58話 セーラー服とワンピース
特設闘技場を出る前に、待機室で着替えをする風音。真っ白い着物から濃紺の落ち着いた着物に着替えて面を外す。俺達にも面を外して構わないと言う。
煙草を吸いながら、表に出るとトーマスと支部長ブライトが出迎える。
「ご苦労さん かざねくん」
「どうしたんじゃ? 2人とも」
「ありがとう みんな… メイドスの初優勝だ 感動したよ」
支部長ブライトが、風音や俺達に深く頭を下げた。
「何を大袈裟な… 支部長、頭を上げよ」
「かざねくん かなり手を抜いたのは解っているよ だが、力量の差は歴然。カテリーナも、今回は判断を間違わなかったようだ ありがとう… 」
「それはあやつの判断じゃろ わしには関係ない まあ、本部長が助言をしたとも考えられるが 真意はカテリーナ本人にでも聞くと良い」
風音が、とりあえず飯でも食いに行こうとトーマスとブライトを誘い食堂にいく事にした。
臨時屋台を抜けて、王都の街につくと食堂に入った。
今回、入った食堂はギルド上層部の会議に使われたり国の役人が使用する事の多い個室完備の食堂だった。
内装も、凝っていて冒険者や商人を対象にした食堂とは明らかに違った。
「かざねくん ここは、わたしに奢らせてくれないか」
支部長ブライトが言う。
「なんじゃ? どうしたんじゃ支部長」
「今日も、なんだが 昨日と今日でちょっばかりの収入があったからね」
「『税杯』くじか!? 今日も買ったのか? 」
「もちろんさ 君達の勝ちは揺るがないと解っているからね ハッハハ」
「フン わしらで金儲けとは 抜け目なくなってきたのう 支部長」
「ハッハハハ」
「クッククク」
何やら風音と支部長が笑っていた。そんな事言ったら、ここにいる全員が金貨450枚儲けているんだけどね。
俺達も、2人の笑い声に釣られて顔がにやけていく。
「ここを使おう」
トーマスが、個室のドアを開いて俺達を招き入れる。
中に、通されると1つの大きな丸テーブルの回りに椅子が配置されていた。
「好きなところに座ってくれ」
トーマスは、そう言うとドアを閉めて四方の壁に紙のマジックアイテムを貼り付けていく。
「何をしておる? 」
「あれは、鍛治スキル『防音』だ ブラックスミスのスキルさ 音が漏れないようになるんだよ 本来の使い方は、鍛治作業が何処でも出来たりする為の補助スキルなんだが、密談等に使われるようになったんだ」
「ほほう たいしたもんじゃのう」
マジックアイテムを貼り終ったトーマスが席に着く。
「これで、ここでの会話は外には漏れないよ 安心して騒げる」
「まあ 特に聞かれちゃ困る話なんぞ 例の件以外無いしのう」
「それだよ かざねくん その例の件の話もしたくてね」
「なるほど… で? 」
「出発の日を、まずは決めて 何日間、潜るか予定を組みたい」
「そうか… 式は明日じゃったな? ゼス」
「ああ 明日、税杯の表彰式になっていたはずだ 誰でもいいんだけどな 参加者は どうせ優勝カップみたいなのを貰うだけだし」
「なら、支部長にでも行ってもらうかのう」
「わたし!? いいのか? 」
「かまわんかまわん どうせギルド支部に飾るんじゃろ? そのまま、持って帰るがいい」
「わかった わたしが代行で受け取っとく」
コンコン
「お食事をお持ちしました。 ドアの解錠をお願い致します。」
「ほいほい 今、開けるよ」
トーマスが、ドアを開けるとワゴンに乗った食事が運び込まれる。
丸々とした鳥の姿焼きをはじめ、兎の燻製、イノシシの生ハム、羊のチーズとボリュームたっぷりの料理が、所狭しとテーブルを埋め尽くす。
