1-11. ITパスポート持ち魔法少女の天職とは?
私達3人は、アイドルユニットを組む事にしました。
今日から、定食屋の屋根裏部屋で合宿開始です。3人組といえばキャンディ隊です。お菓子食って涙が出そう。今日も、ケーキがうまい。お姉様は定食屋を継いで忙しいはずですが、相変わらずケーキとかプリンを作っては私を餌付けしてくれます。
こんな貧相な女児の何が気に入ったのか。お姉様の好みは分かりません。私は、美少女ではありませんが、残念な感じでもありません。悪役令嬢の居る世界でも、女子生徒Cでした。そういう感じです。
せっかく異世界留学で魔法を習得したので、魔法で荒稼ぎしたいのですけどね。
この世界では魔法は禁忌ですからね。魔法は使えません。せっかく時間停止魔法まで習得したのに。タオルくんとメイド騎士のパンツを脱がして、おしりを眺めるくらいしにしか使えません。お姉様のは報復が恐ろしいので、まだ脱がしてません。
そういう感じなので、アイドルユニットで荒稼ぎです。
でもそれは、世を忍ぶ仮の姿です。エイリアスです。だって貧相な私がアイドルになんてなれるはずもない。
その実態は? というとニートです。タオルくんとメイド騎士が定食屋の仕事を手伝うので、私はニートでいいのですよ。やったね!
そもそもがですよ。この村では働かなくても、お風呂に入れますし、ご飯もお腹いっぱい食べられますし、屋根裏部屋のふかふかオフトンで両脇に美少女はべらせてヌクヌクなんですよ。ニートでいいよね?
「別に、ひとりくらい貧相なのが混ざっていてもよいのでは? マニアックな人気が出ると思いますが」
メイド騎士は自称永遠の27歳の17歳だったはずですが。実際には、こいつも14歳でした。アイドルなので年齢を偽るのは当然ですね。17歳は姉の年齢だそうです。振り向かない感じのポニーテールの美少女です。
おまえがアイドル? プークス! で済むと思ったのですが、どうやらこいつは本気にしたようです。まあいいでしょう。どうせこの村には、地下劇場もライブハウスもありませんし、デパートの屋上もありませんので。
「屋根裏部屋に巣食う魔法少女といえば…天職があるだろう…さだめられたジョブ…飛脚便だ」
「空飛んでたらまた捕まるからなー。無理なのでは?」
ここに帰って来る時は、上空1万メートルを飛行して、ひと目のない所で離着陸しました。宅配となると、そうも行きませんねー。徒歩で運ぶのも嫌ですし。やっぱり魔法は仕事に役立ちそうもありません。
「あんたは今まで通り皿洗いやってなさいよ。3人とも家の子なんだから、家業は手伝いなさい」
私のニート計画は、お姉様にダメ出しをされました。
身代わりになる人を連れて来れば、働かずに済むと思ったのに。
何か他の仕事をするなら皿洗いしなくてもいいよ、と言う事なので、やはりアイドルになるしか? もしくは飛脚便? あるいはお仕事人ですかねー?。ネットワークを構築するお仕事はないんですか? ないでしょうね、テレビもラジオもないんだし。
そうだ。宅配は無理でも、村と村の間で荷物を運ぶ、長距離トラックのドライバーならどうでしょうか。飛行魔法を使えば、1週間かかる距離でも1時間で運べます。つまり、配達期限の1時間前までは、遊んでいられます! これですよ!
そもそも、そういう物流のニーズがあるのか? 教会で聞いてみましょう。
「迷えるニートに天啓を下さい。ぶひぃ」
「あなたのいうトラック野郎というお仕事はあります」
「まじですか!」
「しかし、塩や特産品などを運ぶお仕事なので、信用のある人にしか出来ません」
「では、この豚野郎には無理だと?」
「無理です」
むーん。信用情報まっさらですからねー、私。これまで異世界で積んできた信用情報も引き継げてませんし。CICもKSCも異世界とはネットワークを結んでませんからねえ。もっとも、異世界の悪事も同期されちゃうと、懲役1万2千年ですけど。
詰んだ。詰みましたわー。一生、皿洗いですわー。
いや、むしろ、一生皿洗いで生きていけるということなのでは? むしろ、皿を洗うだけでいいなんて、貴族なのでは?
うだうだやっている内に、今日も一日が終わりました。皿洗いすらしていません。ぶひぃ。