溢れる涙
クロエは国を取り戻しすぐにブレーズをジュネに返さなくてはと思った。
ブレーズがその日のうちにジェノヴァに戻ると言った。
話したい事が沢山あったが、ひとまずジェノヴァに戻ってもらってまた会う事を約束した。
ところが数週間でブレーズが戻って来たのだ。
クロエは何かあったと感じた。
ブレーズの持っている剣はジュネの紋章が入ったものに変わっている。
恐らく何か重大なことがあった。
クロエはブレーズと二人で話す事にした。
ブレーズから話を聞き、クロエは安心をした。
ジュネがクロエを忘れてしまったのは悲しいが、生きていてくれただけで十分だ。
ブレーズはクロエがホッとしている様子を見て不思議思った。
「ジュネ様がクロエ様を忘れてしまったのです。どうして?悲しくないのですか?」クロエは言った
「陛下が生きているのです。それだけで十分、陛下が大変な時にブレーズ様をお借りしてことが悔やまれます。そして何もできなかった自分が恨めしいと思っています。」
クロエはそう言って下を向いた。
「クロエ様、私はカイル様に許しを得てここに戻って参りました。エメ様からジュネ様の紋章が入った剣を頂き、ジュネさまの代わりにクロエ様をお守りする許しを得ました。どうかあなたのそばに置いてください」
ブレーズは跪きクロエに言った。
「でもブレーズ様が居なくなってジュネ様は心配ではありませんか?」
「私もクロエ様同様四年前の人間ですから,,。恐らく忘れられていると思います」
そう言って笑った。そんなブレーズを見てクロエも笑った。
「ブレーズ様,よろしくお願いします」クロエはブレーズをクロエの騎士に任命した。
クロエは国を立て直すために余分な宝石や金など売り払った。
女王として品位を保つための最低限を残して全て手放し国のために使った。
そんな女王を見て国民はやる気を出した。
我々の女王を誰よりもお金持ちにして、美しく着飾って幸せにしたい。
そう思い皆働いた。
クロエの国は半年も経たず立派な国に成長をした。
クロエはこの国の名前を国民と共に考え「ミラベル」と名付けた。
神の祝福という名の国だ。
ミラベルは他国と国交を始めた。
クロエの噂を聞きつけて他国が我先に国交を結ぼうと押しかけて来た。
それほどまでにクロエの復帰は伝説になっていた。
クロエはジュリアに手紙を書いた。
ジェノバと国交を結びたいがどう思うのか相談したかった。
ジュリアすぐにジュネ以外のメンバーに相談し、ジェノヴァから役人が派遣されて来た。
役人がクロエにジュリアからの書簡を渡した。
そこには国交についての草案が書いてあり、最後に私たちはクロエを待っているとエメ、カイル、セリーヌ、ジュリアのサインが書いてあった。
クロエは本当に嬉しかった。
すぐに返事を書き、日程に調整をお願いする旨を伝えて役人をジェノヴァに返した。
こうしてクロエがジェノバに行く日程がスムーズに決まりブレーズを連れジェノバに向けて出発をした。
クロエはジュネのことは何も言わなかったし尋ねなかった。
本当は色々と聞きたかったし知りたかった。忘れられて悲しかった。
だけど今更何を言っても仕方がないことだと悟っていた。
だから忘れようとした。
こんな気持ちを誰にも知られてはだめだ。
女王たるもの強く居なければ。
自分を出すには一人になった時だけだ。
そう思う生活にもまた慣れていった。
昔とは違いクロエは国民のお陰で心から国に仕えられる。
どんなに悲しくても耐えられる。耐える強さを持たなければならないと思っている。
ジェノバに向かう道はさまざまな思い出があったが一切顔に出さなかった。
ブレーズとメイドに冗談を言いながら楽しく旅を続けてジェノバに到着した。
公式にジュネに会うには明日だ。
今日は非公式でジュネ以外のメンバーに会う。
クロエは本当に嬉しかった。
クロエは迎えの馬車に乗り非公式で城に入った。
ジュリア、セリーヌ、エメ、カイルがクロエを抱きしめて歓迎してくれた。
クロエは一人一人に挨拶をし、感謝を伝えた。
何度も皆さんの存在に助けられて今も助けれて感謝しかない。
四人はそんなクロエが可愛くて可哀想で仕方がなかった。
でもクロエは一切ジュネの事を口にしなかった。
クロエは自分がそれを口にしたらみんなが悲しむと知っていた。
だからそんな素振りも一切見せず過去の出来事を思い出して皆と笑い転げた。
流石にカニの話は伝説になっている。
エメはもう時効だと言って笑いまくった。
夜十二時近くになりクロエは明日のために帰る事にした。
皆は泊まって行けと言ったが流石にそれはまずいと言って丁重に断った。
クロエはお忍びできていたので華美な服装をしてこなかった。
城にいても不自然ではない格好だったので一人で帰りますと言って部屋を出た。
送るよとエメが言ったが城も久しぶりに見たいからと言って断った。
部屋を出て中庭を抜ける途中夜空を見たら沢山の星が出ていた。
クロエは懐かしい気持ちで見上げた。
流れ星が見えた。クロエは急いで願い事をした。
あの時と同じジュネの事を願った。
そんな自分に驚いてしまった。
無意識にやっぱり願いことは彼のことだった。
どんなに気持ちを隠しても自分はジュネの事を願ってしまう。
クロエはそんな自分の気持ちをどうしていいのかわからなくなった。
また流れ星が流れていった。
クロエは泣いていた。
女王は弱みを見せてはいけない。
でも今は一人だ。
今日だけは自分を許す事にした。
涙が溢れて止まらなくなった。
あの日以来絶対に泣かなかった。
四年前ジュネにあった時以来初めて泣いた。
ジュネを思い出したら本当に辛くなってしまった。
声が出てしまうほど悲しくなった。
だけどグッと堪えて空を見た。
明日ジュネに会う。
きちんと女王でいよう。
フーと一息ついた瞬間クロエは視線を感じた。
その視線の先にジュネがいた。
なぜジュネが?どうして?
クロエは一瞬驚いたがスッと指で涙を拭い会釈をしてその場を離れた。あの時のように。




