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暴君少女 風音-最凶不死者-  作者: きーぱー
都市税争奪対抗戦編
45/66

45話 冷たい視線


 古代指輪で、風音の位置を確認したカリナ達。

 間近に近づくと、そこはメイドスから王都に警護依頼を受け、買い物をした日に立ち寄った釣具屋であった。風音達が釣竿を見ていた。


 「ゼス これなんかどうじゃ? 」

 「短いな 長竿のほうが良いと思うんだが」

 「そうか ならこっちかのう」


 カリナ達が釣具屋で合流した。走ってきたのか、少々息を切らしている。


 「風… 風音様! 」

 「おっ どうしたんじゃ お前達? 買い物は済んだのか? 」

 「ハァハァ… じ 実は早く伝えておこうと思いまして」

 「なんじゃ… 何があった? 」


 風音もカリナ達の様子に異変を感じ、選んでいた竿を元の場所に置くと場所を変えて話を聞く事にした。店を出ると、人気の無い場所で話を聞く。


 「風音様! ネビルッス! あいつがいたんですよ! 」


 カーベルが、ネビルが居たと言い出した。

 ネビル… 一体、誰の事なんだろう。

 唐突過ぎる、カーベルの言葉を遮る様にカリナが説明すると言い出す。


 「カーベル いきなり風音様にネビルと言っても解るわけ無いだろう! 順を追って、わたしから説明する」


 風音も、カーベルに落ち着けと優しく背中を撫でる。


 「落ち着け カーベル カリナから説明を聞こうではないか」


 ネビルとは、ドリボラを拠点に活動するSランク冒険者で手下を10名ほど使い事実上、ドリボラの冒険者を支配しているのだという。市長の、弱みを握り街でも顔役という話だ。手下にはSランクが3人、他はAランクの冒険者を従えドリボラから最寄の、西ダンジョンと呼ばれる場所を普段の金策にしているらしい。魔石取りの独占をしているのだという。


 ネビルは、他都市から来た冒険者の西ダンジョンでの魔石取りを一切許さなかった。手下達を使い、狩り中のパーティーを殺すのだという。


 ここまでの話、こういった輩は何処に行っても存在するだろう。だが、野望はあっても実際に行動を伴って他冒険者の排除を徹底して行う輩は少ない。


 腕を組み、煙管を齧りながら話を聞く風音が口を開いた。


 「ふむ… 小物がやりそうな事じゃな 魔石取りの独占とはのう」

 「はい… ただ、それだけでは無いんです やつは裏家業もしているんです」

 「ほほう」


 カリナの話は続く。


 裏家業をしていたカリナ達と、ネビル率いる手下達と合同の仕事を行った事があるのだという。その時の、仲介人 依頼主が北ダンジョンで風音に記憶を消されたバーデンだった。会話の内容から、バーデンとネビルは兄弟分。

 格上のネビルが、どうしてバーデンの様な格下と兄弟分なのか手下の会話内容から察した。バーデンは、儲かる仕事を持ってくるが行動に起せるほどの人材が居ない、ネビルの方には、実力が伴った手下が大勢いる事からお互いの利害が一致したのだと理解した。


 その日の仕事は、"タタキ"と呼ばれる押し入り強盗。

 カリナ達を見た、ネビルがバーデンに尋ねる。


 「おい 兄弟 なんだその餓鬼共は? 」

 「ああ こいつらは保険だ 見張らせるだけだ」

 「見張りも満足にできねえようなら 殺すからな! 」


 カリナ達は、裏家業を始めた時期だったようで殺しの経験はまだ無かった緊張して手に汗をびっしょりとかいていた。場所はアーデラルの宝石店だった。

 所定の位置に着くと、ネビルの合図で手下達が裏口のドア鍵を壊し突入する。

 カリナ達は周囲の警戒… 静かに時間が過ぎる。真夜中だった。

 すると、手下達が袋を抱えて小走りに出てくる。止めてあった馬車に次々に乗り込む。最後の1人が乗り込んだのを確認すると馬車を走らせた。その時間、10分もかかっていない。


 「おい 見て来い」


 バーデンがカリナ達に指示を出す。カリナ達は仕事が済んだ宝石店に侵入し現場の確認をした。裏口から入った、宝石店の店内には手を縛られた老夫婦の死体が転がっていた。

 声が出せないようにされたのか、老夫婦の首は切られ、心臓や腹といった身体中に無数の刺し傷から血が流れていた。


 「ぐへへ いい仕事しやがるぜ いいか お前達 金が欲しけりゃこれくらい出来る様にならねえと稼げないぜ ほら、今日の分だ」


 バーデンは、そう言って店内のカウンターの上に金貨5枚を転がした。


 本来、"タタキ"と呼ばれる押し入り強盗は自分達は覆面をし、相手の手足を縛りつけ動けなくし、布で目を見えなくしたり猿轡でしゃべれなくする。取る物を取って現場から逃走する。その一連の行動に殺人は無い。

