66話 至福のひととき
第4の遺跡に侵入した俺達は、内部の石棺の中から宝物を発見。
トーマスの警護に付いた、カリナとアルマの帰還が未だだったために北ダンジョンでもやった"お約束″1人1品を行っていなかった。
北ダンジョンで宝物を見つけた時、俺は自分の手にしっくりきた十手に良く似た武器を選ぶ。ゼスは、高さ4~50cmの変な形をしたオブジェを選んだ。
風音は、数点の宝石やアクセサリーを袖口に放り込んでいたような…
今回も、カリナとアルマが戻り全員揃えば"お約束"をするのだという。
一晩明けて、朝食を済ませた俺達はもう1つの感知先に行くか話し合いとなる。
結論は、すぐに出た。
飲料水や食料の備蓄が、心許ないと理由から現状待機とし猶予は1日。
今日1日、カリナとアルマの帰りを待ち合流出来なければ明日の朝から連絡キャンプへと一時帰還する事になった。
―― 昼過ぎ
「やっぱ何人かで、テント張った辺りまで迎えに行かない? 」
「うむ… 置手紙をしてこればよかったのう わしとマリーで行くか」
風音とマリーの2人は、来た道を戻る。
第3遺跡の手前で、風音が複数名を感知した。
「風音様 カリナとアルマがこっちに向ってます! 」
マリーが大きな声を出し知らせる。古代指輪で確認したようだ。
第3遺跡のフロアーに足を踏み入れる風音とマリーに駆け寄ったカリナとアルマが合流した。
「「風音様! マリー! 」」
嬉しそうに声をかけてくるカリナ達。後を追うようにトーマスが合流。左の通路側には、トーマスが連れてきた冒険者達が手押し車で古代文献の運び出しを行っていた。
「かざねくん! 合流出来て良かった 他の皆は? 」
「皆無事じゃ カリナ、アルマ 警護ご苦労じゃった 一先ず説明じゃ」
……
「この先に、第4と第5の遺跡… 凄いじゃないか!? 」
「うむ 石畳の道を約30分歩くと崖に着く その下に遺跡が2つじゃ」
「遺跡の中は確認はしたのかね!? 」
「手前は進入して確認済みじゃ」
風音は、カリナ達を見てニヤリとすると話を続ける。
「出たぞ 財宝が! 」
「「「おおおぉぉ!! 」」」
「やったな! かざねくん」
「うむ それよりトーマス 水と食料は? 」
「もちろん持ってきた! ちょっと待ってくれ」
トーマスは、連れてきた冒険者達に指示を伝えて戻ってきた。
「とりあえず、古代文献は外に運び出して保管する かざね君達は第4遺跡で待って居てくれ 搬出が終わり次第合流する」
風音達は、トーマスを残し第4遺跡に戻る事にした。
―― 第4遺跡
「戻ったぞ」
「「「おかえりなさい! カリナ、アルマ おかえり! 」」」
俺達は合流したカリナとアルマを労う。
「カリナ アルマ お疲れ様」
「とりあえず中で休むといい」
ゼスが、カリナとアルマにお茶を入れる。
…
「さて、かざねさん そろそろ決めるかい? 」
ゼスが目を輝かせて言った。俺達の目も爛々としている。
「そうじゃのう… "お約束″の1人1品の時間じゃ!! 」
「「「よっしゃあー!! 」」」
カリナは、北ダンジョンで"お約束″の1人1品を知っていた為、皆と一緒に声を出して喜んでいたがアルマは何の事だか解らず、はしゃぐ皆をキョロキョロ見回していた。
「今回は、そうじゃのう… カリナ お前達が一番に選ぶといい」
「「「え!? いいんですか? 」」」
「良い良い わしらは後で良い お前達は色々頑張ってくれたからのう 北ダンジョンの護衛からここまで、よくやってくれた かまわんのう? ゼス」
「ああ! 俺達は最後でいい」
俺達は、フロアーの奥にあるステージの上に横たわっている石棺の中へ入る。
まさに、至福のひととき…
俺達は順に宝を手に取っていった。
「あまり目立つ物は止めておけ」
風音の一言で、今回の1人1品はアクセサリー系となった。どちらにしろ武具は少なく王都で新調したばかりの俺達は興味がなかった。
今回は、衣服の下に隠れる腕輪や首輪を選択。
俺も腕輪を選択してシャツの中に隠した。
ゼスと風音を見ると、ゼスがまた変なオブジェを手に取り風音に頼んでいる。
「頼むよ かざねさん 何時ものように袖口に」
