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魔法少女と夢見る電気魔王 ~女神の異世界ITパスポート?~  作者: へるきち
8.基本設計書 −異世界幼女とSEお姉さん−

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8-3. 圧迫面接

「まず、お名前はぁ、どうでもいいや。あなた何歳ですか?」

「えー?年齢聞くのはダメなんだよぉ?43歳デスけど。むしろ何故、名前を聞かないのか」

「あれ?2011年って、もうそんなじゃった?」

「ちょっと君ぃ、面接中に私語かね?たるんどるなあ?あーん」

「あ、はい。魔暦前の面接官はうっせえなあ」

「なにかね?ボーナスの査定が楽しみなのかねー!?」

「イオナズン撃つぞこの野郎。マジで撃てるんだからな?」


 何をやっているのかいうと、圧迫面接ごっこです。


「この姉共、ろくでもないことしかしない。草生える」


 お姉さんが私達を飼育してくれるというので、飼育能力があるのか面接しているのです。

 転生してからもうひと月経つのですのじゃがー。村に帰れる気配もないし。4人まとめての異世界転移は危険なのでやりたくないし。死んでみるわけにもいかないしね?


「もういいや。普通に相談しよう。古傷が抉られるわー」

「拙者は名誉あるヒキニートゆえ面接なんか行った事ないでござるが。ほんとにこんなのナリ?」

「うん。今のは全然ゆるい方じゃよー」

「私も、アルバイトくらいしかしたことないけど、面接は嫌な思いしかない」

「あのー、本題に入ろうか?私も面接がトラウマで個人でやってるようなとこあるし」

「ほじゃーね」


 そもそも、私達が選べる立場じゃあないんですよ。就職氷河期どころの問題じゃない。

 お姉さんは、おしりの病を治してもらったり、仕事を手伝ってもらったりで、「コイツら使える!」って思ってくれたようですけどね。現代日本では、お猫様と暮らすだけでも大変なのです。異世界幼女4頭を飼育するなんて問題しかありません。


「管理会社は、うまく誤魔化せたのよね?」

「うん。私、あんた達くらいの娘が居ても全然不思議じゃないから」


 同居人が後から増えた場合、管理会社には届け出が必要なんですけど、住民票などが必要なわけではないので、別居してた娘達を引き取った、で済んだそうです。やや無理筋な話な気もするけど、都会は隣人の家庭の事情を探ったりはしませんからね。ちなみに、どういう名前で届け出たかというと。ニア、カヲル、ミカ、ミーナ、です。村での名前ほぼそのままなので、私達も違和感ありません。


「戸籍はまあ、小学校行くわけでもないし。あんた達は永遠の6歳児なんでしょ?じゃあ、まあ大丈夫かなー」


 都会ではどんなのが隣で暮らしているか、誰も興味持ちませんからね。永遠の6歳児が引き籠もって居てもバレないでしょう。


「一番の問題は、お姉さんの経済力でしょ?」


 そうじゃよねー。幼女4人、オウム1羽、猫1頭ですからね。食費と衣服代、トイレの砂、諸々の雑貨、毎月10万円くらいは必要ですかねー?医療費と教育費がかからないのは救いですね。


「お姉さん、貯金はあるの?」

「ないよ。むしろ借金ならある」

「なんじゃと!?それでマイカーとか贅沢なのでは?」

「リーマンショック前は、特定派遣の会社やってたんで。お金あったんだ」


 特定派遣業とは現代の奴隷商人の事です。

 派遣先も、派遣スタッフも自社には無いのに、他社から回ってくる派遣先と派遣スタッフを組み合わせるだけで、お金にするのです。IT業界以外にもあるのかなー?

 IT業界でもリーマンショック以降は絶滅しちゃったかな?


「リーマンショックはうまく逃げたの?」

「在庫を抱えてたワケでもなし、会社は廃業して終わり。派遣スタッフを自前で雇用してた会社は潰れたとこもあるよ。一番泣きをみたのは派遣社員だろうね、田舎に帰った子も沢山居た。私は、帰る田舎も無いし、日雇い派遣をして耐えたけど、生活費に足りなくて借金をした」


 魔法を使わなくても、私は未来を本当に見通せます。だって、2024年頃の日本に転生した事があるので。でも、その未来知識を使うのは禁じ手でしょうね。

 そんな不正をすると歴史が変わって反動でヤラれます。ウクライナの戦争が早まるとか、シン・エヴァンゲリオンがいつまで経っても公開されないとか、そういう事が起きちゃうかも知れません。

 もうすぐドル高になり日経平均も上がって行くのは分かっているので、簡単にお金を作れちゃいますのじゃがー。投資や投機に未来知識を持ち込むなんて、魔法の力で強盗するのと変わらない。

 まっとうな方法を考えましょう。

 もちろん闇バイトアプリの開発とかもダメです。今後流行るのが分かっているものに手を出すのも禁じ手です。


 お姉さんの仕事は、私達が手伝えば数を増やせますが、それよりも単価を上げたいですね。

 仕事の数を増やして、お姉さんが倒れてはいけません。治癒魔法でも壊れた心は治せないので。


 さて、どうすれば単価が上がるか?

 顧客から直接仕事を請けると、その分入ってくるお金が増えます。顧客との折衝というリスクが増えますが、それは私やタオルくんが担当しましょうか。であれば、問題は営業力ですね。この時代の私は、外部に発注できる立場で仕事してますけど、未来の私と癒着した記憶はないので、そっちは頼れませんね。

 うーん、営業は気合と根性なので、やろうと思えば出来ますけど、看板に知名度の無い個人じゃあねえ?


