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友人

作者: リトルムギ

 私の友人に、西田という男がいる。勉強をすれば40人中38位で、部活動では教えられたことをすぐに忘れる。日常生活でも嘘のようによくつまずき、声が大きかったりと、とにかくバカの要素を詰め込んでいて、周りからは天然と言われている。ただし、見た目は短めのくるりとした髪の毛に、細いフレームの横長メガネをしていて、私は数学が得意ですというオーラを放っているから賢く見える。気が付かない間にそんな見た目に騙されてか、私にはその友人が賢く見えるときさえある。今からするのは、それは本当に見た目だけなのか、本当は中身も賢いのではないかと思ってしまう、大バカ者の不思議な話だ。

 私は西田を含め4,5人とお風呂に入っていた。寮生活をしている私たちはいつもみんなでお風呂に入っている。だから下ネタの話も時折出てくるのだが、なぜか西田は絶対に下ネタを話さない。どれだけしつこく聞こうと自分のそういった類の話は微塵もしない。いつも聞いている側が折れて終わる。その時も、どうでも良いから、誰も興味がないことなのだから早く話せば良いと腹が立ってきていた。ただし、この時点で答えは出ている。そう、聞き手がどうでも良いと思っているから言わなくて正解なのだ。言ったところで、ふーんで終わるのだ。僕がみるに、彼はここまで計算している実に賢い男だ。自分の容姿、自分のキャラを熟知している。尊敬さえするレベルだ。ただ恥ずかしくて、下ネタが嫌いなだけと疑うかもしれないが、彼が好きな芸人は有吉だ。ラジオまで聞いている。やはり偶然ではないはずだ。

 彼は他にも、黒板に答えとは大それたことを書いて、体育の時間にはこけて怪我をして笑いをとっている。その姿は僕から見れば偽装天然としての決定的瞬間にも思えるのだが、好きなテレビ番組を聞くとM1と答え、嫌いな番組はイッテQと答えるあたりが、また僕の頭を悩ませる。

 ただし、この日ばかりは流石に偽装だと思える日があった。その日、私と西田は部活があるにもかかわらず部屋でぐっすりと眠っていた(私の学校は全寮制で、学校と寮が近いということもあり、部活までなどの隙間時間はいつも寝ている)。部活が始まって10分ほどが経っていただろうか、私と彼はようやく起きて時間を見るや否や大急ぎで準備をした。

「キャプテン部屋近いねんし起こしてくれよな」

という僕の発言に

「多分あいつも寝てる。寝てたらラッキーやな。部屋見てみるわ(顧問のいない僕たちの部活の最高権力者はキャプテンになっている)」

という元気な返事をして部屋を出た。そして

「寝てた。起こさずに行こう。これでもうこれから寝坊しても怒られへん」

というさらに元気な声を上げながら帰ってきた。駆け足でグランドに入るとやはりキャプテンはおらず、誰にも怒られることはなかった。平和な部活の始まりに、西田はぼりぼりと頭をかきながら、首をかしげ、口をぼんやりと開け言った。

「あれ?キャプテンは?」

あぁ不思議である。これ以上悩ませないでほしい。


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