「ふむ わしを荷物持ちにするとは えらくなったのう ゼス」
「勘弁してよ… かざねさん」
「まあ 良かろう 見つかったら元も子もないからのう よこせ」
風音は、ゼスが手渡した変なオブジェを袖口の中に入れる。
「みんな決まったら上がれ! 次ぎの遺跡に向う準備じゃ! 」
「「「おー!! 」」」
俺は見逃さなかった。
風音が涼しい顔をして2つ、3つ、と宝石を袖口に入れたのを…
俺の視線に気が付いた風音が、くるっと後ろを向いて石棺に手をかけて棺の外に出た。最後に残った俺は1枚の紙を見つける。
「何だろ みんな これ、何だと思う? 」
「「「どうした? なんだ? 」」」
何かを記した地図のようだった。
俺も棺から這い上がり風音に持っていてくれと頼んだ。
「何じゃろうな まあ良い 預かっておくか」
こうして、俺達の1人1品が終わった。
みんな、やりきった感で一杯だったと思う。このまま、帰宅しても良いくらいだった。寧ろ帰りたい、美味い物食いたい、風呂に入りたい、布団で寝たい…
30分ほど遅れて到着したトーマスは狂喜乱舞。石棺の中で宝石や硬貨を手に取り、鑑定レンズを胸から取り出し確認していた。
「トーマス わしらは後ろの遺跡に向かうからのう」
「かざねくん! ちょっと、待ってくれ わたしも同行するよ! 」
「まあ 後ろの建物だから すぐに合流は出来るからのう… 」
そう言って、俺達は遺跡を出て後ろの建物に回る。
トーマスは、手押し車を押して付いてきた冒険者達の1人に封印を施した1つの袋を渡した。中身は、石棺の中にあった古代通貨や宝石類が数点と1通の手紙であった。王都の学者、アレクシスを現地に呼ぶ内容を認めた。
「これをギルド本部長に 頼んだぞ! 」
冒険者は頷くと自身にバフをかけ、その場から走り去った。
▽▽▽
俺達は、後ろの遺跡に回り戦闘準備を始めていた。
「中に大きな反応が1つあるのう… 」
どうやら魔獣がいるようだ。
まあ、みんなと連携してサクッと終わらせるとしますか。
[[[ ちくしょう… こんなところに閉じ込めやがって… ]]]
えっ!? 禍々しい声が聞えてきた。
一体、誰の声なんだろう。
俺は、周りを見渡す。皆は戦闘準備中、風音やゼスも、さっきの声は聞こえていない様子だった。
[[[ 人間め… ここから出しやがれ!! ]]]
聞こえてきた、禍々しい声に反応したのは俺だけではなかった。
マリーが、目を瞑って下を向いた。
確認するためマリーに聞いた。
「マリー 聞こえたの? 」
「うん… たくやも? 」
「うん 何でだろ? 何か思い当る節はある? 」
俺達の様子に気付いて皆が集まる。
「わしには聞こえんかったが… 」
「俺にも聞こえなかったな」
風音とゼスが言う、続けてゼスが言った。
「もしかして、マリーがさっき身に付けたアクセサリーじゃないのか? 」
「腕輪? 」
マリーは袖を捲くり上げて腕輪を見せた。
マリーがしている腕輪は、俺がしている腕輪とそっくりだった。
「俺のと そっくりだよマリー」
「託也 ちょっと、わしに貸してみろ」
「マリー 俺にもちょっと貸してくれないか」
俺は風音に、マリーはゼスに腕輪を貸して様子を見ていた。
暫くするとゼスがビクッっとする。隣で風音が笑いだした。
「クックク 怒っているのう はっきりと聞こえたわ この腕輪、間違いない 中にいるヤツの会話を聞き取る事が出来るアイテムじゃ」
「ああ… かなり怒っているな ハッ… ハッハハ」
「上手くいけば戦闘はしないで済むかもしれん 託也、少しの間だけ貸しとけ」
貸すのは全然構わない。俺は風音に腕輪を預けた。
「どうじゃ マリー 中のヤツと契約してみんか? 途中まで話はしてやる どうする やってみるか? 」
「わ… わたしがですか!? …… 」
少し悩んでいたマリー 意を決したのか風音に向かい宣言する。
「風音様! やってみます 途中までお願いします! 」
「おおっ 良く言ったぞマリー 頑張るんじゃぞ」
「はい! 」
こうして、中にいる魔獣と戦闘する予定から風音の呼びかけ、マリーとの契約に変更となったがスムーズに事が運ぶかは… 風音の話次第かもしれない。




