表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
8.基本設計書 −異世界幼女とSEお姉さん−
110/295

8-4. 異世界幼女さん

「オウ、オマエドコチュウダ?」

「わしはアルチュウじゃあ」

「ナンヤテー!?ワシハセイビョウジャア!」


 私が脚本を書いて、タオルくんとオウムのボンジリが演じた「動画で分かる3ウェイハンドシェイク」は、そこそこバズりました。


「いや、ナニコレ。まったく意味が分からない。どこがハンドシェイクなの?お姉ちゃんはトークンリングなの?」

「子供と動物出しとけばウケるって本当でござるなー」


 他にも、殺害予告から始まって死亡確認で終わるバージョンもあったのですが、バンされました。


 ハイ!今日はね!交通法規を守らない連中を、片っ端から魔法で吹き飛ばして行きますよー!

 ポリスメンに捕まったらジ・エンドです!グッドボタンチャンスですよー!チャンネル登録おにゃしゃす!


「この姉にどう突っ込めばいいのか分からない」


 ミーナちゃんに突っ込まれるまでもなく、犯罪行為なのでバンされました。

 ちゃんと死なない程度にやって、治癒魔法で治したよ?ダメですね。ハイ。


 他にも近所の騒音問題解決編とかありましたけどね。アップロードする前に、アカウントを凍結されました。なんだかデジャブ?


 また失敗です。

 この時代の動画投稿は、まだまだブルーオーシャンってヤツなのにー。私達には、致命的におもしろ動画のセンスが足りません。このままだと、いつか収監されてしまいます。戸籍が無いので、どこに強制送還されちゃうのでしょうか?


 生きるとは何か?人生とはすべて一瞬の夢のようなものなのでは?つまり、生涯ヒキニートでよい?

 むう。哲学でお腹はいっぱいになりませんね。


「お姉さんは、今日中に納品するドキュメントをまとめてねー」

「う。うっひぃ」

「姉ちゃんは、今日中に仮想サーバを10個建ててね」

「のじゃー!」

「タオルくんは、ファイル整理が終わったら、お昼ごはん作って」

「はいよー」

「ニートンは、洗車しといて」

「今日の天気予報は雨でござるぞ?」

「だからよ」

「え!?」


 最後のはDVですかね?もっとも、うちには洗車用具が無いので、ニートンもすぐに気付いて戻って来ると思いますけど。洗車は洗車機で済ませるので。労働単価より安く済むことは、お金で済ませるのがお姉さんの流儀です。無料クーポンに惑わされたりもしません。2時間も並んでる暇があったら、Pythonの書き方でも勉強した方が、ずっとお金になります。

 車はあった方が良いので残しました。カーシェアの方が安く済むけどね。カーシェアだとお猫様は乗れないので。


 私達は、ミーナちゃんをマネージャーにして、まじめに働くようになりました。

 お姉さんは個人事業主なので、働き放題です。自宅兼オフィスで出来る仕事なので、幼女にも代行できます。4人分くらいの仕事をとってきて、私達全員でこなしています。

 仕事の幅と質を向上させたお姉さんは、そこそこに売れっ子のSEになりました。これくらいが現実世界の限界ですね。私達は、ゲイツやジョブズとは住む世界が違うのです。むしろ、成功している方だと思います。この時代に在宅でやってるだけでもうらやましい。


「ははっ。仮想サーバなんて何台あろうが、一瞬でデプロイ出来るのじゃ。仕事してるふりしてにちゃん見よう」

「へえ?そうなんだ。じゃあクラウドの仕事は先が見てるわね?空いてる時間で新しいスキル習得してよ」

「のじゃ!?」


 ぐうう。せめて動画投稿で四苦八苦するストーリーになりませんかね?今の生活も、多摩川の河原に段ボールのお家建ててるより遥かにいいですけど。50年以上前の前世よりもキツイですね。上司がアホじゃないからましかな?オニだけど。妹なのにオニーちゃん。


「ガールズバンドの時代が来るのは分かっているナリ。拙者達で、先取り出来ぬでござろうか?」

「はいはい。夢は寝てても見ないでね。手を動かしてくださーい」


 そう言っているミーナちゃんも、クラウドサーバの構築をやってます。

 2020年になれば、リモートワークが主体になります。派遣もお家で仕事する時代がくれば、もっと仕事はとれるでしょう。家で働いているのが幼女でもバレなければどうとでもなるのです。一切、出社しませんからね。圧迫面接もWeb会議です。幼女は派遣スタッフ登録は出来ないので、派遣のお仕事は無理ですけど。戸籍も無いし。

 

「フルリモートはせいぜい2024年くらいまでだけどねえ」

「どうかしてるわね?まさか、みんな出社してWeb会議するの?」

「その、まさかなんよ」

「フルリモートの方が圧倒的に効率いいじゃないの」


 そうは思わない人も沢山居るということです。世の中全員が、私達みたいなコミュ障ではないしね。

 でも、選べるようにしても良くない?


