エピローグ 王都のその後
「もういいかな?」
シールドをばしばしと叩くキマリ。
「あぁ、終わったようだ。お疲れ様、リナ。」
「お、兄...疲れ...た。」
体中の血を拭きとりながら疲れた様子で息を切らしていた。
俺はシールドを解除し、キマリのもとへ歩いた。
「よう、キマリ。何があったんだ?」
「いやはや、魔領に入り込んだら普通にばれて捕まっちゃったんだ。」
てへっ、とやっちゃたぜ感を演じていた。
「あ、そうそう。僕の身体には呪言が刻まれてるんだ。一回殺してくれないかい?」
一般人が聞いたら何言ってるんだ?と思うようなことを平然と言ってきた。
呪言は捕虜や奴隷に対し使用する魔法で、主に居場所の把握、魔力行使の禁止、自由の拘束などさまざまな禁則がつけられる。
それを解除するには、魔法をかけられた者が死ぬか、魔法を解除するかだ。
この魔法は解除されてしまうという欠陥的なデメリットがあるが、解除までの手順がとんでもなく複雑で、解呪中に魔力を吸われ続けてしまうという一種の呪いまで罹る。
なので、通常だったら諦める、という選択を取るだろう。
「あぁ、分かった。」
俺はニェールから針を貸してもらい、キマリの魔臓の位置に突き刺す。
ぐふっと血を吐き、ばたりとその場に倒れた。
「ニェール、虚偽を解いてくれ。そろそろ欠乏にも飽きてきたしな。」
「分かりました。Breaking the spell。」
俺の身体から黒い靄が出て、俺本来の力が解放される。
俺の2つ名は『欠乏』ではない。それはニェールの虚偽によって変えられていた。
本当は『万物創造』だ。俺は他の者とは違い、本質的に人間離れな力を持っている。
凶星もその力によって生み出された俺のオリジナルだ。
過去に似たような魔法があったので、それをもとに俺が新しく作り出した。
おそらくあの時学園長が、知っていたのは過去の魔法に似ていたからだろう。
死んでるキマリを今から生き返らせる。
「万物創造、死者蘇生。」
キマリの頭に手を触れ、魔力を消費する。
キマリはもぞもぞと動き出し、
「...ぁ、あぁ。ん”ん”。うわぁお。こんな体験久しぶりだ。」
「生き返った感想は?」
「喋るのが大変。」
何事もなかったかのように起き上がり、普通に会話をした。
はたから見たらとんでもない光景だ。
「セナさん、やはりずるいですね、その力。」
「そうか?」
「そりゃね、そんな禁忌に触れている魔法、魔術?力か、魔力を消費する以外の代償が無いのが不思議なくらい狡いに決まってるだろ。」
「お兄は最強!」
俺の力はあまりにも強大すぎる。
禁忌に近いというより、むしろ禁忌自体だと俺は思っている。
「まぁ、これで<アフレイド>には借りができたし、今度何かあったら力を貸すよ。」
「お前の力はすごく助かる。」
「皆さんマスターが来ます。」
ニェールが指をさした方向からマスターが歩いてきた。
そこには、マスターだけでなく、酒場にいた人物もちらほらいた。
「マスター?王都消してしまいました。原因はそいつらです。」
「あぁあぁ、聞いたさ。こいつらと来たら、いっつも大事な時に話を聞いてないんだよな。」
「悪かったって。」
「許してくれよ。」
マスターにぺこぺこ謝る氷炎の二人がいた。
そんな二人の頭を叩き、痛そうに悶絶していた。
「こいつらがここまで馬鹿だとは思わなかった。なぁ、魔族はみんなこうなのか、キマリ?」
「これはこれは、マスターさんじゃないですか。久しぶり。」
キマリも立ち上がって頬をかいていた。
「あぁ、魔族の中でも変り者ですとこいつらは。」
「うへぇ、キマリさんもここにいたんですかぁ。」
「キマリさん、久しぶりに見たな。」
「こいつらにはお灸を添える。しばらくどっか歩いてろ!」
無茶苦茶適当な罰を与えられた二人は、またか、とつぶやきその場から去っていった。
「王都が消えてしまったんだ。秘宝が消えてしまったのはまぁしょうがない。依頼主もなんとか納得してくれるだろう。」
「依頼されて王都に来てたんだ。またあのご老人かい?」
「キマリがなんか手伝ってくれるそうですよ、マスター。」
「へぇ、そうかい。それじゃ新しい依頼だ。今度は森林に行ってくれ。」
「それって僕、魔族が近づいたら問答無用で追い返されてしまうんじゃないの?」
森林は、主にエルフの住処だ。
聖エルフ大国と言ったら、森林がまっさきに思い浮かぶ。
最近森林内で謎の生物で溢れかえってるらしく、勇者がいるらしい。
「依頼内容は、勇者を絶望の淵へ追い込め。ということらしい。」
「どんな手を使ってもいいのでしょうか?」
「あぁ、別にいいが、流石に森林を消すのはやめてくれだそうだ。あと、燃やすのもやめてほしいそうだ。一応森だからな、魔力が自然に浮いてる森林で小火でも起きれば一巻の終わりだからな。ほんとに気を付けてくれよ。」
念に念を押された。
「ふ~ん、面白そうだね。僕たち<フラウロス>は今、自由に旅しているんだ。いいだろう、僕もついていこう。」
軽いノリで魔族のキマリと共に俺、リナ、ニェールで森林に向かうことになった。
「マスター、金くれ。」
「依頼達成したらもっと小遣い増えるんだがな。」
嫌味を言われながら金貨数枚をもらった。
「王都の後処理はこっちでやっておく。」
酒場にいた数人の冒険者やマスターが手を振ってきた。
「次は邪魔が入らないことを祈って、行ってこい!おまえら。転移。」
マスターの魔法により王都より飛ばされ、あっという間に森林付近に飛ばされた。
一瞬の出来事で唖然としている、キマリといつもながらの突拍子のない行動にあきれているニェール、眠そうなリナ、金貨3枚しか入ってないことに気づいた俺は、それぞれその場に座り込んだ。




