9-4. どんぐりポイント
「お前はパンツ丸出しで何やってんだ?」
「マンガ読んじょる」
「答えは聞いてない」
「え!?」
「一日中遊んでんじゃないと小言を言ってるんだよ」
「そんな、役割分担も決めてなかったのに、アレ出来た?って言う上司みたいな」
「あ?これは家庭教師としての教育であって、パワハラではありませーん」
「むぅ、このロッテンマイヤーめ」
パンツ丸出しなのはいいけど勉強しろ、と。オモッチ先生がうるさいので、公園に来ました。そうしないと家庭教師のオモッチ先生がニートになってしまうので。
「幼女らしく、どんぐり拾いか、四つ葉のカタバミ集めでもしなさい」
「は?」
幼女なのは外側だけであって、中身は老婆なんですけどー。四つ葉のカタバミは季節外れなので、どんぐりを集めます。しかし、これは勉強なの?野外授業ですか、そうですか。
「どんぐりの小賢しい蘊蓄は無いでござるか?」
「こざかしい?」
「ニャア姉ちゃんのは、こムカつくだよ」
「にゃにぉ?どんぐりを集めると、豪華景品と交換してもらえますんど?」
「ほー、そんなポイントシステムがあるナリ?」
「ケータイ料金がタダになったりするのかしら?」
「どんぐりポイントです」
そんなものはありませんが、無ければ作ればいいのです。それがモノづくり日本の魂。
11年も日本に転生していた経験は伊達じゃない。
「別に、無理して日本に転生してた意味を見出さなくても」
「どんぐりを代償にして、何かを召喚するつもりね?何出す?」
「有機物を代償にすれば、生き物が出せるけどー」
「やべえものが出たらコワイわね。食べ物にしておこうか」
「食べ物なあ。メニューは先生に決めてもらうか」
「先生は、生徒の自主性を重んじているので任せます。げふー」
「先生は、ビール飲んでるよ。おつまみになるもの出してあげよう」
「ミーナちゃんはやさしいでござるなあ」
「こいつをおつまみにしてやれば?」
ニートンは腐ったミカン世代ですからね。学校の教師は粛清したい相手です。タオルくんは、もう少し上の世代なので、実際に粛清しちゃった世代です。
ビール飲むのは構いませんが、代金支払えるのかな?この村には後払いの電子決済が普及しているのです。顔認証でぴぴっと払えます。ツケ払いとも言います。顔認証出来たって事は、先生も村人として認識されたということですね。なお、お姉さん先生が支払えない場合は、保証人の私に請求が来ます。
「ほいじゃあ、柿ピーを出そうか。この世界には無いし、私も食べたい」
ざらああああ
「うお!?」
「どんぐり一個で山程柿ピーが!?」
「うひー、うまいよーこれー」
まさかの超高効率召喚素材の発見です。どんぐり一個だけで、バケツいっぱいの柿ピーが出て来ました。しかも、うまい!ぶちうまい!なまらうまい!まさに、どんぐりポイントです。
どんぐりにこんなに魔法的な価値があったとは。子供が夢中になって集めるはずですねー。とゆうことは?四つ葉のカタバミや、松ぼっくりも?
「どんぐりを集めるのじゃー!」
「のじゃー!」
「どんぐりって大量に拾っていいものナリ?環境破壊しないでござる?」
「子供が拾う程度ならええんちゃう?知らんけど」
公園だけじゃなく、村の中も巡って、10キロの米袋いっぱいのどんぐりを集めました。ふぅ、意外と楽しかったー。私は、フィジカルだけでなく、メンタルも6歳幼女になっているみたいです。
「これ、柿ピーだと一生分は軽くありそうね?何に使うの?」
「いい使い道を思いついてるよ。ボンジリが巨大化したい時に使えばいい」
「なるほど。巨大化すると邪魔だから、オウムのままでいいけど」
「クエー」
「ほいじゃー、アマテラス巨大化してみる?」
「にゃあ」
ふむー。こっちに帰って来てジャガー型に戻ったアマテラスは、今のサイズで良いそうです。確かに、巨大化されると、一緒に昼寝した時に、ぷちゅっと潰されるかも。それは困る。
「使い道無いわね?グルメ目的に使うとしても、あんた美味しいもの知らないし」
「おー?そんな事ないですけど?カールも出せますけど?」
「カールかー。まさか西日本限定になっているとは思わなかったアレかー」
「味覚えてるナリ?」
「忘れたかも」
召喚魔法は、しっかりとイメージ出来るものしか召喚出来ないのです。カールを出すつもりが、バックルが出てくるかも。あるいはローソンのジェネリックカール。
当然食べた事ないものを出すと、ロクでもないものが出てきます。
「ちょっと怖ろしい事に思いあたったのじゃがー」
「それって、女神のお仕事に関係ある?」
「あー、女神が人類を滅ぼした後に、どうやって2周目の人類を作ったのか?でござるな」
「うちのご先祖はん、どんぐりから産まれたんやろか?」
春菊になったヨコハマ民といい、この世界の命は不思議に満ちていますね。今日の野外授業は生命の神秘を学べましたね。
「この件は、深く追求するのはやめておこう」
とりあえず、お姉さんの飲んだビール代のかわりに、オージービーフのブロック肉をドスンと召喚して、ライブハウス定食屋に現物で納品しておきました。この世界では、飼育されるのはお姉さんの方です。