100話 厄介精霊払い
特に何もないけど記念すべき100話目だ!?
やったああああ〜!!!
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「お母さ〜ん、お客さん連れてきたよ〜。」
宿の玄関扉を開け、受付に座っている女性に向けて女の子のレーネが言う。
シルヴィーを待っている間に軽く自己紹介をして、名前を聞いていたのだ。
レーネの母は美人で見た目がかなり若く見え、レーネを少し大人びさせた感じだ。
姉妹だと言われても気付かないだろう。
「こらレーネ、お客さんの前では言葉遣いには気を付けなさいっていつも言ってるでしょ。すみません娘が失礼を。私はこの子の母親でこの宿を経営しているフレーヌです。」
レーネの母は娘を叱り付けて、丁寧にお辞儀して自己紹介してくる。
少し高級な宿と聞いていたので、貴族まで行かないにしても、有名な商人や冒険者なども泊まりに来るのだろう。
その中には言葉遣いにうるさい者もいるだろうから、フレーヌの言いたい事も分かる。
「まあ俺達は特に気にしないから大丈夫だ、それより二人部屋が二つ空いていると聞いたんだが借りられるか?」
櫓の言葉を聞いて「心の広いお客さんって最高!」とレーネが言っているが、フレーヌに睨まれて口をつぐみ明後日の方を見る。
「はい大丈夫ですよ、何泊していかれますか?」
宿に入る前に既に話し合い、この街に一週間滞在することは決めていた。
「一週間分で頼む。」
「ありがとうございます、四名様一週間で銀貨百四十枚となります。」
一日一人当たり銀貨五枚の宿代である。
ロジックで櫓とネオンが最初に止まった宿も銀貨五枚であった。
寝泊りと軽食だけならば一日あたり銀貨一枚と少しで止まれる場所は何処にでもある。
しかし櫓とシルヴィーは寝泊りする場所には金をかけて、少しでも快適に過ごしたいタイプだったため、少しくらい高くても気にならない。
ネオンは最初のうちは宿代の高さにビクビクしていたが、自分である程度稼ぐようになってからは、高い宿を取ることになっても特に反論することはなかった。
「先払いでいいよな?」
櫓はボックスリングから取り出した、金袋から金貨一枚と銀貨四十枚を取り出してカウンターに置く。
後ろにいたレーネから、「一括先払いとかリッチ!」と小声で聞こえてきたがスルーしておく。
「大丈夫ですよ、ではこちらがお部屋の鍵になります、二部屋とも二階の奥側となっております。」
フレーヌから鍵を受け取り、二階の部屋に向かう。
ミズナは精霊の腕輪に普段入っているのでカウントせず、男女で分けて部屋を使う。
「特に用事がなければ基本的にこの街では自由行動とするからそのつもりでいてくれ。」
「了解しました、久しぶりに羽を伸ばせますね。」
「ロジックでは仕事や貴族の付き合いに追われて自由な時間などありませんでしたから楽しみですわね。」
シルヴィーの声がうわずっている。
普段の口調や態度から大人びて見えるシルヴィーの年相応な女の子らしい一面が見れて、定期的に自由行動は取ることにしようと心の中で決めた櫓だった。
「俺は冒険者ギルドに行ってくる、換金したい素材が溜まってきたからな。」
ここに来るまでの間に倒した魔物が相当な数溜まっていた。
暇な時間を見つけて魔物の解体作業などもしたが、とても追い付かず倒したまましまってあるものも多い。
ギルドでは素材として分けられた物しか引き取ってくれないので、依頼を出して解体作業者の募集も行おうと考えていた。
「私は武器や防具を見てきたいと思います、お金が少しかかる様であればお願いしてもいいですか?」
「値段は気にしなくていいから、一番自分に合うのを選んでこい。」
「ありがとうございます櫓様。」
「ネオンさん、私も付いて行っても構いませんか?」
「勿論ですシルヴィー様、一緒に行きましょう。」
ネオンとシルヴィーはわいわい話し合いながら階段を降りて行った。
元々貴族と奴隷と言う身分の違う立場であるにもかかわらず仲の良かった二人だったが、旅をするうちに更にその仲は深まった様である。
「やはりパーティーメンバーの雰囲気は大事だよな。」
「ご主人ご主人・・・。」
隣にいたミズナが櫓の服をくいくい引っ張りながら呼びかける。
「どうした?」
「お腹減った・・・。」
現在は午後三時ほどである。
昼食は取ったのだが、ミズナにとっては関係ない。
精霊にとっての食事は本来なら魔力である。
空気中に漂う魔力や魔力の満ちている食べ物などを吸収している。
それをミズナは美味しいからと言う理由だけで、人間の取る食事の方を優先している。
人間の食事でも魔力回復は出来るのだが、効率が悪いため沢山食べないとならない。
そのためミズナは常にお腹が減っているのだ。
「魔力を直接取り込めばそれで満たされるだろうに。」
「味気ないこと言わない・・・。」
「お前の食欲に付き合っていたら一生食事作っているだけになっちまうからな〜。」
櫓のボックスリングの中には隙を見て作り置きした料理達が大量に入っている。
しかしミズナの底無しの食欲の前には一食分で全て消化されてしまうだろう。
流石にそれは困るので、ミズナに与える一食分の食料は櫓達が食べる分の三倍までと決めていた。
「てか宿なんだから食事が出来るじゃないか、そこで好きなだけ食わしてもらえ。」
「好きなだけ食べれる・・・!?」
食事の時以外普段から眠そうにしているミズナだが、とてもキラキラした顔になっている。
「今って食事できるか?」
櫓とミズナは階段を降りて、受付に座っているフレーヌに尋ねる。
「朝昼晩と食事の時間が決まっていまして、それ以外の時間になると別料金が発生してしまいますが、それでもよろしければ大丈夫ですよ。」
「なら食事を頼む、連れが信じられないほど食うから料理人には申し訳ないけど。」
そう言って櫓はフレーヌの前に金貨を一枚置く。
「お客さん、これ銀貨ではなくて金貨ですけど、間違っていませんか?」
「多分間違いじゃなくなると思うんだがな。」
チラリと隣のミズナに目をやると食事はまだかまだかとうきうきしている。
「食堂は夜以外夫一人で担当しているのですけど・・。」
「レーネが手伝い出来るのなら回してもらえると助かる、追加料金が必要なら払うから。」
「い、いえ、そこまでして頂かなくても大丈夫ですよ、夫一人で回らなそうでしたら娘を向かわせますので。」
「無理を言って悪いなフレーヌさん。俺は冒険者ギルドに行ってくるけど、宿の人をあまり困らせるなよミズナ。」
一応出かける前に注意をしておくが、「ご飯ご飯!」と浮かれていて櫓の声は届いていない様だ。
心配な気持ちはあるが久々に厄介な食欲お化けから解放されたので、心なしか櫓も浮かれていた。
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