10-3. 働けない兄さん
行方不明の兄さんが帰って来ました。
兄さんは元魔王で、アンドロイドでした。
ニセ魔王と間違って私が破壊しちゃったので、今はAIだけになっています。ねこバスというEVに搭載して、何か買い付けて来いと言って送り出したら、遭難してました。
お姉様というマナを分離したのがカナです。
一番搾りカナがサクラおばさん。残りの搾りカスが兄です。カスと言っても、2番絞りも含んでいるのでゴミというわけではありませんが、一番搾りカナに比べれば雑味ですね。マナとカナは魔力の源と言われていますが、その存在は謎です。本人達にもよく分かっていません。
その雑味100パーセントの兄が帰って来たのは、ゲーム世界の中です。
どうやらねこバスは大破消失させたようですね。以前住んでいたゲーム世界「グランドタンクであっはーん!」略称GTAの中に、チュウニ魔王キャラとして帰って来ました。
「アッハッハじゃなかった?」
「このゲーム世界は一度滅んだので、新作に生まれ変わってるんよ」
ミクルちゃんの兄であるアールくんの汚染された魂を浄化する作戦で、ゲームのオープンワールドを滅ぼしたのでした。放置してたら、2周目の人類が勝手に生まれて、新しい世界を作ってました。環境シミュレーターか、都市育成ゲームみたいですね?以前は、川崎市くらいの広さのオープンワールドだったのが、地球規模の惑星オープンワールドになってます。遊びきれる気がしない。
なお、アールくんは日本から連れて来た自動車型魔獣のデミヲの補助AIとして復活しています。すっかり浄化されてタダのマヌケになっていますよ。
「はーはっはっはっは!我は魔王ナリ!倒してみるが良いぞ!愚かなニンゲンどもめ!」
「あ、はい。そっすか」
「ここに自販機置いて100円玉で買える温もりを売りたいんじゃけど」
「材料ならそこに居るじゃないの」
「こいつ、ここでもアンドロイドなんじゃっけ?」
「拙者の刀の錆にしてやるナリー」
あくまでのゲームの中の話です。現実に兄を自販機にしたりはしません。似たような事はしたかな?
「この自販機、おしるこしか売ってないナリ」
「なんだこりゃ。おでん缶も売れよ」
「せめてコンポタージュ缶が欲しいわね」
「うーん、自販機大喜利は難しいな」
「大喜利かよ」
マヌケな兄は自販機にしてもマヌケでした。
「この兄をどうしてくれよう」
「また殺せば古代ロボか何かに憑依するんじゃないの?」
「それが、このNPCはリボーンする設定なんよ。殺しても病院で復活しよる」
「放っておけば?」
「ほじゃねー」
兄の事は放置しておきましょう。どうせタワシを召喚出来る能力しかない、世界征服を夢見るだけの小物です。本人はゲーム世界の中で楽しそうなので、いいでしょう。バイクに変形するロボに魔改造しておきました。
新しい世界といえば。
この村はカワサキ帝国という国の植民地だったのですが。今は独立国家です。カワサキ帝国がクーデターにより無くなってしまったので。クーデターによって出来た国も統治に失敗して崩壊しました。なお、カワサキ帝国という名前は私が勝手につけたものです。実際の名前は不詳。この世界の人達は固有名詞に拘らないので、単に帝国とか言ってました。
統治者が居なくなっても、民は残ります。国内の各集落は自治区として運営を始め、かつて帝国の領土であった大半が、連邦となりました。シンカワサキ連邦の誕生です。この名前も私が勝手に付けました。
かつて聖国と呼ばれた地域は、聖国に戻り、サガミハラやアハトプリンも独立国家に戻ったそうです。
そして、かつてヨコハマと呼ばれた呪われた土地にも、新しい国家が誕生しました。
この世界には存在しなかった資本主義と民主主義をヨコハマに持ち込んだ結果、腐敗した国家になっていたのですが、宇宙人にあっさり滅ぼされました。資本主義と民主主義がイデオロギーとして腐っているわけではなく、富める者、統治する者の義務という倫理や宗教的なものが抜けて居たのです。腐ったミカンを混ぜたせいで、箱ごと腐ってしまったのです。
その腐ったミカンの残党が、ヨコハマの地に集結して新しい国家を作ったのです。もちろん、日本の横浜とは一切関係がありません。風評被害甚だしいので、この新国家はシンヨコハマではなく、ミカン帝国とでも呼んでおきましょう。いや、これだと愛媛辺りが風評被害に?ガラクータ帝国にしましょうか。
この話はマチダから来た観光客に聞きました。国境に建ってた家電量販店の店長だったおっさんです。懐かしいですね。
「もうあの辺りはダメです。腐り切った金儲け主義が未だに蔓延してますわ」
「あんたの店も、ポイントとかいって、値引きのフリして客の現金を没収してたじゃないの」
「それは別にいいんじゃないの?客の方もそれで喜んでたし」
「この村にも、またちょっかい出して来るかも知れませんよ。以前みたいな技術力や戦力は失われてますけど」
「ふむー。小賢しい手で嫌がらせをしてくるのでござろうかー?」
「逆にうざいわね」
そのうざいのが早速やって来たみたいです。それも、私を狙って。
「えーなになに?ニャアは魔女である。ヨコハマの空を真っ赤に染めたのはニャアである。ニャアの放った火でヨコハマはバーンと滅んだ。魔女ニャアを讃えよ!魔女ニャアを崇めよ!」
なんじゃこりゃ?