「マグロ漁船かカニ工船にでも乗る?」

「え!?私が倒れたらダメって言ってなかった!?」


 この時代、ハードだけど大金になるぜーって仕事は無いし、これはダメだね。

 結局、お金を稼ぐにはお金が必要なんですよ。お金が無いなら頭か体を使うしか無いのです!


「飛び込み営業やるかー」

「お姉ちゃんが珍しく、まっとうな事を!?」


 5年頑張れば、シン・ゴジラが公開されます。まずは、それまで頑張りしょうか。

 その次の目標は、11年後のシン・ウルトラマンですよ!それまでは現代日本でサバイバルです。

 目指すはお姉さんの早期リタイア、ファイアーです。


 思い立ったが吉日、早速営業活動です。

 お姉さんは残っている仕事をやっつけているので、私一人で行きます。幼女が徒歩で行ける範囲を回るよ。この辺は、商業地域なので訪問先は沢山あります。繋がりもしないフリーWi-Fiだって沢山吹いています。


「まいど!」

「え?何?イベントのPRかな?あぁ、ハロウィン?」

「怪人ミツバチ幼女です!Webのご用命はありませんか!」


 怪人ミツバチ幼女の衣装をタオルくんに作って貰いました。インパクトで勝負です。

 町工場に適当に乗り込んでみました。


「あー、Webねえ?とりあえず、おやつ食べる?」

「あざます」


 やはり大人はチョロい。幼女に甘いです。


「そろそろ新しいのに変えたらどうかって、システム開発屋の営業がうるさく言って来るんだが、高くてなあ」

「ほほうー。サーバーは、ここの社内にあるんですね?」

「冷やさないといけないだろ?電気代もかかってなあ」

「ほいじゃあ、クラウドにしましょう」

「クラウド?」


 Webというか、工程管理のシステムを使っているそうです。5年前に作ったのだとか。確かに、リプレースの時期ですね。

 自前サーバーは、お金がかかります。電気代もそうですけど、セキュリティを担保する手間もかかります。誰でも触れる状態のサーバーは、開けっ放しの金庫みたいなものですからね。


「クラスター組んでますけど、この5年で一度でも切り替わりました?」

「停電した時くらい?いや、停電なんだから丸ごと動かなかったのか」

「でしょうね。クラウドなら、そういう心配も不要です」

「ほう?」


 やりました。訪問10件目にして、もう話を聞いて貰ってますよ。


「ランニングコストも合わせたら、あまり金額変わらなくないか?」

「ほいじゃあ、いつ止まるか分からない恐怖に震えながら眠ればいいよ」

「こえー事言うなあ、この子供」

「初回なんでシステム開発も必要ですしおすし。でも、5年後の更改費用は不要ですのじゃがー」

「ほほう?」


 ダメでした。

 ここの契約をきっかけに、ミツバチWeb製作所は年商100億円を越えて、どっかの大手企業を丸め込んで買い取らせて、お姉さんをファイヤーさせる予定じゃったのに。

 ハロウィンの仮装した幼女だと思われました。おやつは沢山集まりました。通報されなかっただけましですかね。そう言えば、この時代の川崎は駅周辺でハロウィンのイベントやってましたね。今は、2011年の10月なのです。


「この時代の人類にはクラウドはまだ早過ぎたかー」

「あのー、私もクラウドの事なんか知らないよ?レンタルサーバと何が違うの?あと、私を燃やさないでね?あんた、メラとかほんとに撃ちそうだけど」

「大丈夫、私が出来るし。ガンプラ組むより簡単だから、お姉さんもスグ出来るよ」


「「「野郎!ぶっ殺してやる!!」」」


 再びお姉さんが、3人に増える修羅場です。

 クラウドのお仕事も請けるようになってから忙しくなりました。地道に実績を積んだおかげで、直接契約してくれるお客さんも出来ました。


 でも、仕事が増えるとトラブルも起きます。


「休日と夜間は対応時間外なんじゃけどー」

「こっちはこの時間が重要なんだよ!システムが止まって困ってるんだ。今スグ来い」

「はあ、それは大変ですねえ。ぼくねむいから行かない」

「作ったのお前らだろうが」

「保守運用サービス契約いただいてませんしー。ほいじゃあ着信拒否しますねー」

「あ!おい!」


 適正な対価を払わない奴は客じゃありません。

 当然、休日や夜間に電話かけてくるようなのは無視です。保守運用サービスをけちる会社のシステムに限って、トラブルが起きるものなのです。不思議だね?何も仕込んでませんよ?

 しかしー、正論で世の中を渡るには、権力とかそういうものもセットで必要です。また仕事が減りました。


「まじめにやってダメなら、遊び気分全開で、動画投稿に挑戦しよう」

「へ?なにそれ?遊んじゃダメでしょ」


 お姉さんは意外と真面目で手堅いです。飲んだくれる時も、「それ本当にニンゲンの飲み物なの?燃料そのものじゃん」っていう安い甲類焼酎ばっかり飲んでます。ストロングな缶やビールは、かなりの贅沢です。仕事を納めた時か、盛大にやさぐれた時にしか飲みません。


 遊びは冗談ですけど、株を切り崩す事態になる前に、何か手を打たないと。

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