ジュネのメイドになる
「陛下、冗談はいけませんよ」
と言って微笑むとジュネはクロエを見つめた。
「クロエ、、」と何かを言いかけた時、令嬢達が馬車から飛び出してジュネに抱きついて喜んでいた。
クロエはそっとその場を離れ馬車に戻った。
冗談でもクロエはジュネからあんな事を言われると顔が赤くなってしまう。
けれど感情を表に表す事ができないクロエは、ジュネに群がる令嬢達のように自分の心を素直に表して生きられない。そんな日は永遠に来ないかもしれない……
クロエはこの先どうなるんだろうと考えていた時、ジュリアがきた。
「女王、一緒にジェノヴァに行くよ」クロエは「ジェノヴァですか。」と聞いた。
「女王に手伝ってほしいことあるから。いいよね?」と有無を言わさずクロエはジュネの国ジェノヴァに連れてゆかれた。
ジェノヴァは美しい王都で水が豊富で至る所に水場があり、緑があり、海からは心地の良い風が吹き、温暖でとてもよい所だ。
クロエはこの国をジュネ達が作ったことに感動した。
ジュネ達はこの南部の貴族だった。
横暴な王を断罪し、ジュネが王になり、そこから一気に他の国々を支配し、今は国の規模が最大になりつつあった。
きっとそのうちクロエの国だったアルメディアも征服するだろうと思った。
クロエはジェノヴァに来てお城の一室を与えられ「お気楽担当」という業務を与えられた。
ジュネ達はクロエが色々な職業を経験して罪人以外になれるよう、お気楽に色々挑戦しても良いという権限を与えてくれたのだ。
本当にありがたくクロエは感謝をした。
クロエはとりあえずメイドを始めることにした。
女王だった時メイドの仕事は全て把握していた。お城に仕える仕事が向いているとも思った。
早速ジュリアの専属メイドの一人として働くことになった。
突然国の重要人物のメイドになったので、他のメイドから嫉妬を受けた。
でもクロエはそんな世界に生きていたのでなんとも思わなかった。
朝の支度から夜寝るまでの流れ,女王のときに感じていた事などを踏まえジュリアに仕えていた。
ジュリアはクロエの能力に高さに脱帽した。あの頓珍漢な女王は天才的な気遣いができる最高のメイドになった。
「女王すごすぎる」ジュリアはみんなに言った。クロエの肩書きはメイドの文字が増えた。
女王、罪人、メイド。違う自分になれたことが嬉しかった。
ジュネはジュリアがべた褒めするクロエのメイドが気になっていた。
メイドのクロエは一生懸命に働いていてそんなクロエを見るとジュネの心が穏やかになる。
美しい金色の髪を一つに束ねすれ違う時に美しい動作で頭を下げるクロエを自分のメイドにしたくなった。
ジュネはジュリアに「メイドのクロエを俺にくれ」といってクロエは陛下のメイドになった。
ジュリアは職権乱用だと抗議したがジュネにはかなわない。
クロエは男性のメイドになることは考えたことがなかったので戸惑っていた。
それにジュネのことがまだよくわからなかった。
一つだけわかるのは人を惹きつける魅力を持っている人。
あとは女好き!これは間違いなかった。
数日クロエは差し当たりないように仕事をし、徹底的にジュネを観察することにした。
ジュネはとにかく忙しい。
忙しい中でも誰に対しても全く同じ態度で、身分等で人を差別する事はなかった。
一見いい加減に見えるが決してそうではなく、その知性は計り知れないものを感じた。
でも何か満たされることがないような、そんな雰囲気も感じた。
それが理由なのかわからないが毎日毎日女性と夜を共にしていた。
色々なタイプの女性がひっきりなしだ。
ジュネは美男子で、色気があり、少年のような可愛さがあり、わがままなで魅力的な皇帝だ。
その黒髪と金色の瞳が時に背徳的な雰囲気を醸し出し女性達を虜にしていた。
時には強引に時には甘く恋愛の駆け引きを楽しんでいた。
そんな時は邪魔しないよう部屋の外で待機するのだが、なんとなく複雑な気持ちにもなる。
ただ、ジュネが誰かを好きになる事はないように思えた。