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魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
9. 基本設計書別紙 - 異世界SEお姉さん -
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9-12. 定年退職お姉さん

「個人事業主なら、家賃を経費に出来るのよね?」

「うーん。でも国民年金と国民健康保険が高いよ」

「どっちが良いかというと、派遣の方がいいのかもねぇ」

「いや?国民年金の納付って何歳までだ?」


 日本に居着いて遊んでいる内に、2025年3月になってました。

 キナコはわらわキャラを修正出来ず。再び、お姉さんが働きました。

 オモッチお姉さんは戸籍上は60歳です。もう老後ですわ。

 この先の未来は私にとっては未確定ですし、この辺が引き上げ時ですかねー?


「あれ?こいつ年齢サバ読んでない?2011年に43歳って言ってたわよ?」

「え?そうだった?40過ぎたら自分の年齢が分かんなくならない?」

「なる。50過ぎたらもっと分からん」

「そういうもんなの?私は、今までの前世全て40歳前で死んでたから、その感覚は理解出来ない」


 国民健康保険の支払いは75歳になるまで続きますが、60歳になれば年金は払う側ではなく貰う側になれます。繰り上げ受給、という扱いですけど。


「繰り上げ受給がいつまで出来るかも分かんないし、年金生活に入ろうか」

「では、この拠点はわらわに任せるがよい。みなは村に帰るが良いぞ」

「ここの維持管理の方法は、整理が必要ね」

「部屋ももっと安いところがいいんじゃないの?」

「常駐する必要も無いと思うし」

「そうなると、派遣を続けている内に引っ越さないとねー」


 なかなか悩ましいところです。年金生活者になってしまうと、賃貸契約が難しいといいます。かと言って、一戸建てを買えるだけのお金も無いですしー。1千万円を運用しておけば中古マンションくらいは買えたかも知れませんが。むしろ使い潰してます。資産運用の才能は誰にもありませんでした。なんでだー?日経平均連動型の投資信託を買っておくだけでも良かったはずなのに。


「年金はいくら貰えるの?」

「月12万円」

「ここの家賃が10万5千円よね?」

「うわー、まだ働かないといけないのかー!」


 無計画に生きてきたツケです。お姉さんはマヌケですけど、アホではないので、自業自得なのを良く分かっています。飲んだくれようとしてますけど。


「よし、死のう」

「ちょっと早まらないでよ」

「いや、戸籍上死んだ事にして、異世界に行くんでしょ?」

「そういうこと。行方不明でもいいけど」


 影武者キナコを、ハルコ60歳としてニャア大佐の家に置いてもらう事にしました。

 日本の戸籍は貴重ですからね。行方不明者にしたり死んだ事にするのは勿体ない。


「うちも家事やってもらえて助かるニャア」

「わらわも川崎にお友達が出来たし、残れて嬉しいのである」

「ほいじゃあ、時々様子を見に来るよ。達者で暮らせー」

「お嬢様達も達者で暮らすが良い」


 キナコは日本人ハルコに帰化したようなものですね。

 近所に友人まで作って、コミュニケーションモンスターなAIですよ。この先、40年くらいは日本で暮らせますかね。


「お姉さんは、ラフロイグとジャックダニエルとブラックニッカを大量に持って帰りたい」

「ダメですー。そんなお金はありません」

「向こうの世界で、作ったら?麦と泥炭なら確かあるでしょ」

「ふむー?ITを駆使してお酒作りー?」


 実際、お酒づくりはハイテクと相性が良いのだ。醸造は化学で科学なのだ、とタオルくんが以前言っていた。やってみる価値はあるんじゃないの?


 こうして、キナコはハルコとして日本で末永く楽しく愉快に暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。


 とは、なりませんでした。


 ゼウスの妨害によって、2025年4月以降に進まなくなった、などでもなく。


 ハルコは亡くなってしまったのです。

 友人達とお茶会をしている最中に、AIがスポッと抜けちゃう事故が起きてしまいました。バグなのか、うっかりなのか不明ですけど。AIの抜けたアンドロイドの有機素体は、死体にしか見えませんからね。友人達はAEDで蘇生を試みましたが、AIが戻れなかったのでダメでした。病死扱いです。

 葬儀、埋葬で遺産はほぼ無くなりました。

 享年60歳。働きづめでやっと定年を迎えたと思ったら、何も残さずにお姉さんの日本での生涯は閉じました。おしりのあなの病が再発する程に、必死に働いたのに。


「私の骨なんて、海にばら撒いて終わりでいいんだけどなー」

「茶番だと分かっていても、母親が死んだ感じがして、つらいものがあったわね」


 私達は、母の死をどう受け入れていいのか分かりませんでした。実際にはオモッチお姉さんは生きてますけどね。それも27歳に若返って、とても元気に。


「お前らが、私にあれこれ頼んでくるのは既定の事実にゃ」

「時間を無視すれば、ニャア大佐は日本に常駐しているのと一緒だもんね」

「そういうことにゃ。これもまたシナリオ通りということにゃ。まあ、戸籍上の寿命くらいまでは川崎に居るつもりだけどにゃ」

「既にお餅はあんこもちになっているのですにゃ」

「煮込んだ小豆はあんこにしかなりませんにゃ」


 ニャア大佐が川崎に居てくれるのなら、頼み事も出来ますし、時々遊びに来たりも出来ますね。私達と川崎の繋がりは、まだ切れていません。


 今回の日本生活で得たものは何かというと。


「本物のガールズにゃんこクライをリアタイ視聴できたよ」

「それくらい?」


 私達の人生は、こんな感じです。永遠の命と、インチキな魔法と科学を持っているのにね。


「人生設計をしっかりしておかないと、働き詰めて疲れ果てた挙げ句に老後も無いんだよってのが、教訓でしょ?」

「タオル殿の言う通りでござろう」


 なにそのマジ教訓。つらいわー。

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