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魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
9. 基本設計書別紙 - 異世界SEお姉さん -
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9-6. そうだ、異世界へ行こう、じゃねーんですわ

「異世界転移能力はビジネスになります」


 詐欺師としか言いようのない男が探偵事務所にやって来ました。


「日本には、世の中に疲れ切っている人が沢山居ます。あの世界に疲れた人達は、異世界転生を夢見てます。その夢を提供出来れば、ビッグビジネスになるのです。マーケティングとマネタイズはこちらでやるので、あなたは異世界転移魔法を提供するだけでいいですよ」


 このクズは、ヨコハマ経由で転生してきた日本人です。だけでいいですよ、じゃねーんですわ。

 この村にやって来る転生者は、だいたい若い女の子で、私とニートンのような社会不適合者でも無い限りは、神社で巫女になれます。この村の神社には、お伊勢参りの如く大量の参拝者が訪れるようになったので人手不足です。こいつは珍しく男だったので、巫女にはなれず、何やら怪しい商売を始めたいようですね。


「どうする?このクズ殺す?」

「いや、まだ殺すような罪は犯してないし」


 関わるのは時間と手間の無駄なので追い払いました。この村は、マヌケやポンコツには寛容ですけど、クズには厳しいので。その内、誰かが始末する事でしょう。


「確かに、異世界転生したい輩は、日本にはいくらでも居るでござろうが」

「日本円で報酬貰ってもね?意味が無いじゃないの」

「そもそも、お金を得る事に、あまり意味がないのにね」


 この村には、お金を得る目的で労働する人は居ません。おいしい野菜を食べたい、おいしい焼酎を飲みたい、そういう動機でしか働きません。何故ならば、働かなくても暮らしていけるので。でも、働かなくていいよ、と言われても、ヒトという生き物は何かをせずには要られないものなのです。純血のニートである私達ですら、こうやって探偵事務所を構えているくらいですよ。でも、わざわざ要らん事をするのはクズです。

 お酒などの贅沢品を得るにはお金が必要ですけど、大金を得たところで買えるものも無いですからね。土地もタダだし。家は、お金が余っている人が建築費用を負担する決まりです。車とかも無いしね。プールなんかなくても、その辺の川で泳げますし。うーん、私の中のお金持ちのイメージが貧弱です。


「マヌケでハードボイルドな探偵事務所に、クズが来てしまうとは。幸先が良くないね」

「相反する二つの概念を抱えた探偵?哲学的ねー。私に出来るのかな?」

「へゔぃーぢゅーちーが言えないから、ついに諦めたわね」

「誰も言えてないし」


 私が教室で机をぶん投げてしまったので、オモッチお姉さんは先生を続けるわけにいかなくなり、今日からオモッチ探偵事務所の隊長に就任しました。所長というより隊長の方が馴染みがあるので、役職は隊長です。


「日本では出来なかったからね。私も探偵ごっこに付き合うよー」

「ごっこじゃないし。昼間っからバーボン飲んでるし」

「ある意味ハードボイルドなのでは?」


 ハードボイルドとは生き様なのです。荒くれた行為や、カッコつけたセリフは表層的な事なのです。昼間っから飲んだくれているのはニートです。必要な事だけを見極めて実行する。それがハードボイルドです。


「まあいいじゃん。私にはコレが必要なんだよ。次の依頼人の方どぞー」


 依頼人第一号は、パンツの女騎士です。こいつは、ベーコンだったかな?レタスかトゥメイトォだったかも。


「闘技場を春菊畑にしたじゃないですかー。あそこは戦闘訓練に使ってたんですけど。何か代わりに建てられませんか?出来れば全天候型の闘技場がいいです」

「そういうのは村長に頼めば?」

「村長に頼んだら、ニャアちゃんに頼めって」

「あー、そういう。タライ回しは良くないね。ほいじゃー建てようか、ニャアドームを」


 この村では出来る人が出来る事をやる決まりなので、インフラの建築は召喚魔法使いの私の担当でした。国家予算は使えません。


「あとですねー。春菊多過ぎなんで、ブロッコリーとかセロリも欲しいんですけど」

「ほいじゃあ、そっちも何とかしようかいねー」


 魔法を使った作業になるので、ミーナちゃんとオモッチ隊長と一緒に行きます。オモッチ隊長も魔法使えないんですけどね。異世界転移魔法も使えませんでした。前回の転移は結果として成功しましたけど、ちょっと無謀でしたね。ただ、私含む2名と、車一台の転移が可能だという実績は残せました。

 魔法を使うところを見せておけば、いつか隊長も魔女として覚醒するかも知れませんし、興味があるというので。


「この闘技場は東京ドーム何個分なの?」

「いっこ分のつもりなんだけど。野球場の広さをまったく知らんので、違うと思うよ」

「なるほど。私も東京ドームの広さ知らんわ」


 今後は、ニャアドーム何個分かが、この世界の単位になりますよ。

 召喚魔法には代償が必要なので、畑となった闘技場の建物部分を解体して使いましょう。その前に、作物の召喚をしておきましょう。こっちは春菊を代償にします。ブロッコリー、セロリ、レタス、キャベツ、白菜に変えました。


「キノコとかも欲しいけど」

「それは山に自生しちょるので」

「いいね?後で採りに行かない」

「ほいじゃー、ニャアドームを作ったらみんなで行こうか」


 旧闘技場とどんぐりを代償にして全天候型ドームを召喚!

 屋根は生体パーツなので、天候に応じて勝手に開閉してくれます。

 なお、ニャアドームの広さは、ニャアドームいっこ分です。そりゃそうだ。


「この屋根生きてるの?」

「植物みたいな感じだから。喋ったり反乱を起こしたりはしないと思う」

「生きてるって何だろうねえ?」


 そんな難しい事は知らん。所詮、ニンゲンは主観的な価値観だけで情緒を形成しているのです。例えば、ヴィーガンが極端かというと、案外そうでも無いかもね。みんな好き勝手な価値観で生きてるんじゃないですかね?機械であるはずのデミヲを生物だと思ってる私達も、他から見ればどうかしてるでしょうし。


「ほいじゃあ、他のメンツも誘って山に行こうかー?」

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