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暴君少女 風音-最凶不死者-  作者: きーぱー
王都編
37/66

37話 召喚士マリー


 風音の、一言で始まった海旅行。王都を出発して2時間経ったかくらいに風音がゼスに進路変更を促した。直接、海には向かわない様だ。


 「ゼス この村に寄って行くぞ」


 風音は、初日に雑貨屋で購入した地図を開いて目的地を指差した。馬車を走らせるゼスは横目で位置を確認した。


 「なるほど! わかった そういう事か」

 「そういうことじゃ」

 「何時の間に調べたんだ? かざねさん」

 「マジックアイテムを買った時じゃ わしらはすぐに決まったがカーベルやダムは中々、決まらなかったからのう 暇じゃったから聞いて回っていたのじゃ」

 「さすがだな」

 「ゼス! 何を関心しておる お前が真っ先に教えねばならんことじゃぞ! この先、必ず必要になるじゃろうが しっかりせい! 」

 「す… すまん」

 

 ゼスは、海に向かう街道から北に逸れる道に入る。目的地はイゾル村…

 何の為に、イゾル村に向かうのか知らないが俺達は海に行きたくてウズウズしていたのだった。てっきり、王都から真東にある漁村タスカへ向かうと思っていた。


 馬車が、街道から逸れた道に入り30分も行くと村が見えた。空には鷹が輪を描き旋回していた。山の麓にある村だけあって、豊かな自然が視界に広がる。

風音は、大きく息を吸って深呼吸した。俺達は、村の馬繋場に馬車を止めて村の奥へ足を運ぶ。すると、木の柵で囲った、一区画が目に飛び込んできた。風音とゼスがドアを開け中に入っていく。俺達も、後に続いた。


 中では、数人の村人が鷹の調教をしていた。腕を突き出し、鷹の止まり木になる者や餌を与える者、口笛を吹き落ちた枝を拾わせる者といった様々な調教を仕込んでいた。

 風音は、真上で輪を描く鷹を見つめて自身の肘を曲げ横に突き出す。すると、真上を旋回する鷹が風音の腕を止まり木にする。


 「凄い! 風音」


 思わず、俺は叫んだ。風音は、鷹の胸の辺りをそっと撫で再び飛ぶように腕を払う。

 日本では、猛禽類は許可を取らないと飼えない生き物。姿形は知っていても特定の場所に行かなければ触れ合う機会は少ないだろう。


 「どうじゃ? まるで鷹匠(たかじょう)のようであったろう」


 風音がニヤリとした。

 

 鷹匠とは、鷹だけでなく隼や鳶、鷲のような猛禽類を調教する調教師の事を指す総称である。


 「準備はいいか? マリー」


 風音がマリーに向かって準備を促す。


 「はい やってみます! 」


 マリーは、風音に武具屋で買ってもらった皮製の肩宛と腕宛を嵌めると区画内の中心付近に行き、自分の腕で止まり木を作る。風音とマリーで、事前に話は済んでいたようだ。


 「良く見るのじゃ マリー あやつらもちゃんと意思疎通出来るからのう」

 「はい! 」


 普段は、大人しくポワーンとしたイメージのマリーだが今は真剣な顔で風音のアドバイスに返事を返す。餌を貰っている鷹、鷹匠の腕に乗っている鷹を見つめていくが、どれもマリーの止まり木には移らなかった。

 その時だった。先程、風音の止まり木に移った旋回する鷹が鳴き出した。


 ピィー ピィー ピギィー


 はっとした、マリーは上を向き鷹を見つめる。鷹は2度3度と旋回しながら下降してマリーの腕にしがみついた。マリーは、すかさず背を撫で用意していた餌を口元に差し出した。鷹は、(くちばし)で餌を咥えるとツッツッツッと流し込んでいく。その様子を見たマリーが安堵の表情を浮かべた。マリーは、用意してあった契約用の紙を地面に置き鷹に踏ませる。すると、鷹はポンッと消えてしまった。これが、契約完了の合図だという。


 「よくやった マリー! やれば出来るではないか」

 「おめでとうマリー! 」


 皆の祝福を受けるマリー。安心したマリーの目元から涙が落ちた。


 「ありがとうございます 風音様! 」

 「わしは何もしておらん マリーの実力じゃ」


 風音も嬉しそうにマリーの頭を撫でる。そんな俺達を見ていた調教師の1人が近づいてきた。

 

