クロエの戦い
ジュネはクロエに一人だけ騎士をつけた。
あの城の騎士だ。
「何があってもクロエを守れ」そう伝えた。
クロエの長い戦いが始まった。
騎士の名はブレーズ。
クロエはブレーズがジュネの最も信頼できる優秀な部下だと知っていた。
だけどジュネの好意を断らなかった。
私が死んだらジュネに伝える人が必要だと思ったからだ。
ブレーズは頭も頭も良く、気も効いている。
文句のつけようのない相棒だ。
まず祖国の周辺から探りを入れ様子を見ることにした。
オーロラとその夫、アルベルト,叔父のオーギュストはジュネに交友関係を作ろうとジェノヴァに訪ねて来たことがあった。
その時ジュネは一切会うことは無かったとブレーズは教えてくれた。
「何故陛下は会われなかったのでしょうか?」
クロエはブレーズに聞いた。
「クロエ様、わかりませんか?ジュネ様はシンプルなお方です。クロエ様の敵だからです」
クロエはグッと胸が熱くなった。
ジュネの事を考えると自分が弱いのか強いのかわからなくなる。
そんな風に感じさせる人は世界中探しても彼以外いない。
ジュネに会いたくなった。
でも。国を取り戻すまで戦うと決めたからその日が来る事を信じて。。。
クロエたちは国境まで来た。
国境の向こうはクロエの祖国だ。
国民の生活を見て愕然とした。
ジュネの治める国の国民は明るく逞しく幸せに見えた。
しかしここは、ここの国民はみな暗い表情で,やせ細っていた。
クロエは胸が痛んだ。自分の時はここまでなっていなかった。
自分が放棄したツケがここに現れていたのだ。
いても立ってもいられなくなった。
クロエは今にも倒れそうな女性のところに行き持っていたパンを渡した。
女性はお礼を言ってすぐに子供を呼んだ。
幼い兄妹が現れそのパンをみんなで分け合って食べていた。まだあるからと言ってクロエは差し出したが、女性は言った。
あなたがいなくなったらパンは食べれれないので幸せはここまでで良いです。
ああ、こんな事を私は言わせてしまう国にしてしまった。。
こんな事を言わないで済む国になってほしい。
クロエは言った。
「私が必ずあなたがこんな事を言わなくてもいい国を作ります。」
その女性はクロエの顔をまじまじと見て
「女王様!」
と言って平伏した。クロエは
「今は女王でも何でもないただのクロエです。だけどそうなって初めてあなたたちの痛みを知ることが出来ましした。そしてようやく立ち上がることが出来ました。必ず良い国を作ります。どうかそれまで待っていて下さい」と話した。
「女王様、待てません。待てないから一緒に戦います。どうか一刻も早くお願いします」と言いながら、クロエを村のはずれにある小屋に連れて行った。
その小屋に置いてある藁を退かすと板があり、さらに退かすと地下に続く道があった。
その道を進むと人が五十人程集まれる広い空間がありそこに一人の老人が居た。
その女性はその老人にクロエを会わせた。
その老人はクロエを見てすぐにひざまづいて挨拶をした。
彼はクロエが女王だった頃クロエに仕えていた重鎮の一人オーエン伯爵だった。
「クロエ様、オーエンでございます」
「オーエン伯爵、何故ここに?」
「クロエ様、このオーエンはクロエ様の無実を証明するため、徹底的に裁判でオーギュストが提出した資料と国の金の流れを調べていました。
「その中で何故か不明瞭な金の流れがあり、それも長期にわたって何度も修正された痕跡を見つけました。その金はある商会に支払いとして流れており、その商会は実在せず、いくつかの銀行を経てオーギュストに流れておりました。」
その事実を掴み裁判に再審を要求する寸前で私は反逆罪の疑いをかけられ間一髪で逃れましたがこうして地下で活動を始めたのです。
例の証拠はダミーを作っておりましたのでそちらをとられましたが、現物はここにあります。」
「いつかクロエ様がお戻りになるかもしれないと信じて待っておりました!」そう言ってオーエンは泣き崩れた。
「オーエン伯爵、遅くなってしまい申し訳ありません。私の無実を信じてくれてありがとうございます。私は必ずやり遂げます。この国の民のために、私を信じて全てを失ったあなたの無念を晴らすために」
クロエは考えた。
この国を動かすのは国民だ。
国民の上に立つ貴族が国を動かすのではない。
国民が動けば国は変わらざるを得ない。
その現実を見せつけようと決めた。
国は貴族のものではなく、国民のものだと。
クロエは全土を回って国民と向き合う覚悟をした。
「オーエン伯爵、こちらにいる方はジェノヴァで陛下の騎士を努めているブレーズ様です。私は陛下の協力を経て騎士様をお借りしております。私は国民を救う為に騎士様を陛下に早くお返しするためにも急がなくてはなりません。私はすぐにでも全土を回って国民と対話をしようと思います。ご協力をお願いできるでしょうか?」
「クロエ様、私はこれでも多くの国民の味方がおります。すぐにクロエ様が移動できるようにお手伝いいたします。」
「ありがとうございます。」
クロエは顔が割れているだけになかなか自由に行動出来ない。協力者が必要なのだ。
「
クロエ様、なるべく目立たぬようこのフードを被って下さい。
クロエ様の髪色は王家の証、金色でございます。
誰が見ても分かりますのでどうかお気をつけ下さい。」
「そうでしたね。迂闊でした。」
「ブレーズ様、短剣をお貸しいただけますか」
クロエはブレーズに短剣を借り、縛ってある髪を無造作に手でまとめて短剣で切った。
「クロエ様。。」ブレーズとオーエンは驚いたが、
「髪は大切ではありません。本当に大切なものは目で見えないもの。この髪は私の決意です。この誓いを国民に捧げます」
そう言ってクロエは肩上になった短い髪を耳に掛け二人に微笑んでフードを被った。
その姿はどんな女性よりも美しく品格があった。
さすがジュネ様が愛している方だ。
ブレーズはクロエに尊敬の念を抱いた。
ジュネに頼まれたから守るのではなく、自らの意思で護りたいと思った。
オーエンの協力をえてクロエは国民に会いに旅に出た。




