61話 鵺
俺達は、本部からの依頼で地下遺跡の調査に乗り出していた。
以前、特務機関が調査に入ったが多大な被害が出た為に地下遺跡の情報は隠蔽されていたのだ。
しかし、研究が先に進まない現状を打破しようと北ダンジョンを攻略した、風音率いる俺達メイドスの冒険者パーティーに白羽の矢が立った。
新たに、メンバーに加わったヴェロニカを含めたトーマスと俺達。10名での調査となり期間は3日間となっていた。最優先課題は特務に多大な損害を与えたといわれる魔獣の討伐であった。
今、まさに魔獣が待ち構える第2の遺跡前で戦闘の準備に入っていた。
「少し説明しておこう」
トーマスが話し始めた。
「説明したと思うが、以前の調査で特務機関に被害が出た為 この遺跡を封印魔法で結界を張ってある 中に居る魔獣が、表に出て来れないようにするためのものなんだが こちらから中に行く事は出来る」
「一体、どうやって出ればいいんじゃ? 」
風音が質問した。トーマスは、もしもの為に遺跡の外で1名を待機させ封印が出来るようにしておきたいと言う。
「ふむ 封印は、どんな封印を使っておるんじゃ? 」
「4方封印だよ 遺跡の4隅にマジックアイテムが貼ってある」
俺達は遺跡の近くまで行き確認した。
「ああ これだな トーマスさん、わかった 確認できた」
「解除は1ヵ所だけで問題無い 解除後は新たな封印を張るため新しいマジックアイテムを3箇所貼って最後の1枚を貼らずに待機して欲しいんだ」
「これは… 経験者が待機してたほうがいいな」
「その通りだ ゼスくん 頼めるか? 」
「頼んだぞ ゼス」
「わかった… 俺が待機しよう 何かあった場合は全員退避 その後に封印でいいのか? トーマスさん」
「そうだ 魔獣を表に出す訳にはいかないからね… 」
「よし! 戦闘準備じゃ 各自支度せえ!! 」
「「「了解!! 」」」
俺は先日、風音に買ってもらった小手を腕に嵌めて意気揚々と遺跡の入り口に行こうとした時だった。
「ストップ! 待って! … 下さい」
ヴェロニカが俺達を制止する。
「バフを、かけますから まだ入らないで下さい」
ヴェロニカが呪文を唱えた。
「ブレスウォール! 」
各自に、ビショップスキル ブレスウォールがかかっていく。このスキル効果は物理攻撃を5回無効化し持続時間10分という優れものだった。初めての支援魔法に嬉しさを隠せなかった。
「ヴェロニカ ありがとう!! 」
「いえいえ、もう1つかけます ヘイスト! 」
ビショップの下位職、アコライトスキルだが有能なスキルだ。5分間、移動速度、攻撃速度上昇という効果を得られるのだ。
「ヴェロニカ 後方から支援じゃ アルマ ライジュウを出しておけ」
「「了解! 」」
「アルマ ライジュウはランタン代わりじゃ ゼス! 解除じゃ!! 」
「「了解!! 」」
ゼスが、遺跡の封印をマジックアイテムで解除した。
「行くぞ! 」
風音を、先頭に遺跡に侵入。
フロアーの中央を闊歩する影が見えた。
アルマのライジュウが、その影と距離を詰めながら近づいて行く。
ライジュウの放つ放電を嫌っているのかライジュウと一定の距離を保っている影の姿が露になった。
「こやつは… 」
風音は、一瞬躊躇った様子だったが話を続けた。
「こやつは鵺じゃ… 何故、こんなところにおるんじゃ!? 」
風音が鵺と言った、魔獣の容姿は第1の遺跡に建てられていた最初の銅像とそっくりだった。だが、顔が違う。銅像はネコ科の顔かなと思っていたが猿のような顔をしている。
隣に居た俺が質問した。
「鵺って、妖怪のぬえ!? なんで この世界にいるんだ? 」
「わからん… 少し待て会話が通じるか試してみる 皆、ここで待機じゃ」
俺達は待機し、風音はランタンを片手に、少しずつ距離を詰めていった。
「ふむ… お前、鵺じゃな? わしの話が解るか? 」
話は、通じないようだ。牙を剥いて威嚇する鵺。
なんの返答もないと風音は言った。
風音は、鵺に向かって歩き出した。
パンッ
鵺の、後ろ足が破裂した。風音が放った風穴だった。
鵺は、けたたましい雄叫びを上げて風音に飛び掛る。
動作が大きい鵺を軽く回避する風音。
俺達は即座に鵺を取り囲むと横から攻撃を仕掛けた。
アルマが火炎系魔法 ファイヤーボルトを放つ。ダメージは受けている様子だが効果が薄そうだ。
後方からカリナが飛び込んだ。しかし、カリナが近づくより先に鵺の尾である蛇が口を開け噛みつかれそうになる直前で回避。再び、距離を取るカリナ。
俺は、距離を取りながら風穴を顔や目を狙い打ち続け動きを止める。
ここでヴェロニカが鵺にスキル スロウを放つ。スキルを、あてられた対象の動きを1分間半減させるものだった。
チャンスとばかりに、近接職のダムとカーベルが打って出た。
カーベルのスキル ラッシュアタックとダムのダッシュインパクトが前足に炸裂した。直後の、腕風穴で前足を完全に封じた俺達。
カリナは、尾の蛇を狙い後方へ再び回る。
動きが鈍くなっている蛇に対して、加速上昇中であるカリナの動きに付いて来れる訳もなく、あっさりと蛇は切り刻まれた。
風音が、腕を上げて指を鳴らした。鵺の首に風穴3連発。
内部で破裂していく音がする。
ボンッ ボンッ ボンッッ!
鵺の頭が、ボトリと床に落ちると同時に体も横から倒れこんだ。
ドスーン
キングタイガーより、少し大きめの体がピクリとも動かなくなった。
俺は、魔石を取り出そうと十手で腹を開こうとした時だった。
ジリジリジジジ ジリジリジリ…
鵺の死体から、黒い煙のようなものが出だした。
用心して距離を取る俺達。
「魔獣ではないようだのう… 」
「どういうことだろう」
暫くすると、鵺の姿は無くなってしまった。
「ここで休憩するとしよう 託也 相方を出しておけ」
風音は俺に、不測の事態に備えてバジリスクを出しておけと指示する。風音自身も白蛇の依代を出して巨大化させておく。風音が言うには、恐らく魔獣ではないので復活して現れないだろうと言った。
「ゼス 飯にするか みんな休憩じゃ」
「わかった カリナ手伝ってくれるか? 」
「もちろん! 」
「やはり、かざねくんは倒したか… 」
「ん!? どうしたんじゃ トーマス? 」
「いや… やるだろうとは思っていたけど 改めて、かざねくんの凄さが解ったよ ハッハ… 」
「今更じゃな」
風音は、煙管を取り出し煙草を吸いだした。
「それにしてもヴェロニカ 中々、良い魔法を持っているではないか」
「あ… ありがとうございます! 」
ヴェロニカは、ゼスの横で食事の手伝いをしていた。
「ほんとだよ ブレスウォールだっけ? いい魔法だよね」
「ああ 接近職には、ありがたい魔法だぞ」
「あたし達にも、ありがたいですよ! 保険の意味でも」
「うんうん! 」
兎も角、特務機関に多大な損害を与えた鵺の討伐は負傷者を出す事なく終了した。最優先課題の、クリアーとなった訳だが…
次の戦いに備えて暫しの休憩だ。




