109話 奴隷卒業
連休で暇だったので今日も投稿します!
「ふぅ、やっと全部作り終えた。」
櫓はシルヴィーと別れた後、宿の自室でひたすら手に入れた雷華草を使い魔法道具の作成を行なっていた。
「ちゃんと出来ているな。」
櫓は調査の魔眼を使い、作り終えた物が入っている試験管の様なガラスの入れ物を見る。
無効化のポーション(雷) このポーションを飲んだ者は一分間のみ、魔法やスキルによる一切の雷による攻撃を無効化しダメージを受けないが物凄く苦い。
「さて後は帰ってくるのを待つのみだ。」
他にも面白そうな魔法道具が作れないかと色々試しているうちに日が傾いてきて、ネオンとシルヴィーが宿に戻ってきた。
「二人とも今時間いいか?」
隣の部屋のドアをノックして尋ねると直ぐにネオンが開けてくれた。
「何か用事ですか櫓様?」
「ちょっと街の外まで付き合ってくれないか?装備とかはいらないから。」
「私は大丈夫ですよ。」
「私も問題ありませんわ。」
二人を連れて街の外にでる。
街や街道からは少し離れて、周りに人がいない場所に到着する。
「こんな所で何するんですか?」
ネオンと同じくシルヴィーも不思議がっている。
「ネオンちょっと質問なんだが、奴隷の首輪外したいと思うか?」
「え?急にどうしたんですか?」
「奴隷都市に行って外すんですの?」
奴隷の首輪は特殊な鍵を使わなければ外すことはできない。
その鍵は五大都市である奴隷都市にある。
しかしロジックや今いる場所から奴隷都市まではかなり遠い。
そこで櫓はその鍵を作ろうと思ったのだが、特殊な素材がいくつも必要なため諦め、別の方法を模索して雷華草で作れるポーションにたどり着いた。
「そんな所までわざわざ行かなくても外すことは出来る。」
その言葉を聞いて二人は驚いている。
「櫓様と出会ってからは主従の関係になれたきっかけだったので悪くない気もしていたんです。でも櫓様もシルヴィー様もミズナ様も私の事を奴隷としてではなく一人の仲間として見てくださっていて、それがとても嬉しい。なので私も奴隷としてではなくパーティーメンバーとして一緒に生きて行きたいのです。」
ネオンは櫓の目を真っ直ぐに見て真剣な口調で言った。
「そうか、ならシルヴィーは周囲の警戒をしつつ少し離れててくれるか?」
「何をなさいますの?」
「俺が全力の一撃をネオンに喰らわせて首輪を破壊する。」
「そ、そんなことをしてはネオンさんが無事で済みませんわ!?」
シルヴィーは前に櫓と戦闘をして、櫓の魔法の直撃を受けている。
障壁の魔眼と魔装によって威力を軽減させてなお、一撃の威力に沈みそうになる程の力であった。
ネオンは確かに強くなっているが、あの攻撃を受けた頃の自分と比べてもまだまだ実力は劣っている。
「焦るな、そのための魔法道具はある。」
櫓はボックスリングから雷を無効化するポーションを取り出してネオンに渡す。
「これは?」
「雷攻撃を無効化するポーションだ。これを飲めば人体へのダメージは無い。」
「確かにそれならば安全そうですわね。」
シルヴィーはそれを確認すると被弾しない様に離れていく。
「全部飲み干さなきゃいけないが相当苦い。」
「苦いですか、ううう。」
ネオンが苦い物が好きではないのは分かっている。
野菜多めの料理などは苦いためよく避けている。
「櫓様、一つお願いがあります。」
「なんだ?」
「櫓様は奴隷である私に命令をした事がありません。ポーションを飲む自信が無いので、奴隷としての私が終わる前に、最初で最後の命令をして飲ませてくれませんか?主人の命令には強制力があるので。櫓様の命令を受けずに奴隷を終わるのも勿体ないなと思って。」
ネオンは少し恥ずかしそうに言う。
「命令されないのが勿体無いなんて変な事を言うな。まあ、分かった。」
「ありがとうございます。」
櫓に向けて一礼して、少し離れる。
(あの首輪は前に魔装した指で思い切り挟んだがヒビも入らなかった。相当な強度を持っているんだろうな。全力の魔法で粉砕するか。)
首輪が壊れないと困るので、今持てる全力の攻撃をぶつける事にする。
「ネオン、最初で最後の命令だ。ポーションを全て飲みその場から動くな。」
櫓からの命令を受けたネオンはポーションの入ったガラス管に口を付け傾けて一気に流し込んでいく。
顔が苦悶の表情に変わるが、命令による強制力かネオンが必死に我慢しているのか、休む事なくゴクゴクと全て飲み干した。
調査の魔眼でネオンを観ると状態の欄に雷無効と表記されているのを確認する。
初めて試す魔法ではあるが、いつか使おうと前々から詠唱文とイメージはしっかり固められている。
「我が魔力を糧とし、万物を破壊する、逃れる事の出来ぬ、裁きの一撃を。天雷!」
櫓が詠唱を唱え終えると、空に幾らか掛かっていた雲を強引に切り裂き、膨大な魔力によって生み出された一筋の雷が落ちてきた。
あまりの速度に櫓やシルヴィーでさえも目で追うことすら出来無い。
ネオンの元に着弾した直後、そこを中心に爆音が周囲に轟く。
地面は割れ巨大なクレーターを作り大穴を地面に穿つ。
天雷により砂煙が巻き上がり視界が封じられる。
「ネオン無事ならそこから出てきてくれ。」
「無事です櫓様!」
その中に向けて声をかけるとネオンから返事が返ってきて、砂煙の中からネオンが姿を表す。
「あっ!?」
櫓はネオンの無事を確認したが急いで後ろを振り向く。
「見てください櫓様、首輪が取れました!」
「ね、ネオンさん急いでこれをお使いください。」
シルヴィーが風の様な速さで駆け寄り櫓の視線を塞ぐ様にネオンの前に立つ。
そして空間魔法が付加された腕輪から取り出したローブを手渡す。
「どうしたんですかシルヴィー様?」
「ご自身の姿を見てください。」
「姿?」
ネオンが自分の身体に視線を向けると着ていた服が無く、何も纏っていない全裸状態になっていた。
「へ?・・・きゃあああああああ!?」
状況を理解するとネオンはシルヴィーからローブを奪い取る様に受け取り着る。
恥ずかしさで顔を真っ赤にして蹲っている。
ポーションなどを飲んで無効にしてくれるのは身体のみで、身につけている物は対象外だったのだ。
「や、櫓様見ました?」
「まあ、その、なんだ、綺麗だったぞ?」
シルヴィーほど大きくはないが、小さいと言う事もなく、ネオンもしっかり女の子らしい身体つきをしている。
さっき見た光景が頭の中に蘇り、顔が熱くなってくる。
「ううう、もうお嫁に行けないですぅ。」
ネオンは羞恥で消え入りそうな声で呟いた。
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