「たくさん食えよ なんせ支部長の奢りじゃ クックク」
「「「「いただきまーす!」」」」
俺達は、自分の好きな物を取り小皿に分け食べはじめる。
チーズ… 久し振りだな。イノシシの生ハムと一緒に食べたら美味そうだ。
俺は、薄く切られたイノシシの生ハムと羊のチーズを一緒に口へ運ぶ。
うん… うんうん! 美味い! 生ハムの塩っけとチーズの円やかさが口の中で混ざり合い、噛みながら風味を味わった。
「では、御用があれば御呼び着け下さい。」
「はい ありがとう」
トーマスは、出て行く女中さんに礼を言うとドアを閉めた。
「まずは、明日1日は休みじゃ 皆も休みたいじゃろ? 」
「「「「はい! 」」」」
俺達は、飯を食らいながら返事をする。
「明後日、から動こうではないか どうじゃ? トーマス」
「了解した」
「それと、黒蓮達の世話はちゃんとしているのか? 」
「ああ もちろんだ ギルドの新人に数日間の依頼として受けてもらっている 問題ないよ かざねくん」
「まあ それなら良いが 支部長 式に出るついでに、金も貰っといてくれんかのう 大変か? 」
「いや、そんな事は無い 『ディオルド硬貨』と金貨5,000枚だから かざねくんに金貨4,000枚を本部で貯金というのが良いかな 金貨1,000枚をうちの支部に返してもらう形が一番荷物にならないかもしれないな」
「出来るのか? 」
「ああ かざねくんの残高を引き出しは出来ないが振り込む事は可能だ」
「そうしといてもらうか… しかし、危険じゃな 支部長1人では」
「うむ… すまないが 襲われたら守りきる自信がない… 」
「護衛依頼を出すのも 馬鹿らしいからのう… 支部長 やはり、わし等が運ぶのが一番安全じゃ わし等が戻るまで金は動かすな」
「わ… わかった そうするよ かざねくん」
「こうやって、人が集まってきておる期間じゃ 良くない者も紛れている可能性も捨て切れん 安全策を取る事にするぞ」
「それと かざねくん 言いにくいんだが… もう少し目立たない服は用意できないか? かざねくんの着物は、とにかく目立ってしまって… 」
「フン 何を着れと言うのじゃ」
「普通に庶民が着ているような かな? 」
「そんなの知るか! うーん それならこういうのはどうじゃ? 」
風音が、肩に手を添えて目を瞑る。
見る見るうちに着物からセーラー服になった。
「どうじゃ? 」
「ぶっ! 」
思わず吹いてしまった。風音が顔を真っ赤にして怒り出した。
「託也!! 今、笑ったな!? 笑ったなー! 」
「だって、セーラー服は無いでしょ ぷぷっ」
「じゃあ 何ならいいんじゃ! 着物以外わしは知らんのじゃ!! 」
「普通にワンピースでいいんじゃない? 解るよね? 」
「ふむ… しかし、わしはどうも洋服があまり似合わないからのう… 」
「大丈夫だよ 風音は可愛いもの」
「そ… そこまでいうのなら ワンピースとやらを着てみるかの」
(((天然ジゴロかよ たくや!! )))
風音は、白黒のストライプのワンピースに白いパンプスに履き替えた。
「どうじゃ… 」
「うん 可愛いよ やっぱり似合うと思った」
風音は、頬を赤く染める。
「そ… そうか? なあ ゼス お前もそう思うか? 」
「あ… か… 可愛いよ かざねさん」
ゼスが、顔真っ赤に風音を褒める。みんなも可愛い風音にうっとりしていた。特にカリナが…
「風音様… か… 可愛いです」
だらしない顔で呟いている。
俺達は、風音を見ながら飯の続きを開始した。
明日は、オフだ。自由行動ではあるが、単独行動の禁止と古代指輪は嵌めていけとの事だった。さて、何処に行くかな…




