52話 本当の目的
俺達は、特設闘技場を出ようとすると参加者専用入り口に、支部長ブライトとトーマスが俺達の退場を待っていた。
「「かざねさくん!! 」」
「ん? どうした 支部長にトーマス」
「どうしたかじゃないよ! 心配したぞ ゼスは、どうなったんだ!? 」
「なんだ? 支部長 俺が、どうかしたか? 」
後ろから、歩いてきたゼスがブライトに返事をする。
「なっ!? ゼス お前、大丈夫なのか!? 」
「だから何がだよ 支部長? 」
風音がフォローを入れる。
「支部長 ゼスは、意識が飛んで事の前後の記憶が欠落しておる これから飯でも食いながら説明するつもりなんじゃ 大丈夫じゃ ゼスの怪我は感知しておるから心配するな」
「そうか… それならいい」
支部長とトーマスは、ほっと胸を撫で下ろした。
「みんなも、怪我はしてないか? 」
トーマスが俺達の心配をした。
「はい 何ともないですよ なんか、拍子抜けって感じ」
「だよね 冒険者ランク AとBが攻撃に回っていた感じなのかしら」
「そうかもしれない あまり手応えがなかったよな」
実際、誰一人として負傷もせず淡々と攻撃部隊の排除を行ったのだ。
風音も、当然だと笑い飛ばす。
「クックク 当たり前じゃ お前達の実力はSランク相当だからのう」
「それより、かざねくん… 」
「なんじゃ? 支部長」
「言われた通り買ったよ 『税杯』くじ… 金貨300枚になったよ! 」
「良かったではないか! むむっ わしらも換金していくか」
「「「「「 おー!! 」」」」」
こうして、俺達は自分達に賭けた『税杯』くじを換金して各自、金貨300枚を手にしたのだった。決勝もメイドスに賭けて儲けよう。
その前に、第3試合の倍率は… んー マリルとアーデラルか。
150名のマリル 2と150名のアーデラル 4
マリルのSランク冒険者15名!? 随分いるみたいだ。アーデラルはSランク10名か、後はAとBが均等に参加しているみたいだけど… 何故、ここまで倍率が違うのかが判らなかった。
「どうした? 託也」
参考誌を眺めている俺に、ゼスが声をかけて来た。
「第3試合なんだけど… 同格に思えるんだけど倍率が倍違うでしょ? 」
「ああ なるほどな マリルには有名な魔獣召喚士がいるんだよ。」
「有名な魔獣召喚士… 」
「契約魔獣が、島ダンジョンにしか生息していない凶暴な魔獣を使役しているのさ まあ、説明するより試合を観戦した方が早いな」
「ほほう 面白そうじゃのう」
「あ 聞こえたか かざねさん 屋台で食い物でも買って観戦するか」
臨時屋台で、食料を買い込むと闘技場の席に座り第3試合を観戦する事にした。もちろん『税杯』くじを、皆が購入していた。
ガツガツと、串に刺さった肉や野菜を食べる俺達。中でも、ゼスの食欲が異常に感じた。普段は、食が細いイメージだったはずのゼス。
今は、黙って串に喰らいついている。
ふと、端に座るカリナを見ると食べてはいるが元気がない。席を立ち上がり、カリナの横へ移動する。
「どうしたの? 元気無さそうだけど」
「たくや… 1回戦で全然、活躍出来なかったのが悔しくて」
「ああ… あれはカリナじゃなくてもしょうがないさ」
自分の不甲斐無さを、責めていたカリナ。しかし、あの条件化では思うように動きが取れなかったのだ。
試合直後、カリナの透明化を敵に見せないように防衛部隊の俺達が、盾となりカリナの透明化を手伝った。左サイドをせめていく予定だったカリナだったが中央ラインを過ぎたところでゼスに4体のヘルドックを噛ませたネビルの手下である魔獣召喚士が張っていたのだ。
