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暴君少女 風音-最凶不死者-  作者: きーぱー
王都編
32/66

32話 本部長アドルフ


 北ダンジョンで、見つけた数々の財宝を無事に王都まで届けた俺達は、ギルド本部副本部長カテリーナによってギルド本部に案内される事になった。俺達は、王城に架かる跳ね橋の手前から市中を抜けて、ギルド本部が所有する馬繋場で馬を繋ぐ。案内された馬繋場には単騎の馬が約50頭、馬車30台が止められ規模の大きさを物語っていた。警備も2人いて、Cクラスの駆け出し冒険者の持ち回りで数日に1回ローテーションで回ってくるのだという。当然、報酬もあるし実務経験値としてカウントされるため揉める事は無い。

 むしろ、ギルド本部ではCクラス冒険者の義務と化していた。


 メイドスの冒険者人数とは、明らかに違うので出来る事なのだろう。


 「副本部長! トーマス部長! お疲れ様です」

 「ああ ご苦労様」

 「ご苦労様 もうすぐ交代時間だな 頑張ってくれ」


 敬礼は無いものの、ギルド本部幹部と線引きがされている様子が伺えた。ギルド学者のトーマスは挨拶だけ済まし、副本部長のカテリーナはCクラス冒険者に労いを付け加えた挨拶をしていた。そんな中、カテリーナとゼスが会話をはじめた。


 「ゼス 本部に寄るのは4年振りか? 」

 「ああ それくらいだ 1人で各地を回っている頃だからな」

 「本部長の事は覚えているか? 」

 「ああ… 一度見たら忘れられないだろ? インパクトあるからなあ」

 「フフッ そう言うな 本部長はああ見えて、常に冒険者の事を考えている人だ 今回の件も、色々と尽力してくれた ちゃんと礼だけはしとけよ」

 「わかっているよ」


 ゼスは少しだけ、げんなりした表情を見せた。


 「では、ギルド本部へ移動します 付いて来て下さい。」


 カテリーナは、風音の方を向き声をかけると石畳で舗装されている市中を歩き出した。風音は、煙管を取り出し火をつけると黙ったままゼスとカテリーナの後ろに付いて歩き出す。


 ギルド本部は、馬繋場(ばけいじょう)から出るとすぐに見えた。その大きさはメイドス支部の3倍はある建物。本部の外では、冒険者とポーターが入り混じり依頼の交渉や準備をする者、魔石が詰まった土嚢袋を馬車から降ろしている者等が約50名ほど動き回っていた。

 他にも、3~4人くらいで(たむろ)し煙草を吸いながら話し込む姿も見て取れた。


 「ゼス 本部長と話をしてくるので少し時間をくれないか? 」

 「ああ」

 「中は、もっと込んでいるだろうから ひとまず、この辺で待っていてくれ」

 「わかった カテリーナ」


 カテリーナとトーマスは、本部長に会うためギルド本部に入っていった。俺達は表でカテリーナが戻るのを待つ事にした。

 そろそろ、日が沈む時間になるのだろう。街の外灯が点き出し、昼間見た街の概観が少し違って見えた。外灯の数が多いせいだろうか、街中が明かりに照らされ足元が暗くて見えないといった事も無く安心感を与えてくれる。

 …… …


 「ゼス みんな 来てくれ」


 カテリーナが戻ってきた。ギルド本部長と話が付いたのか、ギルド本部の中に案内される。

 玄関から入ると、メイドスのギルドフロアーの倍はある広間が広がる。カウンターには魔石の交換でごった返す冒険者達、長テーブルには地図を広げ依頼のルート確認をするパーティー、掲示板には依頼を選択しカウンターに申請する者や、冒険者の登録をし説明を受ける者と様々。日が沈んでいるにも拘らず、150名はギルドホールに残っていた。

 メイドス・ギルド支部との温度差を感じざるえない光景だった。そんな熱気を帯びる中で、いくつかの視線を感じた。物珍しさから、辺りに目配せしてるからか周りからも普段と違う空気を察した者がいたのだろう。


 「上だ 本部長室に向かう」


 カテリーナは、そう言ってフロアーの中央から上がっていく階段を使い本部長室の扉をノックする。


 トントンッ


 「本部長 連れてきました」

 「入れ」


 本部長室から低い声がした。カテリーナが取っ手を掴み扉を開くと、正面の壁掛けに剣と槍が飾られている。俺達は、本部長室に入るとソファーとテーブルがありギルド学者トーマスが座って待っていた。


