108話 雷華草入手
翌日、冒険者ギルドに素材を売った金を受け取るためにギルドを訪れていた。
ネオンは引き続き装備探し、ミズナは食べ歩きに行っており、特に用が無いシルヴィーが今日は櫓について来ていた。
「昨日素材を売却した者だけど。」
櫓は昨日の受付嬢の所に行き話しかける。
「お待ちしておりました櫓さん、早速ですがこちらが昨日お売りいただいた素材の売却額になりますがいかがでしょうか?」
受付嬢が差し出してきた紙には、自分が出したのだが相当な数の素材名が書かれており、その隣には売却額が記載されている。
シルヴィーは元々貴族なので高額でもあまり驚いていないが、櫓はかなりの値段に思わずニヤけそうになるのを我慢していた。
「相場は分からないがどうだ?」
「問題なさそうですわ、むしろ少し高く引き取ってくださってる様ですわね。」
隣のシルヴィーにも紙を渡して内容を確認してもらうとその様な返答があった。
「それは素材の状態が良い物が多かったためでしょう。素材確認を行なっている者達も絶賛しておりました。」
「それは嬉しいな、じゃあこの金額で頼む。」
「ではこちらが売却金となります。」
受付嬢がカウンターにジャラジャラ音が鳴っている大きな袋を二つドサッと置いた。
「こちらが金貨百二十五枚、こちらが銀貨七十枚になります。」
売却額を聞いた近くの冒険者達がざわざわと騒いでいる。
金貨百枚と言うことは、女神から貰った白金貨一枚と同額である。
既に馬車を作るために使い果たしているが、ちょっとした屋敷なら買えるほどの額なのだ。
それを上回る金を一度に渡されることなどまずない。
櫓の様に魔物を時間経過なく貯めておける道具など誰しも持っているわけではないのだ。
櫓は平静を保って二つの袋をボックスリングに仕舞う。
受付嬢は既に素材を出してもらうときに見ていたので驚きはしなかったが、近くにいる冒険者がそれを見て驚いていた。
「続いて以来の件なのですが、解体希望の方が十名いらっしゃって既に倉庫で待機しています。十名全員雇われますか?面接して減らすこともできますが?」
「いや全員雇わせてもらおう、それでも足りなそうだからな。」
「そ、そんなにですか。」
受付嬢はハハハと乾いた笑いを浮かべている。
受付嬢に案内されて二人が倉庫の方に行くと、ギルドの人間と思われる者二人と冒険者十人が待機していた。
「こちらが今回皆さんに依頼を出された依頼主の櫓さんです。では櫓さん早速解体する者を出していただけますか?」
「おいおい、見たところでかい獲物なんて持ってないじゃねーか。」
「十人も雇って小型魔物の解体なんて言うんじゃねーだろうな?」
解体を請け負った冒険者達が櫓に文句を言ってくる。
しかしそれも櫓がボックスリングから魔物を取り出した瞬間治まる。
人間を遥かに上回る大きさのキラーバードと言われる魔物である。
ここに来るまでの道中に空を移動するキラーバードの群れに狙われ、馬車が襲われたのだ。
しかし狙った相手が悪く、四人によって逆に群れは壊滅させられてしまった。
「なっ!?一体何処から取り出したんだ?」
「空間魔法付加の魔法道具か?そんな高価な物を・・。」
「て言うかこれってBランクモンスターのキラーバードよね?」
「空の狩人とも言われている魔物だ。」
ギルド職員、冒険者共にいきなりの大物に驚いているが、キラーバードはこれ一体では無い。
次々と空いているスペースにキラーバードを出していく、その数十三体。
その数に冒険者達は唖然としていて、今度は別の魔物まで出し始めた櫓を見てギルド職員はとても解体人数が足りないと応援を呼びに走って行った。
「あ、あの櫓さん、あまり出されても解体が追いつきませんのでその辺りで。」
「ん?そうか、ならこのくらいにしておくか。」
「まだ結構残ってましたわよね?受付嬢さん、解体の依頼を数日間のみ常在依頼として発注することは可能ですの?」
「ええ、問題ありません。」
「なら明日も同じ時間に来るからまた依頼出しておいてくれ。」
「かしこまりました。」
櫓とシルヴィーは用事が済んだのでその場を後にする。
遠ざかる後ろで早く取りかからないと終わらないぞとギルド職員に発破を掛けられて冒険者達が焦って動いていた。
「この後はどうしますの?」
シルヴィーに尋ねられたが特に用がない。
「櫓様、シルヴィー様、少しよろしいでしょうか?」
悩んでいると突如目の前にクロードが現れ、膝をついている。
「おお、戻ったか?どうだった?」
「こちらの薬草入れの袋に入れてあります。」
クロードは袋を櫓に差し出す。
中には初めて見るが、花弁が黄色く雷マークの様にギザギザした華、雷華草が沢山入っていた。
「助かったぞクロード。」
「では私はこれで。」
また現れた時同様一瞬で姿を消す。
毎回どうやっているのかと疑問に思い、クロードのスキル一覧を見た事があるが、特にそう言ったスキルは持っていなく、謎が深まったばかりであった。
「それは、雷華草ですの?」
「ああ、ずっと探し求めていたんだ。作りたい物があったんだが、素材にこいつが必要でな。俺は早速宿に戻って作ろうと思うがシルヴィーはどうする?」
「そうですわね、私はもう少し街を見て回ってから宿に戻りますわ。」
「了解、気を付けてな。」
「Aランクの私に言う台詞ではありませんわね。」
そこでシルヴィーとは別れて、フレーヌの宿に戻り魔法道具を作るための道具を準備する。
錬金術の名人は作りたい物を思い浮かべると、必要な素材だけでなく作り方の手順まで教えてくれる。
そのため時間のある時は魔法で一気に完成させるのではなく、一から作ることにしており、物作りの楽しさに最近ハマっていた。
「驚く姿が目に浮かぶ。ちょっとしたドッキリみたいで楽しみだな。」
やっと手に入れた雷華草にご機嫌になりながら、魔法道具作成をしていった。
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