60話 地下遺跡
明日の朝から地下遺跡。
やる事は解っていた。
各部屋を進み、魔獣を倒していき特務が行き付けなかった先を目指す。
俺達には、風音が付いている。これ以上なく心強いし安心する。
宿屋の部屋に招かれたヴェロニカが下を向き座っている。そんな様子を見ていた風音が質問をしだした。
「ヴェロニカ お前はゼスと分かれて何をしていたんじゃ? 」
「トロレスで、魔石狩りの臨時パーティーに参加して生活していました」
「臨時パーティーとは? 」
「その場限りのパーティーです みなさんの様に、共同生活する訳でもなく魔石狩りだけの付き合いです」
「… 」
「少し隣の部屋におるから誰も来るでないぞ ヴェロニカこい」
風音が、ヴェロニカを連れて隣の部屋へ移動した。
「大丈夫かな あの子… 」
カーベルが、心配そうに言った。
「大丈夫さ」
俺はカーベルに、そう答えた。
風音は、みんなが思っている以上に優しいからね…
突然、ゼスが立ち上がる。
「酒とつまみ買ってくる… 」
「あ 俺、行ってこようか? 」
「大丈夫だ たくや サンキュー」
そう言って部屋を出ていった。
▽▽▽
隣の部屋で、ソファーに座る風音とヴェロニカ。
「お前は、何故 ゼスに拘る? 」
「… 」
「答えられんのか? 」
「ゼスは… ゼスは、わたしの話を聞いてくれました」
「ゼスじゃなくても話くらい誰でも聞くじゃろ? 」
「いえ… ゼスは、わたしの遺跡の話や… ダンジョンの話を最後まで真剣に聞いてくれました。 初めてだったんです… 」
「… 」
「遺跡やダンジョンの話で、真剣に意見交換したり情報を共有できたのは初めてだったんです… この人と、ずっと居たい そして、何時か一緒にダンジョンを攻略したいって… 」
「はぁ… そうは言ってものう すでにゼスは、わしの家族じゃ」
「お… お願いします ゼスと一緒に居させて下さい。」
「ゼス! そこに居るんじゃろ? こう言ってるがどうするんじゃ? 」
ガチャ
ドアが開き、部屋の中にゼスが入る。
「ヴェロニカ… 俺は、かざねさんと… あいつらと一緒に居たいんだ このメンバーなら、楽しく、面白い、今まで見た事の無い景色が見れるかもしれないんだ… 俺の全てを賭けているんだ すまないな… ここを抜けてお前とダンジョンや遺跡を回るつもりは無いんだ」
「うっ… ううっ」
下を向き、小さな声で泣き出すヴェロニカ。帽子を深く被るゼス。風音はヴェロニカをチラチラ見て何かを言いたそうにしている。
「そんなに一緒に居たいなら居ればいいじゃん」
「託也!? 」
「たくや!? 」
俺は、部屋の中に入っていった。
「どうなっているか様子見にきたら 案の定って感じだし 何か、みんな難しく考えてない? 」
「そうは言ってものう… 」
「ねえ、ヴェロニカはゼスの兄貴以外の人が居たら駄目なの? 」
「ううん… そんな事ないです ゼスと一緒なら… 」
「たくや!? 」
「みんなと共同生活出来る? うちは特訓もあるから結構きついよ? 」
「居れるなら… 一緒に居れるならやります! 」
「「「「決まりですね!! 」」」」
「お前達!? なんじゃ! 来るなと言ったじゃろう」
みんなが部屋に入って来た。
「私達は知っていますから 風音様が、こんな女の子を放り投げる訳ないですからね」
「うんうん! 」
「フン 時と場合によるわ! 皆で、色々教えてやれ」
「「「「はい! 」」」」
「俺は、託也 よろしくね ヴェロニカ」
「よろしくお願いします! 」
「あ 敬語はいいよ たくやでいいし」
みんなが自己紹介をはじめた。
風音もゼスも、少しだけ安堵の表情を零す。
今更、1人や2人増えたところで変わらない。
ヴェロニカとは、これからの付き合いで本物の仲間になれば良いだけだ。
―― 次の日 早朝
ダムが、馬繋場から馬車を取りに行く。
みんなも起きて準備に入る。
俺は、ダムに宿屋の前に馬車を止めてもらい昨日買った大形テントや寝袋を荷台に積んでいく。
昨夜、部屋に泊まったヴェロニカも一緒だ。
「よし行くぞ」
俺達は、馬車に乗り込みトーマスと待ち合わせの南門出口で待機する。
トーマスはすぐにやってきた。本部の馬車だろうか、冒険者が3人ほど乗っていた。
「トーマス 先導じゃ わしらは後ろから着いていく」
「了解だ かざねくん! 」
トーマス達の馬車が走り出す。
それに、後を付いて行く俺達の大型馬車。
馬車は南下して行く。すでに、湖は見えているが湖畔をぐるりと回る街道に出て東に向かう。
王都の南門から約1時間ちょっと… トーマス達の馬車が徐行をはじめた。
トーマスが、荷台から顔を出して位置の確認をしている。馬車が停車した。
「ここに付けて入れ ここで連絡キャンプを張る」
