でも食ってろよ」


 タオルくんが寝言を言ってます。

 私達四姉妹は、屋根裏部屋で雑魚寝をしてます。ごろごろごろっと転がって来て、私にぎゅっと抱きついたと思ったら、そんな物騒な寝言を言うのだからトゥンクが止まりません。ゆりゆり的なトゥンクじゃなくて、動悸息切れ目眩脳波停止の方のトゥンクです。生命のピンチを告げる鐘の音です。幼女らしく「ママァ」とか、そういう寝言でも言えばいいのに。中身は、私と同じく何度も転生して、修羅の人生を歩んできた老婆なので。ひよこばばあなので。多分、フランス革命当時の夢でも見ているのでしょう。ボルシチがウマい、とか言っていたので、ロシア革命にも参加していたかも。

 私もろくな転生人生を送っていないので、人をとやかく言えませんね。


 そろそろ、旅館の開業予定日が近いので、いつも通り昼過ぎまで寝るわけにもいきませんね。

 旅館の売りになるものがまだ何も決まっていません。高級路線で行くつもりなので、武家屋敷みたいな日本家屋の建物に、京都の寺にあるみたいな庭とか、そういうのは完成しつつあるのですが。温泉は、既に温泉旅館があるので、客の奪い合いはしたくありません。


「地質調査の時に謎の地下空間が見つかったじゃろ?あれをダンジョンに仕立て上げるのはどうじゃろか?」

「ダンジョンって何ですか?」


 私とタオルくんとニートンは異世界転生者だし、ミーナちゃんは戦災孤児の幼稚園中退、ミクルちゃんは古代文明のアンドロイド、この世界に詳しいメンツが少ない。そこで、オブザーバーとして女騎士のレタスを招聘して会議中なのです。レタスが言うには、この世界にはダンジョンとか冒険者ギルドは存在しないのだとか。レタスじゃなくてトメイトゥかベーコンだったかも知れないけど。


「うちは異世界日本の知識があるから知っとるけどな」

「元国王の僕もダンジョンはゲームの世界でしか知らないカナ?」

「ワタクシが居た国にも、そのようなものはございませんでしたわー」

「古代にはあったような気もするのであるが。わらわは詳しくないのである」


 なるほど。ダンジョンといえば、異世界モノのど定番なんですけどね。この世界には、ありませんでしたか。


「何かに使えるかも知れないし。あの地下空間の調査は必要なんじゃないの?古代の遺跡だとは思うけど」

「ほじゃーのー。危険な古代ロボでも眠っておったら厄介じゃけ」


 藪をつついて蛇を出す、になる気もしますけどね。というか、そうなる予感しかないけど。


 まあ、予感通りでした。


「死んだかと思ったナリ!」


 やっと伸びたポニーテールをまた吹き飛ばされたニートンが地上に帰って来ました。

 私が行くとフラグになるからという理不尽な理由で、ニートン、ミーナちゃん、ミクルちゃんで地下空間の調査に行って貰ったのですが。厄介な敵に遭遇しちゃいました。ミーナちゃんのマジックバリアを貫通するビームを撃って来るロボが居ました。


「あれは、古代魔法のコボルビームでやんすね」

「コボルビーム?」

「かつては雑魚魔法だったのでやんすが、使い手が絶えてしまい、現代の魔法では防御も反射も出来ないでごんす」


 ミクルちゃんの解説によると、そういう代物だそうで。

 なんか銀行や官公庁界隈で聞いた事ある話だなあ。未だに現行のシステムなのに、技術者が老齢化で引退してしまい、維持管理が大変になっているというプログラム言語COBOL。日本のアニメで逆シチュエーションのエピソード観ましたけど。あれは主人公側の無双でしたけど、これは敵が無双状態。


「なんや、それやったらニャアちゃんが行ったらええがな」

「へ?なんで?」

「ミーナちゃんの魔法はこの世界の魔導書で覚えたもんやろ?ニャアちゃんのは異世界で覚えて来た魔法や。体系が全く異なるからいけるんちゃうか?」

「あれ?ミーナはニャアの弟子じゃ無かったの?」

「お姉ちゃんの指導は、くるくるドーンだよ!とか、おしりのあなに力を入れるのじゃー、とか意味不明だったから」

「あんたホントにエンジニアなの?ロジカルの欠片もないじゃないの」

「じゃって、理屈で魔法を習得していないし。呪文を覚えればいけるもんでもないし」


 呪文なんか飾りですからね。いつも適当に唱えてますけど。無詠唱でもいいんですよ、私の魔法は。でも、チュウニ的にそんなの許されないでしょ?コマンドとかスクリプトとか言ってるのもチュウニマインドの表現でしかありません。

 だから他人に教えようがないのです。自分だって忘れたらもうアウト。仕様書は作れても、手順書に残せないので。


「あんたの魔法が有効な可能性に賭けましょうか。サイボーグと魔女で組めば、きっと対処出来るでしょ」


 第2陣は、私とサイボーグ戦士タオルくんで行きます。


「やったか!?」


 前にも同じ事がありましたが、やったか?と言えば、やってるはずが無いんですよ。

 コボルビームは私のQTフィールドで無効化出来ました。でも、こっちの攻撃も相手のバリアに阻まれてしまうのです。お互いに打つ手が無いどころか、こっちの方が押され始めてます。