「愚痴は40秒までなら聞いてあげるから、手を動かして」

「あ、はい」


 実際のところ。鬼軍曹ミーナが居なければ、私達は終わってました。

 しかし、異世界ファンタジーのはずが、ただの現実になってしまいました。

 変わらず暮らしているのは、ボンジリとアマテラスだけです。貴重な癒やしです。


 動画投稿サイトのアカウントが凍結解除されたので、動画に再挑戦です。

 企画を考え込むよりは、ノリと勢いです。多分そうです。私の記憶にある未来の人気動画は、アヤシイ商品買ってみたとか、フグを捌いてみた、とかそんなんです。

 他人よりはちょっとでも秀でたスキルさえあればなお良し。とにかく、ノリと勢いです。炎上というジャンルもありますけどね、狙ってやるものではありません。


 はい!とゆーことでね。今日は、川崎の反社の事務所前から始まりますよー。

 怪人ミツバチ幼女に、反社を落とせるのか!?デッド・オア・アライブ!いいねボタンとチャンネル登録おにゃしゃす!


「いやいやいや、炎上を狙いに行ってるんじゃん」


 ミーナちゃんはそう言いながらもカメラを構えて同行してくれました。カメ型大怪獣のコスチュームを着ています。著作権的にギリギリを攻めたデザインですよ。


「たーのもー!」


 ずんずんと敷地内に入っていきます。玄関には鉄格子とか、金庫みたいなロックがかかってましたので、車のガレージに突入しましょう。


「おっちゃーん?何しよん?」

「おめえこそ何してんだ?それ、ゆるキャラか?川崎とミツバチって何か関係あったか?」

「いやしかし、タマナシは船橋市と被るし」


 ぼぎゅー


 魔力袋が盛大に鳴りました。久々にQTフィールド張ったりしたので、マナカナの消費が激しいのでしょうか?


「なんだオメエ腹減ってんのか?ちょっと上がってけ」

「あざます!」


 おおう。ジャージ着て車磨いてるから下っ端かと思ったら、トップでしたよ。


「うめえか?」

「いまいち」

「お姉ちゃん!?」


 この動画は反社会的組織の協力があったので、当然アップロード出来ませんでした。撮る前に気付けよ、私。


「こうなったらー、禁断のゆるキャラ、タマナッシーを!」

「少子高齢化社会に真っ向から立ち向かっていくカッコイイ名前だね。多様性ってヤツかな?」


 タマナシとは、多摩地方の梨です。梨は旬が短い上に、鮮度がすぐ落ちるせいなのか、ご当地でもなかなか食べられません。川崎市でも中野島まで行けば栽培しています。駅前一等地が梨畑!ラゾーナがある川崎駅から30分で行ける場所なんですよ。特に見どころはありませんね。製麺所直営の麺屋くらい?私は、ここにも住んでたことがあります。


「名前と言えば!お姉さんの名前が無い!つけなきゃ」

「いや、産まれた時からありますけど?」

「あ、そうか」


 固有名詞に拘らない世界に長くいたせいか、すっかり忘れてました。この国では、だいたいの人には産まれた時から、戸籍上の名前があります。人によっては真名もあります。


「ハルコだよ。お姉さんの名前はハルコ」

「ハルコかー、ほいじゃあサクラモチちゃん?」

「え?ハルコはハルコちゃんだよ?」

「真名が必要でしょ!」

「はい?」


 あ、でもー。今は生き別れてますけど、サクラという姉ちゃんが居ましたね。被ってますよ。うーん、思いつかない。甲類焼酎ちゃん?ないわー。もち?もちもちおもっち。


「チンチンポテト1世」

「どこからお芋さんが出て来たの!?」

「ほいじゃあ、オモッチちゃんで」

「まあ、なんでもいいよ」


 お姉さんは、しゅしゅっとしたすっとんとんなので、お餅感皆無ですけどね。


「オモッチ探偵事務所を開業しようか」

「また、急に何を言い出すのか」


 しかし、この野望はあっさり打ち砕かれました。

 現実の日本では、探偵は簡単には開業出来ないのです。免許だか届け出が必要なんだとか。お姉さんがやる気がない以上は無理です。

 行く先々で謎の殺人事件さえ起これば出来るってもんじゃなかったのです。そもそも、そんな異能は私達には無かった。

 ぐう、ハードボイルドへの道のりは遠いですわー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