113話 殴り込み開始
「少しお待ちいただからば、全員集まれると思います。」
フランク自らお茶を入れてくれたので、それを飲んで待っていると扉がノックされ十人の冒険者達が入ってくる。
「此方が紹介させていただく冒険者になります。君達はこれからこのお二方の指示に従って動いてくれ、これから領主の捕縛に向かってもらいたい。」
急遽呼び出され用件も聞かされていなかったのだろう、冒険者達は狼狽ている。
「ま、待ってくれギルドマスター、俺の実力で騎士を相手にするのは無理だ。」
一人の冒険者がフランクに言い、他の冒険者達も目で訴えている。
「心配はいらない、戦闘は全て俺達で受け持つから、倒したやつの捕縛や見張りをしてくれれば良い。」
「あ、相手の戦力を把握しているのか?一人一人の実力もかなり高いんだぞ?」
「この方達の実力は確かです、先程も護衛をしていた騎士を倒し、領主は逃げ帰ったらしいですよ。」
フランクの説明を聞き皆驚いている。
領主の護衛をしている騎士達の強さは、この街で暮らしている者であれば誰でも知っている。
その騎士達を倒したと言われれば期待もしてしまう。
「いつまでもグダグダ話しているのは好まない、簡潔に作戦を説明する。俺達のパーティーが領主の屋敷に殴り込みをかける、俺達が倒した者をお前達が捕縛し一箇所に集めて見張る、作戦は以上だが質問のある奴はいるか?」
一人の冒険者が手を挙げて作戦について質問する。
「私達が見張っている場所を襲撃された場合はどうするのかしら?申し訳ないけど騎士と戦える程強くはないわ。」
「お前達の近くにも何人か配置しよう、そいつらが代わりに倒してくれる。他に質問はあるか?」
他には特に手が上がらなかったので、全員で移動を開始する。
「待たせたなネオン。」
「ちょっと、私も居るんですけど。」
自分の名前が無かった事にメリーは不満を漏らすが、軽くスルーしておく。
「大所帯ですね、何かあったんですか?」
「これから領主の屋敷に殴り込みをかける事になってな、その手伝いだ。」
「櫓君、私も参加して良いわよね?あのスケベ男に鉄槌を下してやらないと気が済まないわ。」
「私も参加させてください。」
メリーの横にいる藍が手を挙げて参加を志願する。
「無理するな、まだ身体が怠いんじゃないのか?」
藍は不意打ちを受けてしまい、身体が麻痺して動けなくなっていた。
櫓がポーションを使ったが、完全に治癒されているかは分からない。
「その節は助かりました、しかし問題ありません。今度は不覚を取るつもりもありませんし、後方支援でも構いませんので連れて行って下さい。」
「まあ戦力は大いに越した事は無いか。」
メリーと藍も連れて領主の屋敷に行く事にする。
倒した騎士達はこの場に置いておいて逃げられても困るので、ネオンが紐で一纏めにして引っ張っている。
領主の屋敷が見える所まで来ると、門の前や庭などに武装した者達が相当数いるのが分かる。
「随分と戦える者を抱え込んでいた様だな。」
「どうしますか?皆で突っ込んで乱打戦でもします?」
「さっさと捕まえたいから時間は掛けたくない。魔法で一掃するか。」
櫓の使う魔法は威力がかなり高い。
そのためB、Cランク程度の実力では耐えきれずに死んでしまう者も多いだろう。
殺すよりは犯罪奴隷として売る方が懐に良いので、いつもの魔法は使うことができない。
今回使う魔法は威力重視ではなく範囲重視の魔法である。
「我が魔力を糧とし、自然の脅威である雷よ、目の前の有象無象に、天の怒りとなって降り注げ。雷雨!」
櫓の詠唱が終わると同時に、屋敷の庭の上空に大きな黒い雲が出来上がる。
バリバリバチバチと帯電している雲から雷が一つ屋敷の庭に落ちる。
誰にも当たっていないがいきなりのことに庭にいる者達はパニックである。
しかしそんな事はお構いなしに、二回目三回目と次々に黒い雲から雨の様に雷が屋敷の庭と門の前のみに降り注いでいく。
命中精度は高くないが降り注ぐ雷の量が段々と多くなっていき、秒間三発ずつほど地面に向けて雷が落とされていく。
雷に当たった者は意識を刈り取られ、次々に地面に倒れ伏していき、その数は過半数を超えたが降り注ぐ雷は止まらない。
「これで着く頃には大分倒せてるだろう、行くぞ。」
「えげつない魔法ね、でも改めてパーティーに欲しくなったわ。」
「メリー、諦めた方がいいかもしれませんよ。櫓さんが人の下に着くメリットが見つかりません。」
メリーや藍と違って櫓の実力を知らない冒険者達は、この光景に驚き過ぎて言葉を失っていた。
屋敷の門まで来ると黒い雲は消え、降り注いでいた雷も収まる。
武装していた者達が大勢地面に倒れ伏しており、辺りどころが良く意識がある者や運良くあたらなかった者が十数人のみ残っていた。
「ネオン、シルヴィー行くぞ、他の奴らは倒れた者の捕縛にかかれ。」
「久々に暴れますよ。」
「ネオンさんが鈍っていないか見て差し上げますわ。」
三人が素早く敵を気絶させて回っていく。
残党狩りは一分も掛からずに終わり、門と庭にいる者は一人残らず地面に倒れ伏し、櫓達によって制圧された。
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