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生きたいか死にたいか

クロエは全てを受け入れることにした。


全ての責任は女王である自分が背負うべきだ。


 身に覚えない罪であっても、その環境を作ったのは結果的に自分なのだ。だから認め受け入れる事にした。


「クロエ姫、自分の利益のみを考え国の財政を傾かせ、その罪を従兄弟であるオーロラ姫になすりつけた罪を認めますか?」


「……はい。」裁判に集まった貴族達はどよめいた。



 この国の女王クロエ姫が全ての罪を認めたのだ。



 

 無罪なのに。



 

「では判決を申し渡す。本来ならその罪の大きさにより一生禁固刑だが、慈悲深いオーロラ姫の温情により国外追放とする」


 こうして私は自分の国から追い出された。



 唯一所持しているのはボロボロのワンピースと靴、亡き母の形見である銀のネックレスだ。

 

 思い返してみると幼い頃から自分の意見や思いは無かった。


 いや無くした。楽しいことがあって声を出して喜ぶと「はしたない」と注意され、意見をいうと「黙って頷く度量をもて」と言われ、それでも思うことを伝えると「感情を出すな」といわれ、何も考えないことにした。



 なんでも「はい、わかりました、素晴らしいですね、私が決める事ではございません。お任せいたします」を言い続けて今がある。



 父である王が亡くなり、母が亡くなり、叔父に言われるがまま女王を行ってきた結果身に覚えのない罪をきせられ罪人となった。


 身に覚えはないけれど、それを招いた罪はあるので罪は罪だと思い認めたのだ。



 でもそれはそれでいいと思う。初めて自分で決めた事だったから、九月十二日はわたしの名誉ある罪人記念日に制定した。



 今まで一つもなかった記念日がこの先沢山出来るかもしれない。


 

 クロエは自由になった。



 

 王都を追い出されたクロエはとにかく南に移動しようと思った。


 南は暖かく南の国は豊だと聞いた。クロエの国は少し北寄りで冬は寒かった。


 それでも上質な宝石が取れている国だったので豊かではあったと思う。


 お飾りの女王だったので実際はわからないが。。


 


 道を歩いていると多くの騎士を連れた馬車が道の真ん中で停まっていた。


 馬車には紋章があり、カレナ国の紋章が入っていた。


 クロエの国よりカレナ国は小国であったがお金持ちの国だった。


 どうしてお金持ちだったのかはクロエは知らない。必要のない知識だった。


 

 何かあったのかな?


 と思い見つめていたが、突然、馬に乗った兵士達が現れ馬車を襲った。


 クロエは唖然として見ていた。



 その中で一際目立つ美しく長い黒髪の男が馬車の中にいた王らしき人間を引きずり下ろした。

 

「何者だ、命を助けてくれたら召し抱えてやる、財宝もお前にやるから命は助けてくれ!」

 

 王らしき人間は命乞いをしていた。



 その長い黒髪の男は少し考えているようだった。そこに男女四人の兵士も加わって王らしき男を見つめている。



 その隙にその王らしき男がクロエの方に逃げてきた。クロエはその展開に驚き動けずにいた。

 

 王らしき男はクロエの一歩手前で長い黒髪の男に捕まった。


 

「ジュネ、こいつしぶといな」


 黒髪の男の仲間の一人が言った。



「さっさと始末しようよ」兵士の女が言った。

 


 ジュネと呼ばれた黒髪の男は


「お前の国は俺がもらった」と言い、王らしき男の首を切った。

 

 その血がすざましい勢いで飛び散りクロエにもかかったが、驚くこともなくそれを見ていた。

 

 見慣れたその様子はクロエの日常だったからだ。



 クロエはワンピースの袖口で顔にかかった血を拭いそこを通り過ぎようとした。


「まて」兵士の男がクロエに声をかけた。


 クロエは止まった。


「ジュネ、どうする?」兵士の男が言った。

 

 「見られて困る訳じゃないけど?」兵士の女が言った。

 


 ジュネはクロエの前に来た。


クロエは彼を知っている。


 まだ女王だった時に他国の庭園で出会った美しい顔の騎士だ。

 

しかし今は罪人で身分も無いクロエは、このまま彼らに殺されてもそれが運命だと受け入れる気持ちがあった。


 覚悟を決めたクロエをみたジュネは


「クロエ、なぜ死ぬ覚悟をしている?」


不意に名前を呼ばれクロエは驚いた。まさか覚えていてくれた?

 

「……クロエ?」兵士の女がが言った。

 

 「ジュネ、クロエってルマージュ王国の王女と同じ名前だけど、?」


ジュネはクロエを見つめて微笑んでいる。

 

 ……「はい、今日女王から罪人になりましたクロエでございます」と答えた。

 

「女王が罪人?」兵士の女が言った。



 ジュネは笑っていた。



 その笑顔は美しく引き込まれるような金色の瞳から目が離せなかった。


ジュネはクロエを見つめながら言った。

 

「クロエ生きたいか?死にたいか?」


 クロエは初めてそんな事を言われた。


「生かしておいてやる、いつでも殺せる」ではなくこの美しいジュネは選ばせてくれるのだ。

 


「……ジュネ様、ありがとうございます。今日は初めて罪人になれました。もし許されるならばまだ知らない違う自分になってみたいと思います」と答えた。


「罪人になれた?!ジュネやっぱこの女王やばいって!」女兵士が言った。

 


 ジュネは「クロエがそう思うならなってみたらいい」と言った。


「この女王生き残れると思う?」他の女兵士が言った。

 



 「クロエは生き残るよ。またすぐに会えるさ、クロエまた会おう。」



 ジュネはそう言って王の首を無造作に袋に入れて馬に乗って何処かに去っていった。


 クロエは生き残ることができた。

 またジュネに会うことがあればどうして助けてくれたのか聞いてみようと思った。

 

 クロエはフーと息を吐き、南に向かって歩き始めた。

 

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