用意していた匂い袋を使った時点で、アサシンがいる事を悟らせてしまうため使えなかったのだ。混戦状態で他の者が匂い袋を使えば、まだ良かったのだろう。今回の反省すべき点だ。中央から先に、動けなくなったカリナは突破を断念して守りに回っていたのだ。
「でも、カリナが手伝ってくれたおかげで防衛は楽になったはずだよ」
「そうかなあ… 」
「うん、それにまだ明日試合あるんだ カリナなら活躍出来るさ」
「うん そうだよね まだ、明日ある! 挽回出来る! 」
カリナは、少し悩みやすい体質なのだろうか 誰かが見ててやらないと、いけない気がした。戦闘スキルも、俺より上なのに自分に自信を持てない部分を感じる。俺達より繊細なのかもしれない。
「たくや! 次、どこに賭けたんだ? 」
「マリルだよ カーベルは? 」
「俺も! 倍率低いけど負けるよりいいじゃん! 」
カーベルが話しかけて来た。
1回戦のカーベルは良い働きをしていた。
風音が初っ端に放った氷穴で40名いた冒険者達を30名にしてくれたのだから対処が楽になった。
カーベルは初め、突きと蹴りのコンポを巧みに使い数人相手に押し上げていく。相手の援軍が増えると防衛ラインまで下がって俺達味方の援護を受けて再び押し返す。我武者羅に突っ込んでいくタイプに見えるが全然違った。
アルマの、魔法効果が届く位置まで下がってくるところを見ると以前から連係プレーを得意としていたのだろう。
マリーも然り。
ペロとのコンビネーションが抜群であった。下がってきたカーベルの援護に入るとペロが吼える。ペロに気付いた、冒険者が目を逸らした瞬間にダムの一撃。ダムが戦闘に参加してる間に、カーベルはポーションを飲み傷を癒していた。無駄の無い動きで正直驚いてしまった。
「なあなあ たくや! 明日も金貨300枚になるかな? 」
「ならないと思うよ 今回は倍率が10だったから 明日は少し下がるよ」
「そうなのか… でも、また自分達に賭ければ儲かるよな!? 」
「うん そこは間違いないよ」
「俺さ こんな大金持つのはじめてなんだよ へっへ」
カーベルは、陽気で素直だ。風音もカーベルの事が、可愛いのか良く頭を撫でている。
ただ、思った事を空気も読まずにペロッと話してしまうのは治したほうが良いと思うぞ、カーベル
「かざねくん… 聞きたい事があるんだ」
「ん? どうしたんじゃ トーマス」
あちらでは、肉に喰らいつく風音にトーマスが聞きたい事があるらしい。
「君の魔法だよ… あんなのは見た事がないよ」
「氷穴の事かのう そりゃそうじゃ そもそも、認識が間違っておる」
「認識? 」
「魔法ではない わしの使っている術は通力と呼ばれるものじゃ」
「通力… 」
「そうじゃ わししか使えん 考えても無理じゃぞ」
「そうか… わたしらでも使えるなら面白いと思ったんだが駄目か」
「クックク まあ、そんなに落ち込むな ほれ 串を食べろ」
袋から串を取り出し、トーマスに与える風音。
「かざねさん 俺も聞きたい事があるんだけど」
「うむ 説明か? 」
「ああ」
「今は、止めておこう… 宿でゆっくりと話そうではないか」
「ああ… わかった」
「フン… 今度は、なんじゃ? 次から次へと忙しいのう」
誰に言ったのだろう、風音が言い出した。
「まあ そんなに、邪険にしないで欲しいんだが… 」
俺達は振り返った。風音の後ろに、ギルド本部長アドルフが座っていた。
「命を落とした者はいないが… 相当数の冒険者が引退だ」
「そうか… それは、しょうがないであろう」
「確かにそうだ 自己申告で退場も出来るルールもある」
「うむ そういう事じゃ」
「今回の目的は? 何故、数名にだけ目を攻撃した? 」
「たまたまじゃのう」
「たまたまか… 今回は、そういう事にしておこう」
「うむ そういう事にしとけ」
アドルフは立ち上がると、その場を後にした。