 「ゼス かざねくん 座ってくれ 他の皆も掛けてくれ ささっ」


 トーマスが、手招きしてソファーに腰掛けるよう勧める。トーマスの横にゼス、風音、俺の順にソファーに腰掛けた。迎いのソファーにはカリナ達が腰掛ける。本部長室はメイドスの応接室と変わらない作りとなっていて一番奥には、書斎用のテーブルと椅子が配置され大きな身体の本部長が座ってこちらを見ていた。


 本部長は、筋肉隆々でがっちりした身体に鋭い眼光。歳は50前だろうか… 腕や顔に刃すられた傷がいくつか伺える。浅黒い肌の色をし、髪は無毛、所謂(いわゆる)スキンヘッドというやつだった。その横には、(いささ)か緊張気味な後ろ手を組んだカテリーナの姿があった。

 

 本部長が口を開いた。

 

 「みんな 本当にご苦労だった そして、偉大な功績を上げた君達に心からおめでとう と、言わせて欲しい。」

 「ありがとうございます」

 「君がゼスだね? やっと名前と顔が一致した。何年か前に、本部を拠点にして遺跡やダンジョンの調査をしていたのは覚えていたが、顔と名前が一致しなかった。すまん」

 「いえ、会ったのは二度くらいでしたからね しかも、本部は人の出入りが多いので覚えて貰っていただけで光栄です。それと、今回の件に関して色々と動いてくれた事にも感謝します。ありがとうございました」

 「冒険者を支援するのはギルドとして当たり前の事。(つたな)い助力だったが、君達の助けになったのなら幸いだ」


 ゼスが本部長との受け答えをする中、風音は銜えた煙管を口から話すとトーマスに灰皿の合図をする。それに気が付いたトーマスが隣の応接室から灰皿を持ち風音の前に差し出した。

 その様子を見ていた本部長が風音に話しかけた。


 「君が、かざねくんだね… 本部長のアドルフだ。今回の件では魔物の討伐は、かざねくんが中心となっていたと聞いている。報告通りだな… 今後もギルド活動に勤しんでくれると助かる。」


 本部長アドルフは、多くを語らず風音には今後も頼むと言うだけであった。当の本人、風音に至っては一言も発さず目すら合わせない始末であった。お互いが様子を伺い合っている、そんな感じがした。

 

 本部長が、椅子から立ち上がりゼスの横に立つと報酬の件で話を振り出した。


 「ゼス まずは報酬の話をしよう 特務機関からの護衛依頼、メイドスから王都までの荷馬車警護だ 金貨800枚を1階のカウンターで受け取ってくれ。それと、ゼス・かざね・たくやの3名は本日付で冒険者ランクSSとする。メイドス支部長から逐一、報告があった。くれぐれもよろしくとな… 依頼料を受け取る前に登録証をカウンターに提出してくれ。」


 未開拓発見によるギルド依頼料は金貨5000枚となる。古代金貨や財宝の査定は、明後日になるので連絡だけ付けらるように近場で待機していて欲しいとの事だった。俺達は、荷馬車警護の金貨800枚とSSランクに塗り替えられた登録証を受け取りギルド本部を後にした。


 SSランク冒険者… このランクには、ある特権が許されるのだという。それは、この世界に存在しない『銀行』というシステムがギルドによって補完されるのだ。つまり、お金を持ち運ばなくても各支部で金貨500枚までを引き出せるのだという。

 今回の、未開拓発見によるギルド報奨金をゼスが金貨2000枚、風音が2000枚、俺が1000枚という風に割り振って貯金という形でギルド本部が管理してくれるのだ。通常であれば、全ての硬貨を持ちながら移動しないといけないがSSランク冒険者になれば必要ないのだ。

 

 SSランク冒険者… それは、栄誉と名声を手に入れた事になる。財宝の査定が終われば正式に本部、各支部へ名前が張り出される事になる。俺達にとっては、必要ない栄誉と名声だが冒険者を生業にした者の目標でもあるだろう。


 俺達は、ギルド本部を後にすると宿屋に入り何時もの打ち合わせとなった。

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