学校からの帰り道にて
小学校からの帰り道には、一軒の空き家があった。
ボロボロの空き家で、雨戸はずっと閉められて開いている事は一度も見たことがなかった。毎年、夏になると雑草がその空き家の塀に生い茂り、それでなくても、ドクダミの嫌な臭いが、ぷんとその空き家の周りには漂っているのが常であった。
だけども、その空き家と、隣家の塀の間にはちょうど、人が一人通れる程度の隙間があり、その隙間を通って少し行くと、空き家の塀に穴があった。屈むようにすると、その穴から空き家の敷地内に忍び込むことが出来た。そこに気が付いてからは、僕と友達の間では、そこの空き家を秘密基地のように扱っていた。
おそらく、僕も知らない同世代も同じように扱っていたように思う。
「なぁ、いつもの秘密基地行こうぜ」
友達のトモがそう言ってきた。あわせて、ヒロも行こう行こう、と声をかけてくる。
仲のいい二人にそう言われては、僕も断る理由もないので、帰りに寄る事を約束した。
その学校からの帰り道に、件の空き家へと僕たちは向かった。遠目から見ても、薄気味の悪いその空き家であったが、近くによると余計に薄気味悪い。道行く人も足早に歩いて通り過ぎようとしているのが、はっきりとわかった。
僕たちは、道に人気が無くなるまで様子を伺い、人気が途絶えたタイミングを見計らって、隙間へと入り込んだ。空き家と隣家の間を通り、ちょうど、中ほどにある塀の穴から空き家の敷地内へと足を踏み入れる。
「実は今日な、こういうの持ってきたんだよ」
ランドセルを下ろして、誰かが持ち込んでいる椅子に座って寛いでいた時、トモがそう言いながらと、小さなプラスチックの箱のようなものを取り出した。一体、なんなのだろうと、思って眺めていると、パタパタとパーツを広げると、小さなドローンになった。
「スマホで操作できるんだぜ。これで、あそこから中に入ってみようぜ」
トモがそう言って指さしたのは、玄関の上だ。玄関の上にあるガラス窓が破られており、そこにはちょうど隙間がぽっかりと空いている。流石に、僕達の間でも、この空き家の中に入ろう、というのは、躊躇いがあった。だけども、空き家の中がどうなっているのかというのが気になる気持ちもまた、存在した。
そこで、トモが目をつけたのはドローンだった。スマホで使える簡単なドローンで、内部を覗き見ようというのだ。
「大丈夫だって」
と、トモがいうに安心していたが、覚束ない操作でドローンを操作し始めると、途端に不安になった。
ヒロが貸せよと、横から操作していたスマホを奪うとより怪しい。
ふらふらとドローンは飛んで、なんとか空き家の玄関へと入っていった。
が、玄関に入ったと同時に、スマホの画像に乱れが生じた。もともと安い製品だったのだろう。少しの障害物で電波が届かなくなってしまったのだ。それから、程なくして、ドローンからスマホに送られてくる映像が途絶えてしまい、何かに当たって転がる音がした。
「やべぇよ、やべぇよ」
トモとヒロが見合わせて、不安そうな顔を互いに向ける。
まずいことになった。空き家の中に僕らのドローンがある。
僕はこのまま、放っておこう、と提案した。僕達の物だとバレる事はないと思ったからだ。
しかし、それにヒロが反対した。この手のドローンには番号が振られていて、それを辿って必ず誰が買ったかわかるという事、そして、それが人の家の敷地内で見つかったとなれば、ただでは済まない事をヒロは力強く語った。
トモも、弱々しく、それに同調した。
が、僕達三人を最も強く動かした動機は、トモが口にした
「親にバレたら」
と、いう言葉だった。
ドローンだって、そこら辺のコンビニで買えるものじゃない。
そこに親が気づいたら、そして、失くしたとでも言ったら、どうなるか。
考えたくもなかった。
「行こう」
僕は意を決して口にした。
誰かがいうのを待っていたように、僕たちは黙って立ちあがると、玄関扉に手をかけた。
鍵がかかっていると思っていたが、その予想に反してガララとガラス戸の玄関扉は横に動いた。
玄関から見える家の中の様子は、薄暗く、夕方だというのにまるで夜のようだった。埃っぽいような、カビっぽいような臭いが、鼻についた。長い間、人が入っていないというのは、廊下とかに積もった塵や埃からなんとなく感じ取れた。
携帯電話を懐中電灯の代わりに、廊下を進む。
「おかしくね?」
少し進んだ時、トモがポツリと言った。
「何が」
「だって、ドローンって玄関に入ってすぐに落ちたはずだよな。なのに、なんで、どこにもないんだ」
確かに、言うように、ドローンは玄関の辺りすぐでコントロールを失って落ちたように思う。
であるのに、玄関周りには何も落ちていない。何かにぶつかったという跡もなかった。
廊下を一歩、また、一歩と奥へと進む。
廊下の両側は、襖であり、その襖の紙は埃などで汚れていた。
「あった」
トモがそう声を出して、スマホで照らす。
そこには、廊下の中ほどにある電話台があった。電話台の傍らには、スマホのライトでもわかる、白いプラスチックの外装が見える。ドローンだ。それを拾い上げようとトモが近付き、屈みこんだ。が、動かなくなる。
「おい、どうしたんだよ」
「早く行こうぜ」
僕とヒロが近寄る。
トモが目を落としていたのは、ドローンではなかった。
電話台の脇、ちょうど、僕達からは見えない方に、一冊のノートが床に落ちていたのだ。
スマホのライトで照らされたそのノートには何か文字がびっしりと書かれていた。
助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助かったわ。サンキューTさん。
寺生まれはすごい。
僕はそう思った。




