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暴君少女 風音-最凶不死者-  作者: きーぱー
冒険者編
12/66

12話 魔石


 手のひらで放つ、風穴特訓を開始してからまだ1度も成功はしていない。風音のアドバイスを受けた、指2本によるデコピンが思いのほか上手くいった為、手のひらによる風穴が成功しない事に肉体的疲労、メンタル面まで削れていた俺だった。そんな1日が過ぎた翌日…


 朝食を終えると黒蓮を連れ、馬車を購入した工房に寄り馬車を引かせて林まで移動する。黒蓮を木に繋ぎ、昨日の訓練場所まで行くと風音がアドバイスをくれた。


 「託也 少し手前に引いてから腕を押し出すように撃ってみよるとよい」

 「木から手を離していいの? 」

 「もう よかろう」


 俺は、言われた通り腕から力を押し出すように木に撃ち込んだ。


 ミシッ!


 木から軋む音がした。


 「よし その感覚を身体に馴染ませろ 威力は考えなくていい とにかく今の感覚を覚えるのじゃ」


 俺の表情から読み取ったのか、風音は笑みを浮かべる。恐らく、俺は暗い顔をしていたに違いない。鏡はないが、嬉しそうな顔をしていたのだろう。


 「行くぞ ゼス」

 「了解」


 風音達は、朝食の時話していたイノシシ狩りをするようだ。風穴で倒した倒木のさらに奥へ進んで行く。ゼスは風音の後ろについて用意して来たロープを用意していた。


 恐らく、風音の事だから普通の狩りではないのだろう。ゼスがあんぐりと口を開け驚く様子が想像できる。


 ▽▽▽


 30分も経った頃、風穴を続けている俺の元へ風音が1人で戻ってきた。


 「託也ー ちと手を貸してくれ ゼスだけでは持てぬでのう」

 「そんな大きいの? 」

 「いや 2匹取ったから1匹は頼む」

 「わかった」


 奥へ進むと、口手足を縛られたイノシシが置いてある。さらに奥からはゼスが1匹縛り上げたイノシシを引きずってくる。


 「ハァハァ… た… たくやくん そいつを頼む」

 「わかりました」


 ゼスは息を切らしてフラフラしていた。100キロありそうな体重のイノシシを引きずっているのだから当たり前である。俺は頼まれた、もう1匹の縛られたイノシシのロープを掴み引きずりながら移動させる。


 「あれ? そんなに重くないな… 」


 俺は、頼まれたイノシシを上まで運び、再び林に戻りゼスの手伝いをする。

 汗1つかいていない俺に対して、ゼスはシャツまでびっしょりになっていた。

 上で待っていた風音が、ゼスに発破をかける。


 「だらしないのう 託也を見てみろ 汗1つかいておらんわ ゼス お前はちと体力作りをしないと、この先やっていけんぞ」

 「ゼィゼィゼィ… りょ… 了解」

 「で、身体の方はどうじゃ 託也」

 「うん… なんか軽かったよイノシシ」

 「そうじゃろ ズボンや服で見えないだろうが、お前の身体全体から白いモヤモヤが出ているはずじゃ さながら『肉体強化』といったところじゃな」

 「肉体強化!? 」

 「口で説明するのも難しいので まずは体験してからと思ってのう 風穴はその白いモヤモヤが大きく関係しとる 慣れると、手に集中するモヤモヤが波打つように見え集中した部分に波が集まって行くのが判るようになるのじゃ」

 「モヤモヤが波… 」

 「すぐには無理じゃろうが 訓練を続けていけばわかるようになる よし!肉屋に行くぞ イノシシを売る話はついてる」

 

 どうやら風音は、広場の屋台で串肉を食べた時に肉屋の店舗で話を聞いてきたらしい。俺が魔石買い取りの話を聞いているときの事だ。イノシシ肉は需要が高く、生け捕りしてきたら買い取ってやると言われてたらしい。

 イノシシを馬車の荷台に乗せると、風音とゼスは肉屋に向かった。俺は、コツが掴めた手のひらで放つ風穴の練習を続けた。

…… …


 昼になると、ゼスが迎えに来て飯にするという。俺は、いくらでイノシシが売れたか聞くと金にはしなかったようだ。旅で必要となる日持ちが利く保存食、干し肉に変えたと言う。干し肉は細かく切り、スープなどに入れたりするらしい。もちろん、焼いて食べるのも良し。

 人間の三大欲求の1つが食欲… どうせ食べるなら、より美味いものを食べたいのは必然だろう。味気無い食事ほど気持ちを削がれる。


 続けて、風音のイノシシ狩りを聞くと風音は何もしなかったという。着物から、小さな白い蛇が出てきてイノシシの足に噛みついたと言った。すると、イノシシはビクビクと痙攣し横に倒れたと言う。風音の依代、白蛇が噛みつき痺れさせたのだろう。ゼスの話では毒物を使った捕獲は売れなくなると伝えると、ただの痺れ薬で数時間で身体の内部で中和されるという。


 俺とゼスは、定食屋に入ると風音はすでに酒を注文し嬉しそうに飲んでいるではないか。

 「風音… 昼間から飲んでるのか」

 「なんじゃ 良いではないか イノシシ2匹も捕まえたんじゃ」

 「いや、飲むなって言ってるんじゃなくて昼間からどうなのかって… 」

 「細かいのう 気にするな! お前らも飲んだらどうじゃ? 」

 

 あまり口うるさくは言いたくないのでほっとく事にした。実際、金は風音が出しているし稼いでるのも風音本人、祠から異世界に巻き込まれたのも俺のせいだし… 久しぶりに自由になったのだから今後は言うのよそう。

 

 ゼスは俺の分を注文すると必要なものは無いかと質問してきた。


 「そういえば たくやくん 必要な物はないか? 」

 「着替えくらいですかね 託也でいいですよ ゼスさん」

 「了解 託也 着替えは近くの店で好きなのを買ってきたらどうだ? 」

 「うむ 金じゃ託也 好きなの買ってきたらよい」


 そう言うと風音は銀貨を1枚をくれた。


 「ナイフも携帯しといてもらいたいんだが… 」

 「ナイフ!? どうして? 」

 「魔石を取るのに魔物の身体を裂かないと取り出せないんだよ 俺は未開拓階層に入ったら地図や魔物の種類を書き残さないとならない その間に魔石を取り出して欲しいんだよ 裂けるものなら、ナイフじゃなくてもかまわないんだけど」

 「ふむ 託也 用意しとけ ゼスは店を案内してやれ」

 「了解 飯食ったら行こう」

 「ところで魔石とやらは 何でそんなに売れるんじゃ? 」

 「魔石を原料にマジックアイテムを作成できるんだ」

 「マジックアイテム? 」

 「ああ ネックレスや指輪にスキル効果を付与できる 例えば術士が感知系のスキルを持っていれば作成されるアイテムは感知系アイテムとなる ただ、誰にでも出来る代物じゃない 調合技術を身に付けた者でないと作成は不可能だ だから高価で市場に出回る」

 「なるほどのう… 感知系のスキルを持たなくとも、そのマジックアイテムを装備すれば感知できるという訳じゃな? 」

 「その通り! パーティー内にいない場合とか必須アイテムになるという訳で 需要が高いのさ」


 特に、ダンジョン上層部の魔物は体格に比例して大きな魔石が埋め込まれているらしい。これらを拾ってくれば旅の経費はおろか大金になると言う。

 俺は、飯を食い終えるとゼスの案内でナイフと腰に携帯するバッグ、着替えを購入した。


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