 ネビルの手下達は、殺しが前提で本来の"タタキ"とは懸け離れているものだった。


 「十分に、気をつける必要があると思い伝えにきました。」


 カリナの説明が終わると風音が口を開く。


 「うむ… 話は解った あの髭親父と兄弟分とはのう クックク」

 「それと、ドリボラの参加人数は70名のようです」

 「問題無いのう ところでお前達はネビルとやらに面は割れとるのか? 」

 「多分、平気だと思います」

 「ふむ… 」


 風音は、煙草を吸いながら何かを考えている様子だった。


 「カリナ お前達は、宿に戻っておれ わしらは本部に行ってトーマスと話をしてくる」

 「「「解りました」」」


 ギルド本部へ向かう途中、風音が話をしだした。


 「あやつらが、ネビルとやらに面が割れてると後々厄介じゃな… 」

 「ああ… どうする? かざねさん」

 「うむ… それを考えているのじゃがのう『税杯』で始末しても良いが下手すると失格じゃからのう それは、避けたいところじゃな」

 「風音の金貨4,000枚がパーになるしね」

 「うむ… んっ!? たわけ! そんな金は後回しじゃ! まずは、カリナ達が安心して何処でも行ける様にしてやらんとな」

 

 風音は、カリナ達の今後を心配しての事だというが多少は参加費の金貨4,000枚が惜しいようだった。


 「じゃあ、西ダンジョンに行って記憶消しちゃえば? 髭親父みたいに」

 「最悪、それしかないかのう… 」


 本部に着いた俺達。

 依然、来た時より本部の前は人がごった返していた。

 都市税争奪対抗戦が、間近に迫っているせいだろう。前乗りした冒険者が本部に顔を出しているに違いない。すでに、お祭り騒ぎの一歩手前の様相をみせていた。

 カウンターに行くと、風音がトーマスは居るかと聞く。が、トーマスは出かけていて現在は不在だという。だが、そろそろ戻るはずだと受付嬢は答えた。

 俺達は、長テーブルと長椅子が設置されたギルド内に併設された椅子に腰掛けトーマスの帰りを待つ事にした。

 風音とゼスは、煙草を吸いエールを注文して飲みはじめる。


 「何じゃ 酒は置いておらんのか? 」

 「ああ ギルドで併設されているのは簡単な料理とエールだけだ 他の都市も同じはずさ」

 「ふむ わしは酒の方がいいんじゃがのう」


 そんな、他愛もない話をしていた俺達。しかし、背後から緊張した空気を感じて振り向くとギルド本部長アドルフが外出から戻ってきた。小声で風音に伝えようとすると、風音は人差し指立て黙っていろと手振りした。

 

 ゆっくり歩いて、風音の後ろで立ち止まるアドルフ。


 「上で話でもしようじゃないか」

 

 アドルフが誘うと、振り向きもせず風音が答えた。


 「話によるのう… 」

 「フッ ただの、世間話だ 困らす事は言わん」

 

 アドルフは、そう言うと中央階段を昇り本部長室に入って行く。


 「行くか」


 風音は、俺達の顔を見ると立ちあがり本部長室に向かう。

 後に続く俺とゼス。


 本部長室に入ると、隣の部屋から灰皿を持ちテーブルに置く本部長。


 「座ってくれ」


 誘われるまま、俺達はソファーに腰掛ける。風音は面を取るとテーブルに置いた。そして、本部長に質問をする。


 「地下遺跡の件は知っておるな? どういうつもりじゃ? 」


 風音は、正面のソファーに座る本部長アドルフの目を見る。

 アドルフも負けてはいない。風音の視線を受けながら答える。


 「他意はない 副本部長の報告を受けて君達ならやれ… 」


 風音は、アドルフの言葉を遮り冷たい視線で言い放った。


 「本部長 わしを試しているのか? あまり舐めるなよ小僧… 試したいのなら手合わせしてやっても良いんじゃぞ? どうする」


 風音が怒っている… この目は、剣獣殺に放った時と同じ目をしていた。


 「風音! 」


 俺は、とっさに風音を止めに入る。

 

 アドルフは、黙っているが顔に汗をかき押し潰されそうな風音の威圧に抵抗しているようにも見えた。 


 「なんじゃ? 託也 わしはただ実力が見たいなら手合わせしてやると言っただけじゃ」

 「いいから 止めよう風音」

 「心配性じゃのう で、他に話はあるのか? 本部長」


 本部長は、風音の威圧で精神をかき乱されていたが我に帰り話を続けた。

 

 「あ… ああ 地下遺跡の件はトーマス部長と話を進めてくれ それと… 副部長から報告を受けている キングタイガーの頭を吹っ飛ばす魔法は… 出来れば都市税争奪対抗戦では使用しないで欲しい… 」

 「フン! そんな事か 解っておるわ! それに、禁止事項とやらも守るつもりじゃ 安心してかかってこい あっ 後、トーマスには後で宿屋に来るように言っといてくれ 帰る! 」


 風音は、面を付けるとスタスタと本部長室を後にした。


 俺とゼスは、本部長に頭を下げてから部屋を出た。

 頭を下げた時の本部長の顔は、汗まみれになり今までに見た事がない何かを見た様な顔をしていた。

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