トーマスが俺達に叫んだ。言われた通り、馬車を操縦するダムが馬車を止めた。荷物を降ろしテント張りの手伝いをする俺達。
ここで、本部の若い冒険者達が俺達の噂を始めた。
「こ… この人達だろ? 今回の優勝都市の」
「ああ… この間は北ダンジョンも攻略したらしい」
「お… 俺 試合見たよ… あの、ちっさい人 ヤバすぎるよ… 」
小声で話しているが聞えてしまう。『ちっさい人』は風音の事だろう。確かに、その認識で間違いないと思う。
「トーマスさん ロープは用意してあるのか? 」
「ああ 縄梯子を用意してある ここから降りるのに使ってくれ」
「了解 みんな! 縄梯子があるから荷物をこっちに移動だ」
「「「了解」」」
テキパキとゼスが指示を出す。
先に1本のロープを垂らすと風音がスルスルっと落ちていく。
足場に辿り着いた風音が下から指示を出す。
「荷物をロープで降ろせ」
俺達は、バッグや袋に荷物を詰めロープに結んで次々と降ろしていった。
風音が、下で受け取りロープの結び目を解いていく。
「風音様 変わります」
カリナが、風音の元へ降りると仕事を変わると交代する。
「カリナー これで終わり」
「了解」
俺達は、縄梯子を使い足場まで降りると荷物を持ち移動を開始する。
「あそこのようじゃな」
地下遺跡の入り口は、すでに足場から見えていた。
風音が先行して入り口に辿り着く。
地下遺跡の入り口は、崖の中腹にあり上から見ただけでは解りづらい場所にある。俺達が、荷物を降ろした足場と呼ばれる場所から約50mほど北へ移動すると入り口が現れた。
「ふぅ… ここが地下遺跡の入り口だ」
トーマスが、汗を垂らしながら言った。
入り口から、約10分歩くと初めの遺跡が現れるらしい。そこを抜け、更に地下に続く通路を辿ると2つ目の遺跡が現れると言った。そこが今回の第一関門、強力な魔獣が存在するという。
「でわ 行ってみるかのう」
風音が、地下遺跡の入り口に足を踏み入れるとヴェロニカがスキルを発動した。ビショップスキル ライトボールだった。アコライトの場合だと、ライトボールは術者の頭から1~2m高い位置で約15分間、光の玉が浮遊して辺りを照らしてくれるスキルらしい。
だが、アコライトの上位職であるビショップのライトボールは光の玉を3つ浮遊させ持続時間も約30分と強化されている。正直、松明やランタンなど不要だった。
洞窟の中に入って、俺達の目に飛び込んできた風景は天井までの高さが床から5mくらいの空間だった。足元には、石畳が敷かれ辿って行くと初めの遺跡に着くとトーマスは説明した。壁は、剥き出しになっている地層であった。
「ヴェロニカ わしの後ろに付け」
「はい! 」
ヴェロニカは、風音のすぐ後ろに付き辺りを照らした。
約10分経った頃…
「あれじゃな… 1つ目の遺跡とは」
通路の両サイドには、人の手が加えたと解る巨大な柱が数本立ち並んでいる。
綺麗な螺旋を描いた模様が柱に彫られている。
「す… 凄いな これは… 」
ゼスが、目を輝かせ柱をランタンで照らす。
その様子を、ヴェロニカが見てソワソワしだした。
ライトボールは、ヴェロニカの頭を起点に展開しているため動く度に光の範囲が変わってしまう。異変に気が付いた風音が言う。
「ゼス 先に進むぞ 帰りにゆっくり見ていけ」
「あ… ああ わかった」
俺達は、最初の遺跡に辿り着いた。ここに魔獣は存在しない。
壁には、様々な彫刻が刻まれていた。そして、遺跡の内部に3体の銅像が飾られていた。一番手前には、見た事も無い… 動物だろうか? 尾が蛇、体は大きな獅子のような… 顔はネコ科のような感じだった。
2番目に飾られていたのは鳥。羽を広げて侵入者を威嚇するような…
最後の銅像は分かり易い。体毛が多い犬、または狼であろう。
俺達は、銅像を眺めながら奥に見える地下への入り口に到着すると、ゆっくり通路を降りていった。
そこは、スロープになっていて段差はあるものの階段らしいものは無かった。緩やかな下り坂を、螺旋を描くように降りて行く。すると、アルマが突然スキルを唱えた。
「ライジュウ! 」
ライジュウとは、ハイウィザードスキルで具現化魔法。雷を纏った2匹の犬のような物体が現れた。放電系攻撃魔法だが光を放つため利用できると考えたアルマがスキルを使用したのだった。
光を放つライジュウ2匹は、風音の先を走り抜けると螺旋スロープの終着地点で待機している。上からライトボールの光と、下からライジュウの放電した光で一層、視界が良くなった。
「ふむ… あそこじゃな いるのう 1つ大きいのが… 」
「ああ 何かいるな」
螺旋スロープを下って行く俺達は第2の遺跡を確認する。すでに、風音とゼスは感知した様子だ。凶暴な魔獣だろうか…




