好きを無くした
ジュネは週一日、女性が来ない日にクロエと過ごすことにした。
実はその一日はジュネが仕事に集中する日だ。
クロエはそれを知っていたので邪魔はできないと思い夜は普通に下がろうとした。
「クロエ、どこに行く?練習日だぞ」と言ってクロエの腕を掴んだ。
「陛下、お忙しい中申し訳ありません、お気になさらず」とクロエは断ったがジュネはクロエを離さなかった。
二人ソファに並んで座って話をした。
「クロエ、今まで嬉しかったことはあるか?」
ロウソクの柔らかい光に美しいジュネの顔が照らされておりクロエは少し緊張をしながら考えた。
「あ、あります。あの時陛下が生きたいのか死にたいのか聞いてくださった事です」クロエは嬉しそうに言った。
ジュネは力が抜けた「お前は、、、他にないのか?」
「陛下、私の人生はいつも誰かに決めてもらった道を歩くだけの人生でした。自分で何かを選んだことはありません。だれもお前はどう思う?とは聞いてくれませんでしたし、聞くことも許されませんでした。けれどあの時陛下は生まれて初めて私に選択するチャンスを下さったのです。本当に嬉しかったです。、、、おかしいですか?」
クロエはジュネに聞いた。
「……全く、、この女王様は、、」と言ってジュネはクロエを抱き寄せた。
クロエはそんな事をされた経験がなかったので本当に驚いた。
「陛下?」ジュネは言った「クロエ、黙れ」クロエは黙ってジュネの胸の中にいた。
ジュネはいい香りがした。暖かかった。髪がサラサラで、金色の瞳がすっごく綺麗だった。
クロエはときめいた。不思議な感情が湧いて来た。なんだろうこれは。
「あ、あの陛下、重くないでしょうか?」どうして良いのか分からず変な事を聞いてしまった。。
「クロエ、お前が見た女達は俺がこうした時どうしていた?」
「……嬉しいと,申し上げたり、大好きなどと仰って陛下に抱きついておりました」
「お前もそうすればいい」
「はぁ、嬉しいはなんとなくわかる気がしますが、大好きは、、よくわかりません。けれど陛下を尊敬しております」
クロエは真面目に答えた。
「俺、そんな事を言われたの初めてだな」ジュネも真剣に答えた。
「クロエは好きなものはあるのか?」
「女王たるもの何かに偏る事は許されないと教育を受け、私は好きを無くしました。でも、少しだけちょっと好きだと思っていた夫も彼を大好きだというオーロラに惹かれましたからやはり大好きは特別みたいですね」
「クロエ、お前の夫は俺がいうのも説得力ないが最低だぞ。お前が気にする価値もない。忘れろ。大事なことはそれよりお前の無くした好きを拾い集めなければ前に進めないな。」
「陛下は私の好きを探すことを大事だと思ってくださるのですか?」
「ああ、当たり前じゃないか」
「陛下、また一つ嬉しいが増えました。陛下は嬉しいを私に下さいます。感謝します。」
クロエはジュネに抱かれながら顔をあげ美しく微笑むジュネを見た。
ジュネはクロエを見て「どういたしまして」と笑いクロエの頭をくしゃくしゃと撫でた。