34話 都市税争奪対抗戦
王都の、ギルド本部で些細な揉め事が合ったもののギルド副本部長カテリーナの一声で場は収まった。ゼスの話によれば、ギルド本部の冒険者はエリート思考が強く意識高い系が多いのだという。普段からランク分けで上下関係をはっきりさせているせいもあり特に、若い冒険者にその傾向が見られると言った。
以前、単身で王都に拠点を移して活動をしていたゼスは、その体験を肌で感じたという。
ギルド本部を後にした俺達は、買い物した荷物を置く為に馬繋場に止めてあるカリナ達の馬車へ向かう。道中、煙管を銜えた風音が口を開いた。
「しかし… 何処に行ってもあるのじゃな 地域差別」
「ああ 特に、ここ王都は酷い… 俺も単身で調査していた頃に身を持って体験したから事前に伝えておくべきだったよ すまなかったな 託也 カリナ」
「いえ、ゼスさんは悪くありません 悪いのはあいつらです! 」
カリナが悔しそうに答えた。
「そうだよゼスさん 謝らないでよ ああいう人は何処にでもいるし」
俺も、ゼスに対してフォローを入れる。
「それよりゼス 小童どもが言っていた『税杯』とは、なんじゃ? 」
「『税杯』… 4年に1度、開催される王都を含めた8都市対抗戦だよ 参加費を各都市が出して優勝した都市は参加費を総取りできる仕組みだ この国、最大のイベントさ 参加費金貨5,000枚×8都市=金貨40,000枚の総取りとなれば参加者は本気だよ」
「ほほう… 面白いのう」
風音はニヤリとする。
「うち メイドスは2回連続で不参加さ… 毎回、王都が勝つのは決まっているから参加する人が少なくなって今に至る。参加者がいなければどうしようもないしな」
「ゼス 『税杯』は何時じゃ? 」
「えっ!? もうチョイ先だよ 30日切ってるんじゃないかな… って、まさか参加する気か!? かざねさん!! 」
「参加しようではないか クックク 総取りじゃ!! 」
「ちょっ!? 待ってくれ! 本気で参加するのか!? 」
「何じゃ? 臆したか ゼス? 」
「王都の参加者だけで300名は超えるんだぞ… マリル150名、アーデラルとトロレスも100名は出てくるだろう その全てを相手にする気なのか!? 」
「ゼス… 頭を使え 何も正面から全てを相手にする事は無かろう」
「えっ!? 」
『税杯』に関する説明を聞きたいと言い出した風音。場所を移動する事にした。
▽▽▽
『税杯』とは… 8都市対抗戦、正式名称『都市税争奪対抗戦』 4年に1度開催される国内最大のイベント。
8都市、全ての都市が参加すれば総額金貨40,000枚が手に入る。ルールはシンプルで、専用の闘技場で陣地のオブジェクトを守りきるか相手が全て戦闘不能となった場合で勝敗を決める。オブジェクトは、特殊な鉱石で作られ魔法は効かず物理攻撃のみ有効、破壊できる仕組みだ。戦闘続行不可能となった場合は、その場から退場できる(戦闘続行可能でも自己申告で退場可能)。
禁止事項は、即死攻撃・毒(痺れ薬等は有効)・観客、審判員への攻撃。
禁止事項に抵触した者は即退場後、拘束され処分を受ける事になる。要するに、初撃を頭や心臓に打たなければセーフという事だ。参加資格は、冒険者と各都市の住民に限る。
元々、地方都市の不平不満から始まった『税杯』。枯れた土地で、産業が覚束なくなり王都に求めたところ現在のシステムが出来上がった。初めのうちは、都市開発に貢献されるものだったが今では冒険者達の売名行為の舞台となっていた。
参加費金貨5,000枚支出も各都市で様々。例えば、王都の場合は参加費の全てを王都側で出し参加した冒険者ランクに対して定めた報酬となっていた。Aランクなら金貨20枚、Sランクなら35枚といった感じだ。C,Bランク冒険者は『税杯』には参加できない。戦死する場合もあるのでギルドは許可していないという。
メイドスの場合は、都市とギルドで折半。金貨2,500枚づつ用意して参加費を納めていたらしく優勝すれば参加冒険者達には金貨5,000枚、残りをギルドと都市で折半という方針だったが今まで1度も優勝した事は無かった…
ゼスも、1度だけ参加した事があると言っていたが決められた範囲の中での行動は戦闘スキルの無いスカウトでは厳しかったようだ。オブジェクトを守る魔法部隊と、攻める戦闘職をサポートする支援部隊の混合部隊を率いる王都のギルド本部は強かったらしい。
俺達は、食料を買い込み宿屋でゼスから『税杯』レクチャーを受けながら飯を食っていた。
「なるほどのう… で、勝ち抜き戦なのか? 」
「予選で1回勝ち上がれば本選出場だ 決戦は勝ち上がった都市とシードの王都でバトルロイヤルだ」
「バトルロイヤル? 」
「大規模乱闘戦ってところか… 周りの全て敵って事だな」
「わかった… 戦法はわしが考えよう 参加するのに期日は無いのか? 」
「ああ ギルド本部で聞けば教えてくれると思う 後でカテリーナにでも聞いてくるよ」
「うむ 頼んだぞ と、聞いての通りじゃ お前達! わしらも『税杯』とやらに参加するぞ」
「はい!!! 」
「あいつら… ギッタギタにしてやる! 」
カリナは拳を握り締める。ギルド本部にいた若い冒険者を的にするようだ。
「まあ そう熱くなるな カリナ もしかしたら、あやつらとは戦えないかもしれんからのう 今から、あまり気を張るでない」
「えっ!? どういう事ですか? 風音様」
「クックク まあ見とけ… 当日までのお楽しみじゃ どれ、話は終わりじゃ これから夜まで自由時間じゃ 女子ども買い物に行くぞ」
「はい! 」
そう言うと風音は、カリナ・マリー・アルマの3人を引き連れて買い物に出かけてしまった。
「どうする? 俺達も出かけようか」
「そうだな ちょっとぶらつくか」
「あ… 俺は風音様に釣りの仕掛けを作れと言われているので留守番がてら仕掛け作りしています。」
ダムは、そう言って留守番をするという。
俺とゼス、カーベルの3人は街をぶらつくことにした。
俺は、ダムの言った釣りの仕掛けで思い出した。そうか… 海に行って魚が釣れた時の事を考えて寿司の用意をしなきゃならなかったのだ。
調味料は、確認してあるから良しとして寿司桶が欲しい。良さそうなのがあれば買っとこう…
「ゼスさん 食器とか器が売っているところないかな? 」
「そうだな 少し買っといた方がいいか 皿も欲しい」
「ガラス製じゃない 壊れにくいコップなんかも欲しいね」
「そうだな… 考え出すと色々出てくるな」
ゼスは、元々料理が好きなのだろう。マジックアイテムを買っている時とは違って楽しそうに買い物をしていた。鍋やフライパンの取っ手を握っては、自分の手に馴染ませるように、くるくると回したりしている。
『好きこそ物の上手なれ』… ゼスは職人気質な部分があるのか、未開拓調査や料理に関して言えばこの言葉が一番しっくりとくる。
最近のゼスは、俺にとって頼り甲斐のある兄貴みたいな存在である。
正直、このまま風音やゼス カリナ達と一緒に冒険が続けば元いた世界に戻れなくても構わないとさえ思っている。自分自身が強くなって、風音や皆を助ける事が出来ればもっと楽しくなるはず… 風音は、この現状をどう思っているのだろう? やはり、元の世界に戻り祠で静かに暮らしたいのかな…




