112話 世直し
櫓とシルヴィーは冒険者ギルドを訪れていた。
いつも依頼をしている受付嬢に取り合ってもらいギルドマスターに合わせてもらおうと思ったが、面会の予約が無い者に急に合わせるわけにはいかないらしい。
「仕方ないですわね。」
そう言うとシルヴィーは受付嬢に近づき、耳元で何かを囁く。
すると「少しお待ちください。」と言って慌てて奥の扉に消えていった。
「何をしたんだ?」
「あまり好まないのですが緊急事態ですし、家の名を使わせてもらいましたわ。」
シルヴィーの家は五大都市の城塞都市ロジックを治めるフレンディア公爵家である。
この国に住む者ならばその名を知らぬ者はいない。
そしてその名が持つ影響力も凄まじいのだ。
「お、お待たせいたしました、ギルドマスターから通す様に言われましたのでどうぞこちらへ。」
扉から現れた受付嬢は奥に二人を招き入れる。
ギルドマスターの部屋と言うだけあって、中々高そうな置物が多そうに見える。
「フレンディア公爵家のご令嬢とは知らず受付嬢が失礼を致しました、本当に申し訳ございません。私は当ギルドでギルドマスターをしておりますフランクと申します。」
真面目そうな少し小太りの男が挨拶をしてくる。
「シルヴィーと申します。私は現在冒険者として活動しておりますので、普段通りギルドマスターとして接してくださって構いませんわ。こちらは私のパーティーリーダーの櫓さんですわ。」
「よろしくなフランクさん。」
「お二方共によろしくお願い致します。普段から話し方はこの様な感じですので、私の事はお気になさらないでください。」
シルヴィーだけで無く櫓にまでへこへこしていて、ギルドマスターにしては随分と腰が低いなと思えた。
「それで本日は私にどの様なご用件でしょうか?」
「この街の領主についてですわ。」
シルヴィーが言うとフランクは隠す事もなく苦い顔をしている。
「お会いになられましたか。」
「ええ、櫓さんが少々痛い目に合わせましたら逃げていきましたわ。」
「なんと!?騎士も連れておりませんでしたか?」
「あの程度ならば大した事はなかったぞ。」
フランクは驚いて二人を見ている。
櫓にとっては大した事は無いと言っていたが、あの騎士達は一人一人が冒険者で言うところのB、Cランク程の実力がある。
その騎士が数名いれば、普通の冒険者達では太刀打ちできないだろう。
「随分とお強いのですね。」
「話を戻しましょう、何故領主の暴挙を放置したままにされているのですか?冒険者ギルドが真っ先に動く事案ですが、行動された後ですの?」
シルヴィーの質問に対してフランクは左右に首を振る。
「仰る通りで御座います、本来であれば冒険者ギルド同士で連絡を行い、直ぐにでも止めねばなりません。しかし領主に先手を打たれまして、連絡用の通信魔法道具を取り上げられてしまったのです。」
「馬などで直接知らせに行ったりはしてないのか?」
「勿論それも数回試しました、しかし向かった者達は戻らず他の街からの連絡もありません。おそらく情報が何処かから漏れて領主の手の者に口封じをされたのでしょう。そしてこの街に嫌気が差して出て行こうとした者も見せしめに殺されました。」
領主には街の民から税が入ってくる。
金には困らないので、それを使い様々な者を買収しているのだろう。
そんな状況では誰が味方で誰が敵かも分からず、迂闊な行動は取ることができない。
「連絡手段が無いからと言って見過ごす訳には参りませんわ。」
「それは重々承知しております。しかし前に腕自慢の冒険者達に領主の捕縛を依頼したことがあるのですが見事に返り討ちにされてしまい、此方としても手出しが難しい状況なのです。」
「なら俺達が代わりにやってやろうかフランクさん?」
櫓がフランクの方を見ながら言う。
シルヴィーも異論は無い様でフランクの返答待ちである。
「よ、よろしいのですか?」
「ああ、この街で暮らしてる人達も可愛そうだし、知り合いがちょっと被害にあったから敵討ちにな。」
「し、しかし領主は騎士だけで無く戦いや殺しに長けた者を雇っているとも聞いたことがあります。危険では無いでしょうか?」
「心配無用ですわ、それに魔王と戦う前の良い準備運動になりますし。」
「ま、魔王ですか!?確かに魔王に比べたら人間など大したことないかもしれませんね、はははっ。」
いきなり人類最大の天敵の名前が出て来てフランクは乾いた笑いしか出てこなかった。
「なら早速領主の屋敷に乗り込むか。おっとそうだ、フランクさん信用出来る冒険者ってどれくらいいる?捕まえる人手を借りたいんだが。」
「そうですね、確実に大丈夫だと言えるのは十人程でしょうか。」
「なら今すぐその十人に声かけて、集めてもらえるか?」
「かしこまりました、此処でお待ち下さい、直ぐお連れします。」
フランクは部屋を出て行くと、外の方で受付嬢達に何やら指示を出している様である。
「成り行きとは言え領主に殴り込みをかける事になるとはな。」
「それで民に平和が訪れるのですから、全力で取り組まなくてはなりませんわ。」
部屋のドアが開けられて再びフランクが入ってきた。
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