18話 宝物庫
石版から移動し、『儀式』の場とされる円形の建造物内部の魔法陣を模写して戻ったゼス。
俺達は、手前にあった個室のドアに刻まれた封印魔法を解除することにした。ゼスは、バッグの中から1枚のマジックアイテムを取り出し魔法陣に被せるように設置した。数秒後… 設置したマジックアイテムに書かれている魔法陣が黄色い光を放ちはじめた。続けて、ドアに刻まれた封印魔法が白く光ると設置したマジックアイテムの光と同時に消えていった。
「よし! 」
ゼスが一声あげた。どうやら、成功した場合は今の様な現象になり失敗すると設置したマジックアイテムは発火し、消滅してしまうのだという。
「念のため、戦闘準備をしといてくれ」
「うむ」
「了解! 」
俺は、風穴の用意をして不測の事態に備える。風音はというと… 煙管を齧り煙を吹かしているだけであった。カリナは、両腰に装備したカタールを握る。ランタンを持ち、ゼスが腕を伸ばしてドアを押し込んだ。
ギィィ…
「うおおっ!! 」
ゼスは、その光景に声を裏返して叫び出す。
「うおおっ!! 財宝だ! 部屋一杯の財宝だぞ!! 」
「なに!? 」
「えええっ!? 」
「財宝! 」
建物の入り口に、皆が集まり内部を覗き込む。そこには、古代通貨と言われる金貨銀貨が山積みにされている他に、剣や鎧といった武具に置き物やとても高価そうなアクセサリーが、これでもか! と、言わんばかりに積まれていたのだ。俗にいわれる『宝物庫』なのだろう。横15m 縦2mほどの広さに、高さは3m 宝が一杯だ。
「ゼスよ! これは全てわしらの物なのか!? ゼス!! 」
風音の、目は『円』と書かれていたように見えた…
「かざねさん… もちろんだとも!! と、言いたいところだがそいつは無理なんだ… こればっかりは国に引き渡さないとならない」
「なんだと!? わしらが見つけたのじゃ! これは誰にも渡さんぞ! 」
「いや、ただで渡すわけじゃないんだ」
ここで、ゼスが風音に説明を始める。説得は大変だろうなあ… 検討を祈ります。
▽▽▽
ゼスの説明会が始まった。ダンジョンや遺跡での、未開拓地調査の実績は冒険者によるものとし、ランクの上昇確定と依頼料プラス難易度の特別報酬が約束されているという。当然、各階層のマッピングや魔法陣の出来も考慮されるのだ。
次に、攻略が出来た証拠として依頼を受けたギルド支部から2名、王都から専門の学者を2名+護衛をここまで案内しないとならない。学者に認定され、はじめて報酬を受け取れる。この場合、金貨で換算すると3000枚はくだらないとゼスは言った。支部が支払える金額ではないため直接、王都のギルド本部で支払われると続けた。
次が問題の『宝物庫』にある宝の山だ。これらを、時価換算し3分の1を特別報酬として支払ってくれるというのだ。とてつもない金額が手に入るとゼスは豪語する。
「なんじゃ… それだと手元に来るまで時間がかかるのう」
「まあ、大変な金額だ しょうがないさ しかし、ここで馬鹿正直に全てを国にやるほど、俺も御人好しじゃないさ ふふっ どうだろ? みんなで1品づつ内緒で懐に持ち帰るってのは? 」
「ゼス… お前はゲスいのう 心底ゲスいのう でも、そこまで言うなら今回だけだぞ 今回だけゼスに乗ろうではないか のう 託也よ」
嬉しそうに風音が横目で俺を見る。
「かまわないでしょ 誰も見てないんだしね」
あまり、宝には興味は無いのだがゼスも風音もソワソワしてるし… 同調しとくのが吉っぽそうだ。
「かざねさん 託也 好きなのを1品づつ貰ってくれ あんた達二人がいてくれたからここまで来れたんだ さあ」
「ゼス お前の知識があってこそじゃ ゼス、お前がこういうのが好きなのはガラスケースに飾ってある物を見ればわかる お前が一番に選べ」
「そうだよ ゼスさん 俺達の事は気にしないで」
「いいのか? 」
「何回も言わすな 早く選べ」
「ああ! ありがとう!!」
ゼスは、迷わず金で出来た変てこな形をしたオブジェを選びニヤニヤしながら眺めている。続いて、風音が選んでいるのはアクセサリーのようだ。やはり、歳は食ってても女なのだろう… わかんないけど
俺の中では、1品持って帰るならこれだと決まっていた。魔石回収を繰り返すうちに、地面にぶつけたり硬い魔物の骨とすり合わせた事によってナイフは刃毀れしていた。
宝の山の中から、短剣だけを選び柄を握っていく。握って、しっくりくる短剣にしよう… どうせ、どの短剣が丈夫で切れ味が良いなんて目利きが出来るはずもないのだから。
数本の短剣を握るがしっくりしなかった。宝の山を、かき分けると剣の柄が現れた。その、黒い柄を握ると何かを感じる。宝の中から黒い柄を引き抜くと、十手と呼ばれた時代劇に出てくる岡っ引きが持つ武器にそっくりだった。本来の十手に刃は無いが、この武器は刃が付いているので魔石回収は出来るし族との戦闘でソードマンクラスと対峙した時の保険にもなる。
古臭い感じはするが、柄の握りでしっくりきた感覚を信じて持ち帰る事にした。
すると、横で見ていた風音が笑い出した。
「クックク なんじゃ! 託也 冒険者を辞めて岡っ引きにでもなるのか!? クッククク」
風音は涙を流しながら笑っている…
「握ったらこれが一番しっくりしたんだから 仕方ないだろ」
「そうかそうか クックク わかった それにしろ クック」
ゼスは当然、十手なんか知らないだろう。案の定、珍しい見た事のない武器だと言った。
「よーし みんな決まったみたいだな かざねさん戻ろうか? 」
「いや カリナが決まっておらんな… 」
「おい かざねさん… パーティーメンバーじゃないんだぜ? 」
「わしの部下になったんじゃ それでも駄目なのか? どうなんじゃ? 」
風音は、ゼスを追い込むと帽子を深く被りゼスは諦め気味に答える。
「かざねさんには適わないな わかった… 了解だ! 」
ゼスは、深く被った帽子を被り直しニヤリと風音を見た。
「ゼス 男前じゃのう そういう心意気を忘れるでないぞ」
ゼスは、よしてくれと言わんばかりに照れくさそうにした。しかし、肝心のカリナはその話を断る。自分は、何もしていないので貰う事が出来ないと言うのだ。確かに、正常な答えだ…
「何断っているんじゃ! 良い若い者が遠慮なんぞしおって」
「じゃあ こうするのはどうだ? 折角、4人でここに来たんだ」
ゼスは、同じデザインの指輪を4つ持ってきた。指輪の中央には、色違いの宝石が埋め込まれている。黒、白、赤、青…
「わしはこれじゃ! 」
風音は、そう言うと白い宝石が埋め込まれた指輪をササッと手に取り指に嵌めてみる。
「うん 良いではないか! 」
角度を変えて、ニタリとしながら指に嵌めたリングを眺める。ゼスは、青を取り俺は黒、カリナは必然的に赤となった。
「嵌めてみせよ カリナ」
風音に言われ、指輪を嵌めるカリナ。それを見たゼスは、カリナに言った。
「これは仲間の証だ 金に困っても絶対売るなよ」
「仲間の証… 」
カリナは、少しだけ笑みを零したように見えた。




