国をあなたに捧げます
「ところでジュネ、もうすぐ時間だけどやる?やらない?」セリーヌが言った。
「やる」ジュネが言った。
「じゃあはじめるか」エメが言った。
カイルが「女王どうする?」とジュネに言った。
「私ほしいわ」ジュリアが言った。
クロエは何のことだかわからなかった。
ジュネは「クロエ、あの馬車に乗れ」と言って五人は兵士の所に行ってしまった。
残された女二人とクロエは女達が乗ってきた馬車に一緒に乗った。
クロエは馬車に乗るのは久しぶりだと思った。その時いきなり数百の馬が動き出した。
今からマーチス国を攻めるのだと思った。
馬車に乗っている女性二人は今ジュネのお気に入りの令嬢だと知った。
令嬢もジュネに夢中らしい。親がいない時の令嬢なんてやりたい放題だ。
クロエは女王だったのでそんな自由がある令嬢が羨ましかった。
クロエは馬車に乗るときに入り口の幅と窓の位置を確認した。
襲撃に遭いやすい馬車は座る席や座る角度が命取りになる。あとはこの馬車に剣はあるのか確認をしたかった。
「恐れ入りますが、座席の下を見てもよろしいでしょうか?」と令嬢に聞いた。
「勝手にどうぞ」と言われたので確認したところ剣があったので取り出した。
令嬢達は驚いて「何をするの?」と聞いてきた。
クロエは「いざとなったら私が戦いますゆえ」と答えたら笑って「お願いしますね」と言われた。
お願いされることがなかったクロエは嬉しかった。
ジュネ達は奇襲攻撃をした。
夜中の二時だ。王都は皆寝ているので平民の被害はほとんどなかった。
クロエは思った。ジュネ達が平民に人気がある理由もわかる気がする。狙うは王家のみでシンプルな戦いだ。
シンプルが故に勢いが必要だがジュネ達はその勢いがある。どう見てもジュネが有利だ。
馬車は城の出口付近で待機していた。その場所は安全な場所で兵士も守ってくれている。
剣は必要なさそうだと思った時、気になることがあった。
少し離れた所に一台の馬車が止まっている。一見何でもない馬車だがあれは恐らく財宝が乗っている。
先に財宝を運び出し降伏するふりをして取り戻す可能性がある。
クロエは令嬢に一枚ドレスを貸してほしいと頼んだ。出来るだけ華やかなドレスを。
令嬢達は訳がわからなかったが何かがあると思いすぐにクロエにドレスを着せた。
クロエは剣を持って馬車を降りた。
令嬢や兵士は何事かと驚いている中、クロエは圧倒的な女王の存在感で馬車に近づいた。
「ここを開けなさい」クロエは言った。
馬車を守る行者はクロエに圧倒された。
「あなた様は?」と聞かれた。
「なぜ私が名乗らなければならない?早くここを開けなさい」と言った。
行者は「王からのご命令でそれはできません」と言った。
やっぱり。。とクロエは思った。王家の財宝はここにある。
「私に逆らうの?」クロエはそう言い鞘に入った剣を両手で目の高さに持ち上げスっと少し引き「しかたがない」といって鞘から剣を取り出し行者の喉元に突きつけた。
行者はクロエの圧倒的な迫力にのまれ「申し訳ありません」と土下座をし、クロエに馬車を渡した。
クロエは近くの兵士に「この者を捕らえなさい」と言った。
兵士達は訳わからないがその通りにした。
そこにジュネ達が現れた。
ドレスを着て剣を握っているクロエを見て驚いた顔をしていたが、状況を見てすぐに理解してくれた。
ジュネが馬から降りてきた。右手には王の首があった。
「クロエ、借りが出来たな!」
クロエはこの国の王になったジュネにカーテシーをして「陛下お気になさらず」と挨拶した。
その美しく品のある姿を見た全員が本物の王女を見た。
金色の髪をなびかせながら美しく微笑むクロエにジュネは跪きクロエの手を取りそっと手の甲にキスをした。
「まあ!」驚くクロエに
「愛しの女王に全ての国を捧げます」
と言ってもう一度手の甲にキスをした。
上目遣いでクロエを見つめるジュネはこの世の人とは思えないほど素敵だった。