105話 新たな魔眼
戦いの後に雷華草の群生地の場所を教えてもらい、クロードが役に立てなかったので是非代わりに取りに行かせて欲しいと言うので採取を頼んだ。
初見殺しの様な技だったので特に気にしてなかったのだが、仲間に加わってから櫓に対して忠義を尽くしてくれているクロードのお願いはなるべく叶えようと思っていた。
「まさか魔法が使えるなんて予想外だったわ。」
メリーが果汁水を飲みながら言う。
藍が目覚めた後に食事をしようと誘われたのだ。
断る理由も無かったし、聞きたいこともあったので受ける事にした。
「事前に調べた情報では雷系統のスキルを所持している事は分かっていましたが、同系統のスキルと魔法の区別は付きにくいですからね。」
「実際に戦いを見たことなかったんだし、詠唱してるかどうかなんて分からなかったから仕方ないわね。」
「やはり遠距離攻撃専門の仲間が欲しいところです。」
「藍も出来るけどどちらかと言えば近接だもんね。」
食事をしながら先程の戦いの反省をしている二人。
悪かった所を話し合い、次に活かすのは強くなる基本と言えるが、流石に食べ始めてからずっと戦いの話し合いをされてはうんざりする。
「食事の時くらい戦いの話はやめないか?飯が不味くなる。」
血だとか呪いだとか食欲を無くす単語がちらほら聞こえてくるためだ。
「配慮が足りませんでした、申し訳ございません。」
「細かいことを気にするわね。」
「細かくない。」
メリーは特に反省していない様子である。
この二人の間では日常なのかもしれない。
「それより櫓君に聞きたいことがあったのよね〜。」
戦いが終わった後に呪術師呼びと瞬刀呼びをすると気に入らなかったのか、私達も名前で呼ぶから名前で呼ぶ様にと言われた。
「なんだ?」
「魔法道具を作れるスキルを所持していると聞いたのですがどうなのでしょうか?」
「さてな、持っているかもしれないし持っていないかもしれない。」
正式に仲間になった訳でもない相手にペラペラと自分のスキルを話すわけがない。
冒険者カードにもスキルの記載はされていない。
自分が信頼出来ると思えた相手にのみスキルの情報と言うのは開示する物なのだ。
(まあ俺には調査の魔眼があるから他人のスキル情報が丸わかりな訳だが。)
他人のスキル情報を得る手段は調査の魔眼以外にも幾つか存在しているが、何れも貴重なものなので、こればかりは女神に感謝していた。
「それくらい教えてくれてもいいのにケチね。」
「自分の個人情報をローブで丸ごと隠している奴に言われたくはない。」
「あ、バレてた?」
メリーはぺろっと舌を出しておちゃらけている。
ローブにより全体的に覆われているが、口元だけは見ることが出来る。
「なら私の情報と交換で教えてくれるってのはどう?」
「そらならいいだろう、俺が知りたいのは魔眼の事についてだ。」
櫓は待っていましたとばかりに食いつく。
戦いの最中にメリーがローブを上げて目を晒した時にオッドアイの魔眼持ちである事は確認済みである。
そして能力も数秒であるが櫓の自由を奪い行動不能にすると言うことは分かっている。
しかしそれだけでは神眼で使う魔眼の候補対象に入らない。
能力と魔眼名まで知り得て初めて神眼で選択出来る様になるのだ。
上位の実力者同士の戦いで数秒の行動制限は生死を左右する程重要な時間だ。
そのためこの魔眼の能力は是非手に入れたいと思っていた。
「魔眼に付いて?珍しいわねそっちに興味持つなんて、普通呪いの方じゃ無い?」
「メリーの呪いに付いて知りたがる者は多いですからね。」
メリーはてっきり呪いの能力について聞かれると思っていた様だ。
藍も一緒で不思議がっている。
(なるほど、神眼のスキルについては知らないみたいだな。)
二人の反応から三つのスキル全てが割れているわけでは無いと言うことが分かった。
元々魔眼持ちはオッドアイである。
しかし櫓の目は両方が黒色なので、そこに当てはまらない。
神眼のスキルを発動すると両眼の色が黒から金になるのだが、人前でポンポン使用しないので気付いてる者はいない。
「仲間にも魔眼持ちがいるんだ、他の魔眼のスキルに付いて知っておけば進化の手助けになるかもしれないだろ?」
スキルの進化条件は様々であり、同じスキルでも人によって進化方法が違ったりもするため、どんな事を切っ掛けに進化するかは分からない。
なので櫓が言った事にも可能性はあるので、嘘とは言い切れない。
「なるほどね、なら私の魔眼のスキルの情報と交換よ。私の魔眼の名前は呪縛の魔眼。目を合わせた対象者の行動を使用した魔力量に則って数秒間止めるわ。でも魔力を幾ら込めても最長で五秒が限界ね。」
「なるほど、丁寧な説明で助かる。」
メリーから魔眼の情報を得た後、下にわざとスプーンを落として拾うために屈んで、二人に見られない様に神眼を発動させる。
魔眼の選択肢の中に新しく呪縛の魔眼が追加されており小さくガッツポーズする櫓。
「さて次は櫓君の番よ、さっきの藍の質問の回答は如何なのかしら?」
「ああ、俺には錬金術の名人と言うスキルがあって、武器防具道具に付与効果を付け加えることが出来るな。」
「やはり所持していましたか。」
藍は事前情報が間違っていなかった事にホッとしている。
調べた情報ではパーティーの誰かがそう言ったスキルを所持していると言う事までしか分からなかったので、櫓が持っているかどうかは分からなかったのだ。
「ねえねえそのスキルで作って欲しいものがあるんだけど。」
メリーは前のめりになって期待した声色で聞いてきた。
「タダで作ってやる気はない。」
「タダじゃないでしょ、魔眼の情報教えてあげたじゃない!」
「それは俺がスキルを所持しているかどうかの確認の為に交換条件で提示されたものだ。」
「しっかりしてますね。」
藍はやられたと言う顔をしている。
確かにメリーの魔眼の情報を教える代わりに櫓から出されるものにスキルを使って物を作って欲しいと言う条件は含まれていない。
そもそも作ってもらおうにもスキルが無くては頼むこともできない。
「詐欺師!卑怯者!恥知らず!」
藍とは違ってスキルに付いて教えたのに作って貰えない事に怒らずには居られず、メリーは机をバンッと叩いて立ち上がり、櫓に向けて文句を浴びせるのだった。
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