「あのビーム強いよ!どういうエネルギー源なの!?」


 タオルくんのおしりランチャーも魔法の力と科学のハイブリッド武装なので、無限に近い攻撃が可能ですけど。圧縮魔法でミサイルを装填しているだけなので、限界があります。弾切れです。

 私の魔法攻撃よりは、科学的な攻撃の方が、ちょっとはダメージが入ってたっぽいんですけどねー。相手のビームはばっすんばっすん連射して来て、尽きそうにありません。いつか電池切れるんじゃないかと期待してたんですけど。

 だいたい、ビームって何だって話ですよ。科学的には可能な理論はあるけど、拡散メガ粒子砲とか、実装はほぼほぼファンタジーなんじゃ無かったの?古代文明やべえ。ああ、そうか魔法と科学のハイブリッドだから、ファンタジーなのかー!


「撤収ー、したいんじゃけど迷ったね?」

「このコンビは道に迷うという欠点があったの忘れてたー!」


 地上と違ってお日様の位置とか、アルプスの見える方向とかの目印は何も無い、真っ暗な地下ですからね。そりゃ迷うわ。地上でも迷うのに。八重洲地下街並にダンジョンみたいな複雑な構造しているし。


「あ、おめえらこんなとこで何してんだ?危ないのがうろついてるから、こっち来い」

「ありゃ?じいちゃん」


 地獄に魔王とはこの事です。ここはもしかして喫茶店の地下辺りですかね?じいちゃんが居て手招きしているので、そっちに向かいます。


「ここに入ればまず大丈夫だぞ」

「え?寒うっ!ここ冷蔵庫?いや冷蔵庫かな?」

「ここの地下にはコレがあったから、この上に喫茶店を建てたんだ。定食屋もここに移転するつもりだったんだけどな。あっちはおめえが何とかしただろ?」


 なんと!?そういえば山で作った氷だけでやりくりしてるにしては、アイスとかも出てくるし、どうなってんのかと思ってたけども。こんなもんが地下にあったのかー!


「古代の人類が作ったもんだなこりゃ。未だに動いている原理が俺には分からねえけど。食材がよく冷える」

「あ、もしかして、じいちゃんも古代人類を生で見てたん?」

「ヴァンパイヤと戦ったのは、6万年前が1度目だ。俺は輪廻転生前の前世だけどな」


 古代文明が滅んだのは1万2千年前と言われています。6万年前なら、じいちゃんも古代文明を知る生き字引ですよ!おおう!もしかして、じいちゃんならあの古代ロボの倒し方を知っている?


「俺が全力でぶん殴ってもびくともしねえ、倒せる気はしないなあ」

「まじかー」


 この真上が喫茶店と言う事なので、そこから地上に戻りました。


「あれを倒すなら、ひとつだけ手があるかも」

「というと、あれでござるか?」

「古代のビームには、古代のビームをぶつけるってわけね?」

「なんか知らねえけど、アイツを倒すんなら手伝うぜ。あれが邪魔で地下街の調査が進まねえんだ。他にもあのヒンヤリした倉庫があるかも知れねえのに」


 じいちゃんも協力してくれる事になりました。


 まず、地上に落とし穴を作ります。浮遊能力があったらアウトなんですけど。上手く落とせたら、そこに対地攻撃人工衛星のビームを叩き込みます。じいちゃんが囮になって、敵を地上まで連れて来てくれる手筈です。

 

「おーい!うまいこと連れて来たぞー!」


 さすが魔王です。じいちゃんが古代ロボを地下街から連れて来てくれました。


「よし!対地攻撃人工衛星ロック解除!!」

「ロック解除!」

「ロック解除!」

「解除!」


 対地攻撃人工衛星では名称として長過ぎるので、なんか略称が欲しいですねー。四姉妹全員が20秒以内にロック解除して60秒以内に発射しないと使えないのです。何しろ、この惑星をこんがり丸焼きに出来る兵器なので、うっかり発射しちゃわないようにロックが強固なのです。コントローラーはスマホ型だし、ポケットの中でうっかり操作する事もあり得ますからね。でも名称が長くて、かんだらそれだけでもう時間が足りない。


 ずぼっ!!

 

 狙い通りに、古代ロボは落とし穴に落ちてくれました。


「照準はあっしにお任せー!トリガーはニャアおやびんがポチっとしてくだせー!」

「発射ー!!ポチっとな」


 ミクルちゃんに補正をして貰って、落とし穴に嵌まったゾルトラーク、じゃないコボルをじゅぼー!!

 コボルは跡形も残さずに蒸発しました。


「やったあ!」

「他にもあんなのが地下街に居なきゃいいけどなあ」


 じいちゃん、それはフラグだよ、と思ったのですのじゃがー。


 他には何もありませんでした。


「コボル砲の予備でもあったら、私の右腕に仕込んだのにー」


 タオルくんが残念がってます。

 家電ロボ軍団2000体総出で探索したのですが、ガードロボはあれが最後の一体、冷凍庫もじいちゃんが使っていたあれだけ。なお、家電ロボ軍団とは、マチダの家電量販店で不良在庫となっていた古代ロボです。見た目がエッチな人形で、全裸です。それが2000体、地下で蠢く様は、見開きイラスト確定ですが。R指定になるのでしょうか。

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