101話 初めての依頼発注
冒険者ギルドまでやってきたが、まだ依頼に行っている者がほとんどなのか人はあまりいない。
「素材の換金を頼む。」
櫓は買取の受付に座っている受付嬢に言う。
「はい、品物を出してください。」
「ここだと全部出せないんだが、広い場所とかないか?」
「品物は空間魔法付与の道具の中ですか?」
「ああ、かなりの量が入っている。」
「ではこちらにどうぞ。」
受付嬢は立ち上がり、櫓を案内して冒険者ギルドの裏手にある倉庫に案内した。
倉庫では様々な魔物の素材をチェックしている者や、魔物を解体して素材を取っている者など結構人がいる。
「こちらに出していただけますか?」
受付嬢に指さされた空いているスペースにボックスリングから出した、解体済みの素材の山を並べていく。
予想外の量だったのか受付嬢は驚き固まっている。
次々と出されていき、空いていたスペースが埋まってくると受付嬢が我に帰る。
「い、一体どれだけあるんですか!?」
「これで半分少しは出したと思う。」
「は、半分ですか、少々お待ち下さい。」
受付嬢は小走りでその場からいなくなり、他の場所で素材のチェックをしていた者を二人ほど引き連れて戻ってきた。
「おいおい凄い量だな。」
「ギルドの金で買い取れる量か分からんぞ。」
連れてこられた男達が櫓の出した素材を見ながら呟く。
「取り敢えずチェックをお願い致します、状態もかなり良いみたいですので、こちらを優先してお願いします。」
「了解した、兄ちゃん悪いが今日中に売却は無理だ、明日また来てくれないか?」
「一日で終わるのか?」
「他の所で素材チェックしてる奴らもそれが終われば合流するから大丈夫だ。」
「そうか、急いでくれるのは助かる、だが無理はしなくて良いぞ。」
そう言って櫓は銀貨を一枚ずつ指で弾いて男達に渡す。
「銀貨二枚あれば数人分のエールくらい酒場で買えるだろう、それでも飲んで頑張ってくれ。」
「気前いいねえ、あんがとよ兄ちゃん。」
「早速取り掛かるか。」
男二人は気合を入れて素材の山に向かっていった。
「残りの素材についてですが、一先ず保留としていただいても大丈夫でしょうか?あの数が片付かないと人が足りませんので。」
「別に問題ないぞ、急いで売らなきゃいけないわけでもないからな。あと依頼を発注したいんだが大丈夫か?」
「大丈夫ですよ、どんなご依頼でしょうか?」
「魔物の解体作業だな、さっきの素材みたいに解体前の魔物がかなりいてな、依頼で募集したい。」
「大丈夫ですけど、そのリングすごい量が入りますね。」
空間魔法が付与された道具は、どれだけ入るかで値段が大きく変わってくる。
女神使用でどれだけ入るか櫓自信も分かっていないが、値段が付けられない逸品なのは間違いない。
「それなりの高級品だからな、それより魔物は出していってもいいのか?それとも受注されてからの方がいいのか?」
あまりボックスリングの話を大きくしたくないので話題を戻す。
「引き受けてくださる方が決まってからの方が宜しいかと思います。明日素材の件で来られるので、その時間に合わせて冒険者を募集しておきますので、その時に出していただければ。」
「そんな急で引き受ける者がいるのか?」
今日依頼を発注して作業は明日だ。
急過ぎて誰も受けないのではないかと思えた。
「大丈夫ですよ、いなくてもギルド職員の解体員が居るので、それより依頼内容の人数設定や報酬額など如何致しますか?」
「初めてで詳しくないから相場より少し上乗せくらいでいいから適当に組んでおいてくれ。」
ここに来るまで様々な依頼をこなしてきたが、依頼する側は初めてであった。
「分かりました、それと依頼主の名前を記載しなければいけないので、冒険者カードの提出をお願いします。」
冒険者カードを渡して、依頼書を発行してもらう。
「この様な感じで如何でしょうか?」
少しすると受付嬢が依頼書を見せてきたので、特に問題ない事を確認して、それでお願いしておく。
「ではまた明日お越し下さい、依頼書の関係上昼過ぎ辺りに来ていただけると助かります。」
「分かった。」
用事が終わったので受付を後にして、冒険者ギルドから帰ろうと思っていると櫓の方に向けて二人組の女性が歩いてきていた。
一人はローブで全身覆われていて、口元しか見えていない。
もう一人は眼鏡を掛けた、キリッとした真面目そうな女性だ。
「ちょっとそこの貴方今いいかしらああああぁー!?」
話しかけてきた女性は櫓の少し前で着ていたローブの裾を踏み盛大に転んでいる。
転んだ表紙にローブがまくれ上がり、スライムがデザインされた子供向けのパンツが丸見えになってしまった。
どう行動しようかと少し悩んでいる間に、後ろから付いてきていた理知的な女性がローブを元に戻して、パンツを隠している。
「いたたたたたっ、ほんっと歩きにくいわねこのローブ!」
転んだ女性は文句を言いながら立ち上がり、ローブの乱れを直してから櫓の方を見る。
「貴方、城塞都市ロジックにいた東城 櫓さんでいいのよね?」
ビシッと指さされながら女性が言い放つ。
変な奴に絡まれたかと心の中で溜息を吐きつつも一応話を聞くことにした。
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