思い出すのは、、
クロエはまずコックのスミスに聞いた麦畑に行った。
広い大地に黄金の麦が太陽に照らされ光り輝いていた。
その金色に輝く麦を見てジュネの瞳を思い出した。
ジュネは大切なネックレスをクロエにかけてくれた。
どんなものかわからないがジュネも肌身離さずつけていた事を知っていた。
国の王が肌身離さずつけているものの重要性はクロエもわかっている。
それをクロエに持たせてくれた。。。
麦畑を見ながらずっとジュネの事を考えている自分に驚いた。
そんな経験初めてだった。
風になびく麦畑を見ていたら人影が見えた。クロエは声をかけた。
「すみません、ここの方でしょうか?」その人影はクロエの方に移動してきた。
繋ぎのズボンを履いて日に焼けた肌に長い髭を生やした男性だった。
「そうだが何かようか?」
「ここの麦を食べたことがあります。とても美味しくて一度訪ねて見たくなりました。少しお話を伺いたいのですが、お時間はございますでしょうか?」
「あんた誰だ?」
「あ、失礼いたしました。ジェノバのお城に仕えておりますクロエと申します」
「おお、城に?ってことはスミスが言っていたメイドはあんたか!」
「はい、スミスさんにここの麦畑を紹介していただいて押しかけてしまいました」
「おれはボブ、よろしく」ボブは見た目は怖いが優しそうな笑顔でクロエに言った。
ボブと麦畑の波瀬に腰をかけ座った。
ボブは目を細めて風になびく麦をみながら話し始めた。
「前の王の時は税収が重くてな、俺らは自分の育てた麦を口にすることさえ出来なくて生きているだけで精一杯だった。生まれた子供に食べさせることも出来ずにな、、、死んだよ。」
「そんな苦しい毎日で死ぬこともなんども考えた。でも、今のジュネ様率いるジェルベージュが王を倒してくれて俺ら平民は重い税収から解放されたんだ。自由に麦を売ることも許されてな。俺は本当に感謝をしているんだ。だから一生懸命この麦を作ってそれを陛下に食べてもらいたいんだ。俺らに出来ることこれしかないからな!」
ボブは嬉しそうに話してくれた。
クロエはその話を聞いて様々なことを思った。
王の役割、立場,王の想い、私は何一つやっていなかった。
もし私が何かを変えていたら国の民もボブにように王を好きでいてくれただろうか?
そんな事を考える価値も自分に無かった事を思い出した。私はこの国前の王と同じだ。。。
ジュネはどんな人なんだろう?
毎日お仕えしていても見えなかったジュネを初めて知った。
「今日はここに泊まっていきなさい」ボブはそう言って家に案内してくれた。
家には妻や息子、息子の妻、その子供男の子二人女の子二人の総勢八人の大家族だった。
皆は暖かくクロエを迎えてくれた。夕方の麦畑は格別だと聞いてボブの孫たちと手を繋いで散歩に出かけた。
夕焼けに染まる麦畑は黄金色と夜の漆黒が混ざり合いまたジュネを思い出させた。
ピンクとオレンジの夕日を見ていたらボブの孫ステラとカレナがクロエに言った。
「女王様ですか?」クロエは微笑んで言った。
「ダメな女王でした。今は陛下のメイドのクロエです」と言ってカーテシーをした。
ステラとカレナは喜んで真似をした。
それが本当に可愛くてクロエは「麦畑のお姫様、ハグをしても宜しいでしょうか?」と聞いた。
ステラとカレナはわーと言いながらクロエに抱きついてきた。
こんな子供達を私は見てこなかったんだと胸が痛くなった。
何もしなかった罪の重さを感じた。
「ご飯ですよー」という声が聞こえてみんなで家に戻った。