 「おっ 金じゃな? いくらじゃ」

 「金貨5枚となります」

 「結構するんじゃな? メイドスで買った馬車より高いとは… 」


 鳩と呼ばれる召喚動物は、早い伝達が売りで高値で取引されているのだった。


 「風音 今回は俺に払わせてよ 俺達からマリーにプレゼント」

 「男前じゃのう 託也! 」

 

 風音は、ニヤリとして言う。


 「ありがとう たくや! 大事にするね」

 「うん」


 俺は、財布から金貨5枚を取り出し調教師に預けた。


 「ありがとうございます しかし、驚きましたよ。あいつは中々慣れなくて困っていたんですが、お連れの方が、すぐに止まり木を成功させてびっくりしてたんです。続けて、契約までしてしまうとは こんな事もあるんですね」


 こうして、鳩をゲットした俺達はイゾル村を後にしてタスカ村を目指し再び馬車を走らせた。


 ―― 約2時間後


 海が見えてきた。目の前に広がるオレンジ色をした海… 漁村が見えた。村には、すでにランタンや外灯で明るく照らされていた。ゼスの話では釣り客用に宿屋が2~3軒あるという。村が運営している馬繋場で馬車を止めて馬達に餌と水を与えた。

 そこに1人の男が近づいてきた。どうやら、馬繋場の管理人のようだ。


 「あのう… ご利用ですか? 」

 「ああ これから宿屋を探して1泊する予定だよ いくらだい? 」


 どうやら、馬繋場で金を取るらしい。馬繋場の入り口付近に立てられている看板に、それらしい事が書いてあった。


 「はい この大型馬車と通常馬車、馬が5頭ですね 大型10 通常8 馬3×5=15 全部で銅貨33枚になります」

 「おっけー」


 ゼスが馬繋場の支払いをし、俺達は村の中にある宿屋に向かう。途中、居酒屋や飯屋からは海の幸を焼いた良い匂いが漂ってくる。風音やカーベル達は、今にも匂いに釣られて居酒屋に入って行きそうな勢いだった。


 「ゼスー! まだかー 早く食べたい飲みたいぞ! 」


 風音が堪らず愚痴り出す。


 「もう、そこだ 4年振りか… 王都で活動していた時に何度か世話になった宿があるんだ。 生の魚をさばいて出してくれる 口の中で溶けるような食感がするんだ おっ ここだ!  ご免よ やってますか?」


ゼスが宿屋の玄関を開いた。入ってすぐ横にカウンターが設置してあり椅子に腰掛ける老人が煙草を吸っていた。老人はゼスに気付いて立ち上がる。


 「いらっしゃ… ん? おお! ゼスさんか!? 」

 「ああ 久し振りだね 元気だったかい? 」

 「わしは見ての通り元気じゃよ! それよりゼスさん久し振りだなあ! 3年? いや、4年振りか!? 」

 「ああ 4年だね あの後、地元に戻って冒険者を続けていたんだ 今は縁があってこれだけのパーティーを組んで仕事しているよ」

 「そうか… 元気でやっていたなら良かった ささっ 上がってくれ」


 宿屋の主人に、2階に案内された部屋は海が見える。今は暗くて、波の音しか聞こえてこないが朝になると東から昇った太陽が海を写し、絶景が拝めると宿の主人は語った。明日の朝が楽しみだ…

 続けて、宿屋の主人が俺達を眺めて部屋は1つでいいのかと尋ねる。ゼスは、どうせこの部屋で酒飲んで寝ちまうからと人数分の布団だけ隣の部屋に用意して貰った。


 「とりあえず、酒とつまみ それと生魚を頼むよ」

 「あいよ すぐ持ってくるよ 飯と風呂 どっち先にする」

 「腹も減ってるから飯の用意して欲しいな」

 「あいよ わかった」


 主人は、そう言うと階段を下りて調理場に声をかける。


 「良いところじゃのう ゼス 」

 「ああ 王都にいる時、嫌な事があったりすると よく来たんだよ」

 「そうか… ゼスにも色々あったんじゃのう」

 「そりゃそうさ… 冒険者を辞めようとした時期もあったよ」

 「… 」

 「でも、今はこれっぽちも辞めたいと思わないぜ! このメンバーなら何だって出来そうな気がする! 」


 ゼスが、力強く言うと隣で風音が笑みを溢した。

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